目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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間章『隠された者』
レミリアとリーシェ


(キツいなぁ……まあ、1ヵ月食事抜きの地獄よりは遥かにマシだけど)

 

 父様が死んで、晴れて幽閉が解除されてから半年が経ったとある日、幽閉前まで居た私の部屋に戻って魔法の研究をしていた。私のために命を贈ってくれたあのメイドさんのお墓の前で誓った『もらった命を大切にする』を是が非でも守るためなのと、自分の命を削らずにレミリア姉様やフラン姉様が危ない時の助けになりたいと思ったからだ。

 

 そうした思いの元、新しく研究しているのは『誘導陣術(インディクションサークル)』と言う名前の魔法である。これは、組み込んだ攻撃に私が決めた対象へと勝手に追尾していく効果を付与するもので、完成すれば能力と併せて敵が私の下にたどり着く前に倒せるようになって、苦手な近接戦闘をしなくても済むようになる。

 

 しかし、そんな思いで研究を始めたは良いものの、何故か何度試しても消費魔力が私の奥義魔法を軽く超え、これを組み込んだ魔法の射程が役立たずな程まで短くなり、更に威力がそよ風レベルにまで落ち込むと言う酷いループから抜け出せなくなってしまった。

 故に、一旦どうすれば良いのか図書館の魔導書や秘術の本などを読み漁って勉強し直しつつ、机上での計算のやり方を根本的に変えて試してみる段階に、今は戻っている状況である。まあ、何かを発明するのに失敗は付き物だから、諦めようとは思ってないけど。

 

 まあ、それでも良い感じの術式を計算で導き出せていないと、分かっていても僅かずつイライラは募っていく。そんな状態で研究を続けていけばいつまでも上手く行かないのは明白なので、気分転換に館の庭に置かれたテーブルの上で月でも見ながら紅茶でも飲もうと思い、立ち上がる。

 

「リーシェ、お願いがあるんだけど……良いかな?」

「お願い? まあ良いけど、フラン姉様は私に何をして欲しいの?」

 

 その時、用事がある時にいつでも姉様2人や美鈴やメイドさんたちが入ってこれるように、寝る時以外は開けっ放しにしてある入り口からフラン姉様が入ってきた。どうやら、私に願い事があるらしかった。

 気分転換をしようと思っていた事もあって、お願い自体は聞いてあげるつもりだったが、そのお願いが何なのか知らなければどうしようもない。なので私は、フラン姉様に何をして欲しいのか質問を投げ掛けた。

 

「えっとね、お姉様の部屋に行ってくれないかな?」

「レミリア姉様の部屋に?」

「うん。あの日からお姉様、スカーレット家の新たな当主になった訳なんだけど、後始末とかに結構苦労してる話は聞いてるでしょ?」

「まあね。だけど、それがどうかしたの? まさか私に肩代わりしてくれって話じゃないよね? いくら大好きなレミリア姉様のお願いでも無理だよ。当主の仕事なんて」

 

 すると、フラン姉様はレミリア姉様の部屋に私が行って欲しいとお願いをしてきた。それだけなら別に断る理由もないけど、スカーレット家の仕事が云々と言う話をし始めたため、もしかして仕事の肩代わりをフラン姉様経由で私にしてきたのかと思い、そうじゃないよねと聞いてみた。

 

「大丈夫! 違うから安心して。で、その当主の仕事がキツくてお姉様が辛そうだから、リーシェがお姉様の部屋に行って方法は何でも良いから、労ってあげて欲しいの。お姉様は当主の仕事で、リーシェは魔法の研究ばかりだと、待ってたらいつまでもタイミングが合わないじゃん」

「なるほど。確かに幽閉から解放されたのに、姉様と触れ合わなってなかったのもあれだし……分かった。今から行ってくる」

「ありがとね! きっと私よりも、リーシェが行ってくれた方が喜んでくれると思うよ!」

 

 ただ、フラン姉様はそれを即座に否定して、当主の仕事がキツくて辛そうなレミリア姉様を癒してあげて欲しいだけだと言ったため、私の心配は取り越し苦労で終わる事となった。その程度の事であれば迷うまでもなく聞いて……いや、むしろこちらの方からお願いしても良い位だと思いつつ、私はレミリア姉様の下へと向かうために部屋を出た。

 

(と言うか、それならフラン姉様でも良さそうな気がするけど……まあ、考えてても仕方ないし何でも良いや)

 

 それから、頭の中で色々な考え事をしながら歩みを進めているとレミリア姉様の部屋に到着したので、ノックをして入った。

 

「あら、リーシェ。貴女からここに来るなんて初めてじゃない……!?」

 

 許可をもらって部屋に入った後、私はレミリア姉様の方へと一直線に進み、思い切り抱きついた後に頬へ軽くキスをした。自分がそうしたかったのもあるけど、1番はこれを姉様が喜んでくれると思ったからと言うのが大きかったからだ。

 

「レミリア姉様、お疲れ様……!」

「き、急にどうしたの? いきなり抱きついてきた上に、頬にキスしてくるなんて……」

「当主の仕事で疲れてる姉様を癒しに来ただけ。まあ、私がそうしたかったってのもあるけど……もしかして、キスは嫌だった?」

 

 ただ、私がそれをやった瞬間に姉様が固まったのを見て、こう言う行為は嫌いだったのかもしれないと、不安に駆られた。

 

「ううん、そんな事はないわ。むしろ、処理する仕事が多くて疲れてたから、とても嬉しいのよ」

「そう? なら良かったけど」

「ふふっ……あっ、せっかく来たのだから、少しお話していかない?」

「もちろん良いよ。そのために来たんだから」

 

 もしかして、嫌だったのかもと言う心配は、姉様の言葉によって消滅したためホッと安心していたところ、せっかくだから少し一緒に話していかないかと誘われた。勿論、その誘いを断る理由など存在すらしないため了承して、姉様の隣に座った。

 

(やっぱり姉様は凄いや。本当なら当主をやる歳じゃないのに、もうこんなにこなしてるなんて……)

 

 そうして聞かされた話は、姉様がやっている当主としての仕事の内容であった。当主交代の報告をしに回ったり、急に増え始めた館への中堅~弱小吸血鬼一家の来客の対応をしたり、館内の人事について考えたりしているらしいけど……考えただけでも恐るべき仕事量である。これは、姉様が愚痴をこぼしたくなるのも頷けた。

 

 ある程度姉様の当主としての仕事内容の話を聞いた後、今度は私が研究中の魔法の進捗状況について、話せるだけ話した。魔法研究に比べれば、スカーレット家の当主をしている姉様の方が圧倒的に大変なはずなのに、私の方が余程苦労していたかのように振る舞ってくれるのには驚いた。

 

「リーシェ。また明日以降も、待ってるわよ」

「勿論だよ姉様。当主の仕事、頑張ってね!」

「ええ。貴女のお陰で何だか元気が湧き出てきたから、仕事も頑張れるわ。ありがとう」

 

 こうしてかなり長い時間話した後、お互いにリラックス出来たため、また明日以降もこんな感じで部屋を訪れる約束を交わしてから私は魔法の研究をするために部屋に戻り、レミリア姉様は仕事を再開する事となった。




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