(お腹空いたなぁ……眠いし、身体が重たいし、やる気が出ないよ……)
とある日の夜、前日に沢山睡眠時間を取ったにも関わらず、私はそこそこ強い眠気と身体の重さ、猛烈な無気力さに襲われていた。4週間前から人間の血を含めた一切の食事をもらえていないと言う、とても大きな理由があったからだ。
姉様2人は言わずもがな、会話を交わさずとも私を気遣いつつ食事を運んでくれてたメイドさんや美鈴がバッタリ来なくなった事から、父様関係で何かあったのは明白だった。いくら私でもここまで来れば、父様が頭の中で
それにしても、4週間も食事抜きにされたら流石に吸血鬼の私でも死ぬかと思ってたけど……実際は少し痩せ、そこそこ強い眠気と身体の重さ、猛烈な無気力などに襲われていると言った不調はあるけれど、まだ生きていた。その上鈍重ではあるものの、
これが、『吸血鬼』と言う種族が私の想像以上に飢えに強かった故の事なのか、それとも私特有の体質によるものなのかは分からない。ただ、どちらにせよこれのお陰で命が繋がっている事だけは確かなので、感謝でしかない。
とは言え、このままだと不味い。今の私は睡眠時間が大幅に増え、起きている時も殆んど動かないで過ごすなどしてエネルギー消費量を極力抑えている状態を本能的に選択しているだけであり、飢えなくなった訳ではないからだ。なので早急に何とかしなければいけないのだけど……
(そうは言っても……この状況を変える事がどうやっても出来そうにない……どうしたら良いのかな?)
出入り口の扉を含め、この地下室全体に張ってある強力な結界がそれを阻んでいる。万全の状態で奥義魔法を使用しても破壊出来なかったのに、今の状態で奥義魔法を使ったとしてもどうこう出来る訳ない。と言うかそもそも、使おうものならそれと引き換えに死んでしまうため、現時点では対策の取りようがない。ただ、だからと言って考えを放棄する訳にはいかないので、どうしたら良いのかと頭の中で考えていた。
「リーシェ、返事してよ……美味しい人間の血、沢山持ってきたから飲んで、元気になって……死んじゃイヤだよ」
「フラン、大丈夫。きっとあの子の事だから、部屋のどこかでのんびりしてるだけよ……死んでいるわけないわ。きっと……」
「だってぇ……」
すると、4週間ぶりに扉が開く音と姉様2人が悲しそうに話をしながら私を呼ぶ声が聞こえてきたので、そっちの方を向いた。話を聞く限り、姉様2人は私がもう既に死んでしまっているのではないかと不安であるらしい。まあ、4週間も飲まず食わずで居させられてると知っているのであれば、そう心配するのも仕方ない。
「私、死んでないよ……姉様……!」
「「っ! リーシェ!?」」
だから私は、そんな姉様たちの心配を払拭するために力一杯叫び、生きている事をアピールした。それからすぐ、私の居場所に気づいたフラン姉様がまるで瞬間移動のような速度で近づいてきて、レミリア姉様も後に続いてこっちに近寄ってきた。
「良かったぁ……あっ、リーシェ! お腹空いてるよね? 美味しそうな人間の血を持ってきたから飲んで、元気出して!」
「うん……!?」
私が生きていると分かった姉様2人は目を潤わせながら喜んだ後、人間の血が入っていると言う持っていた瓶の蓋を開け、飲んでくれと差し出してきた。
そこから漂う血の匂いを嗅いだ瞬間、色々考えるよりも先に差し出された瓶を取り、中にある血を口の中に入れて味わった後に飲み込んだ。
「んぁ……!」
私が4週間ぶりに味わった人間の血は、とっても格別な物だった。例えるなら、前世で私が大好物だったリンゴを使ったジュースを初めて飲んだ時のようだった。
口の中に広がる甘い果汁のような味と果実の香りもさる事ながら、飲み込んだ後に身体に力が染み渡るような感覚と、初めて吸血した時に勝ると言える快感に思わず、私は身体を震わせた。血に飢えていた事も作用しているのだろうか。
「レミリア姉様、もっと欲しいんだけど……ない?」
「ごめんなさい、リーシェ。訳あってこれ以上は用意出来なかったの。近い内に何とかするから、待ってて欲しいの」
「そうなんだよ! お父様……いや、
そんな事を考えながら血を飲んでいると、あっという間に瓶の中身を飲み干してしまった。しかし、それでも血が欲しいと言う欲求は収まらなかったから、レミリア姉様にもっと欲しいとリクエストしたけれど、その願いは聞き入れてもらえなかった。
まあ、レミリア姉様の悲壮な決意を抱いているかのような断り方に、フラン姉様の父様に対してアイツ呼ばわりしていた様子から、父様関係で何かあった事は明白である。これ以上困らせる訳にはいかないので、素直におかわりの血は諦めておいた。何があったのかも詳しく聞いておこうとも思ったけど、なんか聞かない方がいい気がしてきたので、これも止めておく。
「分かったよ、レミリア姉様。でも、無理しないでね。いざという時は……私を見捨てたりしても、恨んだりはしないから……」
「「っ!!」」
更に、私のせいでレミリア姉様とフラン姉様が死んでしまうなんて事があったらとんでもないので、いざとなったら見捨ててもらっても構わないとの言葉を投げかけ、実際にそうなった時に病まないように気を使う。勿論、そうならない事を願ってはいるけど。
「ほら、姉様。名残惜しいけど、早く行かないとバレちゃうよ? 私なら、今の血でしばらく頑張れそうだから、大丈夫」
「……うん」
「分かったわ……」
そうして、父様に秘密で来たであろう姉様たちに制裁が下っては堪らないため、もっと一緒に居たいと言う思いを抑えて地下室を出るように促し、出て行こうとする姉様2人を笑顔で私は見送った。
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