目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

249 / 251
冥界

「こりゃあ、また凄いところに出たな」

「別の世界……? それとも隔離されてただけで、幻想郷の一部?」

 

 少し考えた後、上を飛び越えれば巨大扉と結界を壊さずに行けそうだと気づいた魔理沙についていき、向こう側に入った私たちは、そこに広がっていた『世界』に、とても驚かざるを得なかった。

 

 真冬かつ一面の銀世界だった幻想郷とは違い、全く異変の影響を受けていない光景が広がっていたからである。

 

 一点の曇りもない青空に、真冬仕様の厚着をしてきた事を後悔する位のポカポカ陽気や、春の香りがするそよ風。

 

 辺り一面に咲く桜の花、思い思いに空を飛び回る鳥や地を駆ける獣ないし虫。

 

 桜の木の根元で花見をしながら、ワイワイ騒いで存分に楽しんでいる人間さんたち。

 

 今が異変解決中でなければ、姉様2人や紅魔館の皆を誘ってお花見をしていた事だろう。何なら、友達全員だって誘っても……いや、誘おう。考えるまでもない。

 

(綺麗なんだけど、太陽が照りつけるのはちょっとなぁ……)

 

 ただし、真夏程ではないとは言っても、それなりに日差しが強い。姉様2人なら耐性が私よりも強いから、日傘がなくても何とか行けるかもしれないけど、私は違う。

 

 丈夫で魔法耐性も高い日傘か、パチュリーから伝授された強力な対日光魔法を常に発動させておかなければ、長時間の暴露で死んでしまう可能性がかなり高いのだ。

 

 なので、ここからは移動中は咲夜の持ってきた日傘で、弾幕ごっこを含めた戦闘時には対日光魔法を、消費魔力量的にいまいち気乗りしないとはいえ、使用すると決める。

 

 一応、魔力を溜め込んでおける腕輪は3つ持ってきてはいるものよ、万が一の時に取っておきたいから、あまり連戦とかはしたくない。

 

 日傘を差しながらの戦闘、および弾幕ごっこが出来れば1番だけど、それは戦う相手に対して失礼であろうからやらない。

 

 本気で命のやり取りをするつもりで、なおかつ相手がかなりの格下であるならば、話は別だけども。

 

「リーシェお嬢様? どうかしましたか?」

「うーん、何だろ? 綺麗で良い場所だし、動物や人間さんたちも見た目は生気に満ち溢れてる感じなんだけどね。何かこう、反応と乖離してて嫌なんだよ」

「乖離……と言いますと?」

「全く生気を感じられないの。諸々すっ飛ばしてなおかつざっくり説明するなら、もう死んでる」

「なるほど、リーシェお嬢様的に、あれは全部『霊魂』だと。つまり、この場所は本来死者の訪れるべき……」

「冥界、分かりやすく言えばあの世って可能性が……ん? 待てよ? あの世って事はもしかして、私たち皆死んだのか?」

「ううん、大丈夫。私の能力的に、ここに居る私を含めた5人は生きてる。死んでないよ」

「ほっ……そいつは一安心だ。流石にまだ死にたくないからな!」

「そりゃあね。私だって、天寿を全うしたいし」

 

 しかし、この場所に居る私たち以外の動物や人間さんたちは、幻想郷の動物や人間さんたちとは見た目は一緒でも、中身が明らかに違う。

 

 嫌ではないけど、生命力に満ち溢れる妖精さんとはまるで正反対の、反応はあるけど死んでいる……多分、この例えは正しくないだろうけど、私の頭ではこう考える他ない。

 

 だからこそ、魔理沙が言うようにこの場所は冥界である可能性が、極めて高いだろう。

 

(もしかして、異変の主犯って……物凄く強い幽霊さん?)

 

 そうなると、生きているはずの私たちが普通に存在出来る理由が分からないけど、もしかしたらその辺も崩壊寸前の結界が鍵になっているのかも。

 

 元々ああなっていたのか、恐らく居るであろう異変の主犯が幻想郷に異変を引き起こした影響で、結界が壊れかけてしまったのか、果たして真実はどうなのだろうか。

 

 まあ何であれ、異変解決のために主犯と対峙して弾幕ごっこ、もしくは命のやり取りで倒し、幻想郷に春を取り戻すのは変わらないのだし。

 

「なあ、異変の主犯って明らかにあそこに居そうじゃねえか? 凄い目立ってるし、何となく妙な力の波動的なものを感じるしさ」

「うん、居るね。あそこで霊夢さんが、霊夢さんと同じくらいに凄まじくて恐ろしい反応の人? 幽霊さん? と相対してるっぽい」

「ははっ、そうか! 流石は霊夢、やっぱり凄い奴だ! いつの間にか私たちの先を行ってるんだからな!」

「確かに。レミリア姉様が、もはや人間じゃないって言うくらいの事はあるね」

「私も紅霧異変の時に対峙しましたけど、恐ろしい強さでした。命のやり取りをしていたら、果たしてどうなっていたか」

「やっぱり恐ろしいわ~。紅白巫女」

 

 ただ、目視出来る範囲内に何とか見える、塀と階段などに囲まれていてなおかつ最も高い場所にあるお屋敷の方から、恐ろしくて凄まじい反応の持ち主と、これまた膨大な気を放つ霊夢さんが対峙していると思われる、強烈な反応を捉えている。

 

 魔理沙から、「霊夢はまだ動いてない」と聞いてからそれ程長い時間は経っていないはずなのに、ここにたどり着くのみならず主犯と対峙しているとは、何と言う早さだろうか。

 

 異変を起こす側からしたら、霊夢さん程恐ろしい存在は中々ないだろう。そして、異変の影響を受ける側からしたら、霊夢さん程頼もしい存在はないだろう。

 

 流石、命のやり取りで全力全開の霊夢さんと対峙した場合、幻想郷に行かず聖魔騎士団の聖女と聖教会の教皇を同時に相手した方が幾分かマシだと、レミリア姉様が能力で見ただけある。

 

「でだ。ぶっちゃけ霊夢が主犯に負けるとは思わないし、このまま傍観に徹しても良さそうな気はするが、異変解決に来た訳だし、万が一がないとは言いきれないから近くまで行こうぜ」

「勿論だよ、魔理沙。私たちなら、他の敵が来たとしても露払いくらいにはなるしさ」

「無論、リーシェお嬢様が行くのであればお供いたします」

「皆で決意固めてるところごめんなさいね~。この場所だと私、力が殆んど発揮出来ないから帰るわ」

「あっ、そうなんですか? 確かに言われてみれば……ここまで付き合ってくれてありがとうございました。レティさん」

「確かにここ、冬じゃないもんな。しょうがないぜ」

「大した事はしてないけどね。じゃあ、健闘を祈ってるわ~」

 

 ちなみにだけど、ここまで私たちに付き合ってくれたレティさんとは、ここでお別れとなる。理由が凄まじく納得の出来るものだった上に、そもそも戦闘を強要するに値する理由が一切ないから当然だ。

 

 大幅に強化されたチルノすら及ばない、冬の幻想郷に居た時の凄まじい力はどこにもなく、春真っ盛りの冥界(ここ)に居た時のレティさんの力は、およそ1割にも満たない。例えるなら、力の強い妖精さんであれば良い勝負が出来る程の強さか。

 

 私の家族や大切な友達を傷つけ殺そうとするような輩なら、普通に盾として使っていただろうけど、彼女はそんな下劣ではない。出会ってからこうしてやり取りを交わしていれば、それが良く分かった。

 

 それどころか、露払いや異変解決のお手伝いをしてくれるような、親切な妖怪さんなのだ。一声さえかけてくれれば、正当な理由なんてなくても気分が変わったとかで帰っても、私としては全然構わない。

 

 と言うか、ここに入った瞬間に大幅な弱体化に至っていたかもしれないのだし、レティさん本人が何も言わなかった点を考慮しても、能力を持っていた私がすぐに気づいてあげるべきだった。

 

 まあ、私や魔理沙や咲夜の側に居たから、仮に敵襲があっても大丈夫だっただろうけど、それでも危ない橋を渡っていたのには変わりないのだし。

 

「あっ。レティさん、ちょっと待ってください!」

「ん? どうかしたの? リーシェ」

「冥界の入り口まで私が一緒について行きますよ。万が一があったら、危ないですから」

「あら、良いの? 親切にどうも~」

 

 で、当然のことながら私はあることに思い至ったため、大声で呼び止める。レティさんが襲われた時に抵抗出来ず、ボロボロにされてしまう可能性だ。

 

 冥界に入ってから今に至るまで敵らしき敵は一切見かけないし、能力でも大幅に弱体化したレティさんの脅威となり得る存在は、現時点だとこの近辺には居ない。

 

 ただ、霊夢さんと相対している誰かはともかく、脅威となり得る存在事態は能力の探知範囲内に4人居る。

 

 距離的には問題なく離脱出来るとは思うけど、その4人が私たちの存在を認知していて、敵対心を抱いている上で、高速移動や瞬間移動などの能力や術技を持っていないとも限らない。

 

 何なら、どこからか突然湧いて出てくる可能性だって、低くとも存在するのだ。

 

「咲夜、魔理沙。そう言う訳だから、ちょっと先に行ってて」

「了解しました。リーシェお嬢様、お気をつけて」

「おう! じゃあ、咲夜と先に行ってるぜ!」

 

 だから、咲夜と魔理沙に一言声をかけた上で一旦別れ、私はレティさんを守りながら冥界の入り口へと戻っていった。

幻想郷の住人に完全なオリキャラを追加するとしたら、どの程度なら許容範囲でしょうか?

  • 1人
  • 2人
  • 3人
  • 追加しない方が望ましい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。