目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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今話には、主人公以外のオリジナルスペルカードが1枚登場します。


式神の式神

 その場の流れで、咲夜と戦っていたレティさんや途中で出合った魔理沙を加え、異変解決の手がかり探しに妖怪の山を歩き回っていた最中に声をかけてきた妖怪の女の子と、私たちは廃村家屋の縁側に座って色々と話し込んでいた。

 

 いつぞや名前だけなら聞いた覚えのある、紫さんの式神である藍さんの、そのまた式神である化け猫の『(ちぇん)』さんと私との、簡単なプロフィールを含めた自己紹介。

 

 後はお互いに、今居る『マヨヒガ』へ何をしに来たか、今回の春雪異変と表すべき現象や関連の事柄についてである。

 

 厳密に言えば前者は微妙なのだが、この状況下で行われる話としては、何らおかしいとは言い切れない。

 

「ようやく、顔と名前と反応が一致しましたよ。橙さん」

「あはは! お姉さん2人とは違って、貴女とは話す機会が少しすらなかったもんね……反応って、私の妖気の事?」

「はい。私の能力で捉えた、藍さんと似て非なる妖気の波動の事です。今の橙さん、その時の反応と同一だったので」

「ちなみに、リーシェの能力は対妨害性や精度がとんでもないレベルだから、生半可な魔法や術じゃ嫌がらせにすらならないぜ」

「あっ、聞いた事ある! 紫さまですら、全力の探知網に引っ掛からずに近づくのは不可能に近いって言ってた。怒らせてはいけない妖怪の順位をつけるとしたら、余裕で上位だって」

「マジか。でもまあ、あれ見てればそうだろうな」

「ん~? 魔理沙、何を見たのー?」

「何でもないぜ」

 

 しかし、何かとタイミングが合わなかったりして付き合いはなかったのに、橙さんの方は私の事を結構知っているらしい。

 

 まあ、姉様2人に館の家族、紫さんや藍さんは言わずもがな、阿求さんの幻想郷縁起や文さんの『文々。新聞』を筆頭に、私について知る機会は豊富にある。

 

 何なら、私の友人たちや慧音さん経由で人里の住人たちにすら私の事が知れ渡っているし、私自身色々と答えたりしているのだ。

 本腰を入れて調査に乗り出さずとも、比較的容易く情報を手に入れられるだろう。

 

 なお、割と積極的な情報公開を勧めてきたのはレミリア姉様である。知られては致命的になり得る、本当に重要な情報の隠れ蓑になるからとの事だけど、言われてみれば確かにその通りだと感心したのを覚えている。

 

「さてと。マヨヒガから出るなら、廃屋後ろの朽ちた門から出れるけど、その前に1回弾幕ごっこやらない?」

「弾幕ごっこ? そりゃまた突然だな、橙。誰とやりたいんだ?」

「リーシェと。紅霧異変の時に、あの2人が同時かつ全力で戦ってすら辛勝だったって聞いたし、リーシェのお姉さんもこれでもかって程、自慢してきたから」

「あー……アリスと文の奴が言ってたな。弾幕がマジで当たらないから、まるで幻を相手してるみたいだったって」

 

 警戒は怠らずとも話をし続け、情報交換も済んだところで橙さんが、私と弾幕ごっこを1度してみたいと言い始めた。

 姉様2人からの話はもとより、色んな人から紅霧異変での戦いについて聞き、気になっていた様である。

 

 自身の伝を最大限活用し、手に入れた春雪異変の情報を全て提供してくれた以上、このお願いを無下にするのは少々忍びない。

 今後も紫さん経由で付き合いがあると考えると、親交を深める意味でもやって損はないだろう。

 

 しかし、弾幕ごっこをするとなると隠蔽魔法の効力限界を超え、妖怪の山の天狗さんたちに見つかってしまうだろう。優れた探知能力を持つ椛さんが居る以上、気づかず見逃してくれる奇跡は絶対に起きない。

 

「で、どうする? もし受けるなら、多分やって来るだろう椛たちの相手は私たちでやるぜ。な?」

「ええ。リーシェお嬢様のお心次第ね」

「天狗とは戦った事ないけど、冬の今なら最高のパフォーマンスを発揮出来るわ」

 

 ただ、橙さんの依頼を受けた場合は一緒に居る咲夜や魔理沙、レティさんが警戒と天狗さんたちの相手を引き受けてくれるみたいなので、心配はなさそうだ。

 

 無論、椛さんたちだけでなく、文さんを筆頭とした実力を誇る天狗さんまで出てくる可能性もあるけど、その時は全力で回避の一手を取ろう。

 

「うん、それならやるよ。と言う訳で……橙さん、よろしくお願いします。状況が状況なので、スペルカードは2枚で良いですか?」

「勿論良いよ! じゃあ、早速始めようか!」

 

 頭の中でそんな事を考えながら、勝負を受けて立つと決めて橙さんにそう伝え、お互いに空中へ浮かんだ後に距離を取ってから、弾幕ごっこを始めた。

 

(うおっと!?)

 

 例によって、お互いに通常弾幕の撃ち合いが始まると思っていたけど、橙さんが仕掛けてきたのは接近戦だったので面食らった。

 相手が私だからか、妖怪の身体能力を弾幕ごっこの範疇かつ最大に使ったようで、凄まじい速度で距離を詰められてしまう。

 

 が、勿論このくらいなら全く問題ない。比較的余裕を持って撒き散らされている弾幕、および振り下ろされた爪による攻撃を回避、青白の雷の弾幕を牽制兼反撃として放つ。

 

「紫さま、藍さま、他にも色々な人妖から聞いたよ! 中~遠距離戦はリーシェの舞台だって!」

「うっわ……私が接近戦苦手って情報、周知の事実と化してるし……まあ、幻想郷縁起にも載せちゃいましたし、仕方のない事ですけど!」

「でも、その割には余裕で避け続けてるね! 本当に苦手なの?」

「苦手ですよ。姉様2人、美鈴に咲夜のお陰で改善はされてますけど」

 

 しかし、私の事を色々と研究してきたのと、はたまた本人の実力が決して低くはない事もあってか、カウンターとして放った弾幕も当たらなかった。

 

 紅魔館の家族たち、文さんやアリスさんには流石に劣るものの、こと弾幕ごっこに関して言えば、強化されたチルノとほぼ同等の強さはありそうだ。

 

 純粋に命をかける戦闘をするなら、現在の季節が冬な事とそれによって強化されているのも相まり、強化チルノに軍配が上がるだろう。今は弾幕ごっこ中なので、全く関係ないのだけど。

 

「あのチルノと同等、なおかつ接近戦が得意で多用してくるならば、橙さん。私、本気で(ルナティックで)行く事に決めました……雷符『ライトニングプリズン』」

「わあっ、いきなり!?」

 

 妖怪の山の中で行っているのもあり、あまり戦闘が長引いてしまえば咲夜と魔理沙、レティさんに要らぬ負担をかけかねない。そう判断した私は距離を取ると同時に、先手を取ってスペルを宣言する。

 

 複数の魔法陣を一瞬かつ複数個橙さんの周囲に展開、薄青色のレーザーを発射して網目状にし、更に追加の矢型弾幕を放って行動範囲を制限する。

 と同時に、魔法陣の外部に回避困難な密度で紫色の弾幕を配置、レーザーの再発射までに出来る隙を狙って脱出されるのを防ぐ。

 

 本気を出したレミリア姉様には即攻略されたスペルではあるものの、決して手を抜いて作った訳でもなければ、弱いと評価されたスペルでもない。

 

「檻に閉じ込められた猫みたいで嫌だなぁ……うわわっ! こりゃ無理だ。方符『奇門遁甲』!」

 

 結果、これを乗り切るには自分も宣言しないと厳しいと思わせ、橙さんの1つ目のスペルを引き出せた。

 

 レーザーはもとより、魔法陣の外側にある高密度高速の弾幕のお陰で、橙さんが宣言したスペルの全容は把握出来ていないけど、普通に対峙したら恐らく相応に厄介だろう。

 

 しかし、姉様2人や館の主力陣との練習試合、負けはしたものの紅霧異変で文さんとアリスさんのタッグと行った弾幕ごっこ、今回の春雪異変で強化されたチルノとの弾幕ごっこを経て、私は経験を積んで少しずつ強くなっている。

 

 それに、()()()()勝ち負けにさほどこだわりはなくとも、紅魔館の名に泥を塗る事にもなりかねないから、そう簡単に負ける訳にはいかないのだ。

 例え、レミリア姉様やフラン姉様を含めた館の家族たちが、私の敗北を気にしていなかったとしても。

 

「痛たっ……まあ、そりゃ自分の得意な距離に持ってこうとするよね。にしても、本当に幻を相手してるみたいだし、凄いよ」

「それはどうも。遥か昔から、相手の攻撃は強弱や状況を問わず、出来る限り迎撃か回避をするように心がけているのに加え、能力の都合上中~超遠距離戦は大得意ですので」

「なるほど。ありとあらゆる危機を回避する『程度』の能力、その名に偽りなしだね!」

 

 故に本気を出し、結果今の攻防で橙さんの1つ目のスペルを使わせた事に加え、ルール上強制的に2つ目のスペルを宣言させるところまで追い込む事に成功した。

 

 しかし、決して気を抜いて油断をしたりはしない。この弾幕ごっこに関しては次が最後、橙さんは文字通りの全力全開で仕掛けてくると目を見て理解したからである。

 

 まあ、最初のスペルを使うまでの少しのやり合いで、手を抜いたり油断をすればその弱みにつけ込まれ、スペルカードルール上負ける可能性が高くなると分かっていたし、本気で行く予定は変えない手筈であったけども。

 

「それじゃ、リーシェ。正真正銘最後の、最近作ったスペル行くよー! 妖風(ようふう)瞬翔壱舞(しゅんしょういちぶ)』!」

 

 橙さんの妖気の流れがさっきよりも強く、激しくなってきたところで2枚目のスペルが宣言されると、その瞬間に彼女は高速で回転しつつ風を纏い、弾幕をばらまきながら雷が如き速さで私の方に()()()()()()

 

(ちょっ……本当に厄介だね、これは!)

 

 しかも、あれ程の高速で空を飛んでおきながら急な方向転換も出来るらしく、荒れ狂う弾幕を避けつつ高速突進も避けた刹那、1秒もしない内に再び同じ流れになってしまう。

 

 強化されたチルノのラストスペルとはまた違った意味で厄介であり、仮に急停止からの方向転換が倍以上に早かったり、油断や手抜きをしていたとしたら、高確率で何発かは当たっていたに違いない。

 

「流石だね! でも、ここからどんどん加速してくよ!」

「まだまだ底には至らないって事ですね……しかし、私とて姉様たちに鍛えられている身、対処出来ない道理はありませんよ。橙さん!」

「あはは! それを言うなら私も、紫さまや藍さまに手ほどきを受けている身……そう易々と対処させないっ!」

 

 そして、スペルも中盤辺りになってくると、突進速度やばらまかれる弾幕密度もさることながら、行動を阻害してくるような弾幕がどこからか発生してくるため、厄介度が更に上昇してきていた。

 

 とても良く考えられていて、並の実力しか持たない者であれば普通に打ち倒せ、紅魔館の家族たちとの弾幕ごっこでも十分に通用するだけの強さはある。

 

 ともなれば、紫さんや藍さんはまず間違いなく橙さんより圧倒的に強い。

 

 2人の仕事や私の都合、状況が噛み合うことはほぼない故にする機会は今のところないけども、もしやる機会が巡ってきたとするならば、文字通りの全身全霊で挑む必要を実感した。

 

「むぅ……駄目だったかぁ。お疲れ様! 弾幕ごっこに付き合ってくれてありがとう!」

「どういたしまして。今日は大分駆け足な勝負となってしまいましたので、もしご希望なら後日またお付き合いしますよ」

「そう? なら、お願いしようかな?」

 

 そんな事を頭の片隅で考えながら、通常弾幕による橙さんの弾幕迎撃も併せて回避に一極集中し続けた結果、何とかスペルカードを使わずに全ての弾幕を回避、この弾幕ごっこを勝利で飾る事に成功した。

幻想郷の住人に完全なオリキャラを追加するとしたら、どの程度なら許容範囲でしょうか?

  • 1人
  • 2人
  • 3人
  • 追加しない方が望ましい
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