騎士団の襲撃
「フラン姉様……本当にごめん」
部屋を出てからすぐ、私が構わなかったせいでフラン姉様が不機嫌そうにしていたとエルに教えてもらったため、すぐさま部屋へと向かい、魔法の研究やレミリア姉様のところに行く事が多く、フラン姉様と色々したりする回数が少ない事を謝った。
機嫌の悪いフラン姉様は普段とは違って、とても怖い。ハイライトの消えた瞳に無自覚に発せられる『狂気』が合わさり、目があったら殺されてしまいそうだと否が応でも感じてしまうからだ。しかも、そうなった場合に出歩かれるとメイドさんたちが萎縮して館の家事が滞り、色々と悲惨な状況になってしまうと言う理由もあるからだ。
「どうして謝るの? リーシェ」
「え……あれ? エルから、私がフラン姉様のところに来るのが少ないせいで機嫌が悪いって聞いたからなんだけど……」
「ああ、うん。確かに多少不満には思ってたんだけど、機嫌なんか別に良くも悪くもないよ? 多分、私が考え事でもしてたのをエルが早とちりしたからじゃない?」
なので、フラン姉様から一体何と言われるのか戦々恐々としていたら、どうして謝るのかと聞かれたため、思わず拍子抜けしてしまう。と言うか良くみたら瞳のハイライトもあるし、機嫌が悪い時特有の『狂気』を感じる事はなかったから、恐らくフラン姉様本人の言った通りなのだろう。
「まあ、エルが早とちりしたのか別の意図があったのかはどうでも良いとして……確かに不満自体はあるんだからね。リーシェとのハグもキスもお姉様が初めてだし、この間一緒に寝たのもそう。お姉様とだけズルい。私だって、リーシェとの
なんて事を考えていると、フラン姉様が私とレミリア姉様に対しての不満を口に出し始めた。言われてみれば、ハグもキスも添い寝も初めてはレミリア姉様だったし、回数も多かった。確かにこれでは、フラン姉様がハブられていると感じてしまうのも仕方ないし、私が不満の捌け口になってしまうのも同じ理由で仕方ない。だから私は、お詫びに何か初めてやったりする事はないかと考え始めた。
しかし、フラン姉様が喜んでくれるような初めての何かはそう簡単には思い浮かばずどうしようかと悩んでいると、ある事を思い付いた。それは、まだ誰にも見せたことのない誘導陣術を最初に見てもらうと言う事であった。
ただ、それだけではレミリア姉様に初めてした事より一段も二段も劣ってしまうのは否めない。だからそれに加えて、フラン姉様には未だに私がレミリア姉様と出来ていない唇同士を長く合わせるキスをする事を決意した。まあ、レミリア姉様の時と同様、私自身の欲が混じっているのだけど。
「え……本当に!?」
「うん。2つだけだけど、フラン姉様に私の
「えへへ……私も遂にリーシェの初めてが――」
そうして、フラン姉様に2つの初めてをあげると宣言してから早速やろうとしたけど、それが叶う事はなかった。
「姉妹水入らずの時間、失礼致します! 聖魔騎士団の人間たちが襲撃を仕掛けてきました! 美鈴様やレミリア様が必死に止めていますが、多勢過ぎて侵入者が館の中にも……!?」
何故なら、ノックもなしに部屋の扉が開き、メイドさんが敵襲の知らせを私とフラン姉様にしに来たからだ。何とも変なタイミングで来てくれたなと思いつつ、館の中の侵入者を早急に片付けて美鈴やレミリア姉様の援護に向かおうと決意して動こうとした瞬間、私の隣から猛烈な『狂気』を感じた。
「……」
「「……」」
言わずもがな、それはフラン姉様から発されるものであった。敵襲の報告によって否が応でも対応しなければならず、私と初めて何かする事に対して水を差され、機嫌が悪くなったのだろう。しかも、水を差してきた相手が館の住人ではなく、外敵だと言うのがそれに拍車をかけていた。
そして、フラン姉様は無言で立ち上がると部屋を出て行き、この一時を邪魔してくれた外敵を始末するためにエントランスへと向かっていったため、私も一緒についていった。
(それにしても、レミリア姉様が処理出来ない程の大軍……一体どれだけの量の敵が……?)
部屋から出て外敵の居るだろう場所まで向かっている途中、私はそんな事を考えていた。頼りになる門番の美鈴に当主であるレミリア姉様が居るのにも関わらず、処理しきれない敵の量とは一体どれ程のものなのか、敵に相当な手練れがどれ程居るのかなどだ。まあ何にせよ、美鈴とレミリア姉様が止めきれないと言う事実が、油断していると不味いと教えてくれているから、最初から全力を出すつもりで行こう。
「くっ! やはり来たか!」
「分かっちゃいるが、フランドールとか言う奴と……
「フランドールは想定済みだが、まさか奴まで――」
色々と想定しながらエントランスへと向かうと、中には軽く20~30人位の退魔系の装備を身につけた、それも聖魔騎士団のエンブレムを肩の部分に着けた人間がそこには居た。おまけに、見ただけで分かるくらいの実力者も居て少しだけ焦ったけど、そんな心配はすぐさま消え去る事となった。
「『狂気の啓示』」
何故なら、フラン姉様がそう呟いた後に凄まじい速度で実力者らしき人物に接近して頭を掴み、一撃で捻り潰したからだ。あまりにも突然の事に対応出来ないでいる相手であったが、そんな相手にもフラン姉様は襲いかかり始めた。
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