目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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今話はフラン視点です。


招かれざる来客

「はぁ。全く、どいつもこいつもお父様が死んだ途端に『隠された者』に会わせろって……煩いったらありゃしないわ」

 

 とある日の満月の夜、いつものようにお姉様の部屋を訪れていた私は、珍しくイライラしていたお姉様の愚痴を聞いていた。スカーレット家の当主としての仕事がキツい愚痴かと思ったらそうではなく、()()()()()目当てに紅魔館へと訪れる有象無象の吸血鬼が煩く、その対処が相当面倒臭い事に対する愚痴だった。

 

「お姉様。隠された者って、確か……リーシェの事を表してる言葉だっけ? ここ最近、そう言ってここに来る吸血鬼が多いよね」

「ええ。まあ、とっくの前にこの事自体は吸血鬼界隈の末端まで知れ渡ってたのだけど、今まではお父様が全力でそう言う輩は力で黙らせたから、レイブン家以外ではそう言う輩は居なかったのよ」

「なるほど。で、アイツが死んで恐怖と言う枷が外れた有象無象共が、まだ子供なお姉様が当主になったなら大丈夫だろうと、いざとなったら力ずくで行けば良いだろうと根拠もなく高を括って、会わせろ会わせろ煩いって訳なんだね」

 

 隠された者と言うのは、父親だったアイツにその存在を隠されていたものの、数々の出来事が起こって存在が少しずつ世に出ていく過程でいつの間にか生み出されていた、リーシェの別名の事である。

 

 別名が生み出された初期の頃は単に存在を隠されていた者としての意味しかなかったけれど、時が経つにつれて何故かどんどん意味に尾ひれが付いていき、今では触れてはいけない『禁忌』とまで言う人間も出てくる始末である。

 まあ、そのお陰で吸血鬼狩りの襲撃は皆無になったけど、アイツが死んでから逆に他の吸血鬼から会わせろと煩く言われる回数が激増して別の意味で面倒事や腹の立つ事が増えたから、何とも複雑な気分だ。

 

「悔しいけどその通りよ、フラン。自分で言うのもなんだけど、私ってまだ子供だから。力も1人だとお父様に劣るし、尚更ね」

「まあね。あの時だって、リーシェが命を削って放った凄い威力の魔法がなければ、勝てなかったかもしれないし」

 

 こうなったのも、吸血鬼的にはまだ子供であるから仕方ないとは言え、私やお姉様が単体だとアイツよりも格下だと言う事実があるからだろう。仮に、私やお姉様が単体でアイツと互角かそれ以上の力を持っていたのなら力で威圧感を簡単に出して、今のように面倒な事にはなっていなかったはずだ。

 

「本当よね。いくら命がけで魔力をかき集めた奥義魔法とは言え、お父様を貫いた挙げ句に結界に歪みを入れたあの威力はおかしいわ。まあ、その分私のグングニルやフランのレーヴァテインに比べて使い勝手はあまり良くないみたいだから、使い方としてはあの時みたいな感じがベストかしら」

「単体で勝てない相手との戦いだと、そうだね! 私とお姉様が協力して敵の気を引いて、リーシェがあれを放って――」

「お嬢様方、お話の途中申し訳ありませんが……」

 

 そんな話の中で、リーシェがアイツの胴体に風穴を開けたあの魔法の話になり、それのベストな使い方についての会話をしていた時、美鈴がお姉様との会話に割り込みながら入ってきた。普段用事がある時でも会話の途中で割り込んでくる事はなく、間が空いたタイミングで話しかけてくる美鈴が、会話をぶった切る感じで割り込んで来るのはとても珍しく、私とお姉様はビックリしてそっちを向いた。

 

 門番である美鈴は、侵入者の排除の仕事や庭の掃除以外だと来客への対応があって、最低限の基本方針を示された上でお姉様に権限を与えられている。そんな彼女がこう言う行動を取る時は、自分では判断出来ないような厄介な用件の客か来たか、お姉様と互角か格上の吸血鬼が来て自分では判断不可能だと判断したかのどちらかである事がほぼ確実だ。

 

「美鈴。何かあったの?」

「あ、はい。先ほど『レイブン家』の吸血鬼一家がここを訪れてきまして、隠された者……つまり、リーシェ様ですね。彼女に会わせてくれと頼んできた訳です。追い返そうにも私では到底無理なので、レミリアお嬢様にどうにかして頂きたくて……」

 

 すると案の定、予想通りに後者の方であった。その上、面倒臭い来客の筆頭かつ間接的にアイツを無駄に刺激し、リーシェを殺しかけたも同然の『レイブン家』が来たとの事らしい。

 

 確かにこれは、美鈴が判断出来ないと思っても仕方ない。腐ってもアイツと殆んど同じ位の強さは持っていて、対処出来るのは私たち姉妹のみであるためだからだ。

 

「なるほどね。それなら、確かに美鈴1人には荷が重いか……分かった。じゃあ、私はリーシェに会うか会わないか聞いてくるから、美鈴はレイブン家の面々のところに行って、私が来るまで相手をしてて。それと、フランは万が一の時のための護衛として美鈴と一緒に向かって。もし戦いになったとしたら……仕方ないから『狂気の啓示』を使いなさい」

「……分かった。じゃあ、美鈴。行こう」

「了解です」

 

 お姉様もそれは良く分かっているらしく、美鈴だけでなく私も一旦レイブン家の下に向かわせる事を決めて、そう指示を出してきた。更に、戦闘になった時は私の奥底に封印されている狂気を一時的に全面に出し、戦闘能力を膨れ上がらせる技である『狂気の啓示』の使用許可を私に出してくれた。ただ、これは色々な意味で使いたくない技であるけれど、アイツと殆んど互角の強さなのだから、いざとなったら仕方がない。

 

(お姉様がイライラするのが、何だか分かる気がするなぁ……)

 

 そんな事を考えながら、私は美鈴と一緒にレイブン家の面々の下に向かった。




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