(うーん……あれ? 私、生きてる……? ここは……図書館の床かな?)
あの時、私は弱り行く私を見捨てずに地下室に駆けつけてくれ、力ずくで幽閉を解除させるために父様と相対したものの、その命が危機に晒されかけた姉様たちを救うために自分の命をかけて奥義魔法を発動させ、何とか助ける事が出来た。ただ、生命維持のための魔力まで無理やり絞り出したために、想像を絶する苦しみを味わいながら気を失ってしまった際は、本気で死を覚悟する程であった。
しかし、ありがたい事に私は死を免れ、空腹感などが収まっているだけでなく、何故か身体が絶好調の状態で目覚める事が出来た。これで思う存分姉様2人や美鈴、幽閉前に私に良くしてくれたメイドさんと楽しく会話が出来ると思うと、胸の高鳴りが抑えきれない。ただ、如何なる理由があるとは言え私は父親をこの手にかけたのだ。その罪は生涯ついて回る事になるだろう。
「リーシェ!! 調子はどう? 大丈夫?」
「うん。何でか知らないけど、とっても調子が良いんだよね。空腹感とか身体の重さとか、綺麗さっぱりなくなってるから」
寝ぼけた感じのある頭であの時の事を考えていると、床に横になっている私に駆け寄ってきたフラン姉様から、調子はどうだとか大丈夫かと心配をされた。今の身体の調子は生きていた中で1番とも言える程絶好調であったため、私はフラン姉様の問いに対して感じたままを答えた。
「全く、心配したんだからね! 貴女が目覚めるまで、気が気じゃなかったわよ!」
「本当……貴女っていつもいつも、自分の身を削りすぎ! リーシェのメイドさんの
「レミリア姉様にフラン姉様、ごめんなさい……ん?」
すると、何かの本を開きながら持っていたレミリア姉様から、無茶をして死にそうだった事に怒られつつも泣かれてしまい、フラン姉様からも更に無茶をした事に対して、全力で泣かれながら怒られた。
前に1度、襲撃してきた吸血鬼狩りを殺した時もあの時程ではないものの、無理をして倒れてしまった前科があるから、姉様たちから烈火の如く怒られるのも仕方ない。ここは、余計な事は何も言わずに心から謝っておくのが吉だと思った私は、起き上がって姉様2人に頭を下げて謝った。
「フラン姉様? 私のメイドさんの命がなければ死んでたって、どう言う事なの?」
「あぁ……うん。多分、リーシェにとっては酷だろうけど……左隣を見て」
そうして謝っていた時にふと、フラン姉様が言っていた『メイドさんの命がなければ死んでいた』と言う部分が非常に気になって仕方がなくなってきた。言葉的に
だから私は、一抹の希望を抱きながら姉様にどう言う事なのかと質問を投げかけてみたけど……やはりと言うべきか、フラン姉様は『多分、リーシェにとっては酷』と表情を曇らせながら、私に左下の床を見るように促してきた。なので、恐る恐る言われた通りの方向に顔を向ける。
(……)
まあ、分かってはいたけれど……私の事を常々心配してくれて、私のために父様に意見してくれて、幽閉時の食事を作ってくれたりしていた、亡き母様と姉様2人以外で1番慕っていたあのメイドさんだった。しばらく見ない内に随分と歳をとってはいたけれど、間違いない。
彼女の身体を見たところ、一切の外傷がなかった上に幸せそうな顔をしながら死んでいたため、私にはどう言う流れでメイドさんが命を落とす事になったのか、全く推測が立てられそうになかった。ただ、誰なのか分からない位に傷だらけになったりする事はなかっただけ幸いであった。
「あのメイドさんはね、『
「……」
死んでしまっていた彼女を見ながらそんな事を考えていると、フラン姉様がこうなった経緯を話し始めたので、一字一句聞き逃さないために集中し始めた。
フラン姉様曰く、死にかけていた私を完全復活させた『命の贈り物』と言う秘術は、赤い魔方陣の上に居る1人の全生命力を使用して生成したありとあらゆる怪我や病気、呪いなどを即座に治癒する事が出来る光の雫を青い魔方陣の上に居る者に与えるものらしい。その上、発動条件が『命の差し出しに心から同意する』であるのを聞き、あのメイドさんが誰かに強制された訳ではなく、自分の意思で命を私に
「そっか。もうお話……出来ないんだね。っく、ふぅ……」
瞬間、もう2度と話が出来なくて悲しいと思っているはずなのに、何故か笑いたくなる衝動に駆られた。このまま衝動に任せてしまえば、家族のような人が死んだにも関わらず大笑いするヤバい奴扱いされる事は必至だろうから、理性で必死に抑え込んで何とか耐え抜いた。
「リーシェ? どこに行くの?」
「紅魔館の庭。メイドさんのお墓、作りに行ってくるから……」
理性で笑いたくなる衝動を抑え込んだ後、私は死んでしまったメイドさんのためのお墓を作ろうと言う思いに駆られ、遺体を優しく抱えて紅魔館の庭へと歩みを進めた。
道中、耐えられる悲しみと思いの臨界点を超え、まるで滝のように涙が流れ出してくる。仕方がないのは分かってはいるけど、どうして私と話をする前に死んだのかとか、命を贈る位に私を慕ってくれてたのは何故なのかとか、そんな事を思っていた。
そして、エントランスの出入り口の扉を開け、久しぶり……と言うか全く嬉しくない初めての外に出た後はお墓を作る丁度良い場所を歩き回って探し、何とか見つけたら弾幕を地面に当てて深い穴を作った。それから死んでしまったメイドさんをゆっくりとその穴に入れ、コツコツと周りから土を集めて埋めた。
「メイドさん、ありがとう。貴女からの
最後に庭にあった私程の背丈の木を丁寧に抜いて植え替え、翼の一部をむしり取ってその木にくくりつけ、分かりやすい目印とした後はその場で跪いて目を瞑り、メイドさんにもらった命を大切にしてこれからを過ごしていく事を強く誓った。
「リーシェを救ってくれて、感謝するわ。ありがとう」
「メイドさん! リーシェを助けてくれて、ありがとうね!」
すると、両隣から私と同じようにメイドさんにお礼をする姉様2人の声が聞こえたので、目を開けて両隣を見てみると、私と同じように地面に跪いていた。それを見て、何だか凄く嬉しい気持ちになった。
「さてと……これから色々と忙しくなるけど、私たち3人で頑張って乗り切って行くわよ!」
「はーい!」
「うん、分かった」
そうして5分程経って事が済んだ後、これから起こるであろう数々の出来事を姉妹3人で乗り切って行こうと誓い、紅魔館へと戻っていった。
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