目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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悪魔の妹と触れざる天使

「うわぁぁぁ!?」

「ちょっと待……ぐぇっ!」

「分かっちゃいたけど、コイツヤバすぎだろ! 無言で魔法銀(ミスリル)の兜ごと頭を掴んで捻り潰すとか……本当に吸血鬼なのか!?」

 

 フラン姉様が聖魔騎士団の面々に無言で襲いかかってすぐ、エントランスは阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。敵集団の攻撃を防御魔法や回避行動で対処しつつ、頭を魔法銀の兜ごと捻り潰したり全力のレーヴァテインで容赦なく胴体を一刀両断したりしているからだ。

 

 瞳のハイライトは消え失せ、翼はフラン姉様自身の魔力の影響で輝きを増している程怒っているだけなら1度見た事はある。けど、更に一言も発さずに黙々と敵を、まるで鬱陶(うっとう)しい虫を退治するが如く処理していくのを見て、私はある種の安心感を得ている。しかし、騎士団の面々はそれに対して絶対的な恐怖を持っているようで、隊列が若干乱れ気味であった。

 

 当然だけど私はそんな中見てるだけでなく、敵集団の中で戦っているフラン姉様の死角から狙う敵や、メイドさんたちの避難している方面に向かおうとしている輩を貫通力特化の魔法の矢で狙い撃ち、サポートをしていた。

 本当なら雷属性の矢を使った方が複数を一気に巻き込めるからそっちの方が良いのだけど、魔導師の防御魔法に流されたり、放電爆発にフラン姉様を巻き込む可能性が高いから、能力を応用して狙い撃ちの命中率をあげる方針を取らざるを得ない。

 

「いや、上空から魔法銀の兜を貫通する程の魔法の矢をかなり正確に当ててくる『禁忌(リーシェ)』の方が危険な手合いだ。フランドールの方は、魔法銀に触れた部分であればダメージを与えられているのだろう?」

「馬鹿か? その代償が1人の命じゃ割に合わねぇよ! て言うか、すぐさま再生されてるから実質無傷、百歩譲ってかすり傷だぜ?」

「ちっ。確かに、これではじり貧だな……魔導師隊!! フランドールは聖騎士隊がどうにかするから、一部を残して空中の奴に集中しろ!」

「「了解!」」

 

 そんな感じで時折、私の方に飛んで来る矢や魔法を相殺や回避しつつ敵を射抜いていると、急に飛んで来る攻撃の数が増えてきたため、一旦サポートを中断して相殺や回避に集中を始めた。どうやら、彼らは上空から矢を放って攻撃を仕掛けてくる私を本格的な脅威と見なし、対空攻撃の可能な魔導師隊を差し向けて来たらしい。まあ、当然と言えば当然だろう。

 

「くそっ、何だよアイツは! これだけの弾幕を掠りもせずに避けるか相殺させるなんて化け物かよ!?」

「先ほどよりも攻撃の手は緩んでいるとは言え、これでは状況は変わらんではないか!」

「喧嘩している場合ですか! こんな時に!」

 

 魔導師の数がかなり多いと言うのもあるけど、彼ら自身の魔法技術の高さと私自身の戦闘経験のなさも相まって、能力を使っていても攻撃にあまり移れてはいなかった。仮に、私にこの能力が無ければ、今頃悲惨な状況に陥っていたかも知れない。

 

 それに比べ、フラン姉様の方は私と違って終始攻める側で居た。レミリア姉様を上回る程の元々の基本スペックの高さや私よりも豊富な戦闘の経験、並の魔導師を余裕で捻り潰す程優れた魔法の腕が合わさっているからだろう。相変わらず無言ではあるけど。

 

(とは言え、何か攻撃を仕掛けなきゃフラン姉様の足を引っ張る事になってしまう……頑張ってやるしかないか)

 

 敵の攻撃を回避や相殺しながらそんな事を思った私は、魔法の詠唱に入るため一旦回避に能力を全振りして、ここら辺で一転攻勢を仕掛けてみる事に決めた。

 

「『遥か古代の神の矢よ、我が前あらわる幾多の敵を』」

 

 深呼吸をした後、私は元々『誘導陣術』とセットで使用する予定であった『神弓 イチイバル』と言う魔法の詠唱に入った。誘導陣術の方は実用に足る性能がないが、こちらの方は実戦で使える程度には仕上がっていたため、使用を決めた。

 

「『御身に宿る力を以て、空駆け穿て、イチイバル』」

 

 15秒後、時々まともに光属性の魔法に当たりそうになりながらも何とか詠唱を完了させ、完成させた3本の矢を敵の集団へと向けて放った。

 

 元はたった1本の矢であったこれは、威力は多少低下するものの飛翔し初めてすぐに、10本に分裂して敵に炸裂する効果があり、それが3本だと30本の矢の雨と化す。

 

 そうやって開発したこの魔法は現段階の私の想定通りの性能を発揮、30本の矢の内6割程度が敵の身体のどこかしらに命中してかなりのダメージを与える事が出来、その中の半分の敵を死なせる事に成功する。誘導陣術が完成し、セットで使えるようになった暁には更に強力な遠距離攻撃手段となる事だろう。

 

 ただし、詠唱を挟んでいるとは言え負担がそれなりに大きい事と、分裂した矢の威力自体は私の奥義魔法に遠く及ばないのが欠点である。1本ずつにそんな高威力を発揮する程の魔力を込められない訳ではないが、やって放った瞬間に死ぬのが目に見えているため、絶対にやらないけど。

 

「これ、聖魔騎士団の上位者をもっと連れてきた方が良いんじゃないです? 紅い悪魔のレミリアに悪魔の妹のフランドールのみであればまだしも、触れざる天使の奴が揃ってるこの状況、どう考えても戦力が足りませんよ!」

「お前、2つ名つけるの好きだな……って、そんな事はどうでも良い! コイツの言う通りに生きてる奴は撤退しろ! このままじゃ全滅するぞ! 外の奴らにも伝えるんだ!」

「「了解!」」

 

 そんな事を考えながら中に入ってきた敵をかなり減らした時、1人が隊長らしき人物に撤退を進言した事によって、中に居る全ての生き残りが館からの撤退を開始したのを見た。

 追撃しようかと思ったけど、万全の体力でないこの状況でそれをして、不意討ちで死なないとも限らない。今までは能力の負担に耐えきる事が出来ていたから、不意討ちを含めた攻撃が当たらなかったに過ぎないからだ。フラン姉様も同じらしく、息を切らしながら僅かに残った敵の撤退を見送っていた。

 

 こうして、完全に殲滅させる事は出来なかったものの、館内の敵の大半を排除する事に成功、無事にこの状況を抜け出す事が出来た。

 

 




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