目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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今話はパチュリー視点です。それと、少し長めになっています。


パチュリーと紅魔館

(運命って、分からないものね……)

 

 持病による体調不良などが相まり、ロクな抵抗も出来ずに魔女狩りの集団に捕まったあの日、生きる希望を全て捨ててはいなかったものの、私はもうダメかもしれないとも思っていた。仮に逃げ出せていたとしても、周りには敵しか居なかったからだ。

 

 しかし、私は突如捕まっていた村に襲来した3()()()()()()に何故か助けられ、彼女たちの根城である真っ赤な館へと連れていかれる事となる。そして、そのまま流れで3人の吸血鬼の住む館の住人になってしまった。

 ただ、久しぶりに張り詰めずに安心出来たからなのか、あれだけ酷かった体調も4日経てば大分楽になった。今までの生活であればもっとかかっていたはずだから、この館の住人になったのは正解だろう。大多数の人間にとっては最高に危険なこの場所でも、今の私にとっては最高に安全な場所であるから。

 

「パチュリー。調子はどうかしら?」

「お陰様で、大分楽になったわ。久しぶりに張り詰めず、安心して休めたからね」

「……そうみたいね。良かったわ」

 

 すると、部屋の中に水色がかった髪の吸血鬼が入ってきた。()()()()()は幼い子供のそれであったが、その身に秘める魔力は今まで会った事のある大人の吸血鬼……いや、それ以上かも知れない。そんな事を考えながら、彼女の私の体調に関する問いに対して大分良くなった事を伝えると、彼女は見た目相応の笑顔を返してきた。余程私の事が心配だったのが分かるけど、今までこんなに心配された事はないから悪い気は全くしないけど、なんだか妙な気分だ。

 

「なら、そろそろ館の皆の紹介と案内をしようと思うのだけど、大丈夫?」

「勿論よ。ここの住人になるのだから、自己紹介位はしないとね」

「分かったわ。じゃあ、行きましょう」

 

 頭の中でそんな事を考えつつ応対していると、私に館の案内と住人の紹介をしたいけど大丈夫かと、吸血鬼が聞いてきた。当然、体調も万全とは言いづらいけど良くなってきたため、それを了承して彼女と一緒に部屋を出ていった。

 

「まずは私ね。名前は『レミリア・スカーレット』って言うの。まあ、こんななりだけど紅魔館の当主をやってるのよ」

 

 そうして館の中を歩きながら案内されつつ、彼女の自己紹介を私は聞いていた。レミリアと名乗った吸血鬼はどうやら、この館『紅魔館』の当主をしている吸血鬼であるらしい。両親は居たらしいが母親は吸血鬼特効の呪いか何かで死に、父親は『リーシェ』と言う名の末妹の容姿を忌み嫌い過ぎた故に幽閉し、挙げ句の果てに殺そうとしたため、次女の『フランドール』と協力して逆に殺してやったとの事。私と同等かそれ以上の濃い経験を、彼女は積んでいるようだ。

 

「あっ、お姉様に……パチュリー! 体調、良くなったんだ!」

「ええ。貴女のお姉様のお陰で、大分良くなったわ」

 

 レミリアと共に館内を歩きながら会話を交わしていると、ある部屋から出てきた吸血鬼の1人に声をかけられたため、歩きながら応対した。レミリアに向かってお姉様と言っていた事から、彼女は『フランドール』か『リーシェ』のどちらかだろう。

 

「そっか……あ、そう言えばまだ自己紹介してなかったよね! 私は『フランドール・スカーレット』って言うの! 『フラン』って呼んでね!」

「分かったわ。よろしくお願いね、フラン」

「うん!」

 

 そんな事を思っていたら、吸血鬼が自己紹介を始めてきた。どうやら、宝石のような翼持ちの彼女はフランドールの方であったらしい。体調が割と良い時に改めて相対してみて思ったけど、フランの方がレミリアより純粋な力では上回っているように感じた。なので、レミリアにそれとなく聞いてみたところ、どうやら本当にその通りであるらしい。子供の内からこれ程なら、大人になったらどれ程の強さになるのだろうか。

 

 フランの自己紹介を終え、館内歩きに加えた後は他愛もない会話などを交わしつつ、すれ違う人間や妖精のメイドたちに挨拶と軽い自己紹介をしていた。驚いたのが、この館に居る人間のメイドたちは皆殆んど自分の意思で来て働いているらしい。衣食住がしっかりと保証され、更にこの人間たちは食糧として見なされる事はなく、身の安全は守ってもらえるようだ。

 

「失礼するわよ、リーシェ」

「レミリア姉様にフラン姉様? 何か用事……なるほど。快復したみたいで良かったね、パチュリー。えっと、自己紹介を……私は『リーシェ・スカーレット』って言うの。まあ、見ての通り姉様2人と違って、部屋に引きこもりがちな吸血鬼だよ」

 

 私が吸血鬼の館に居る人間たちの待遇の良さなどに驚いていると、レミリアがとある部屋の扉をノックして入っていったため、フランと私もそれに続いて入って行く。すると、そこに居たのはパッと見天使に見えてしまう容姿を持つ吸血鬼であった。自己紹介を聞くに、どうやら彼女が末妹のリーシェであるようだ。

 

 確かにリーシェの天使のような容姿にも驚いたが、それよりも私は部屋の中にあった物に興味をそそられた。本棚に置いてあった数々の魔導書もそうだけど、彼女が手に持っていた『リーシェの魔導書』と言うタイトルが印字されている本の事である。あの本の中身が文字通りであるならば、あれは自作の魔法についてが載っている魔導書であるはずだ。

 

 是非とも見てみたいと言う衝動に駆られるが、やはり止めておこうと理性で抑えた。魔法使いにとって、自作の魔法について記された魔導書は、例外を除いて基本的に門外不出の物であるからだ。私だって、自分で作った魔法について記した魔導書はそうそう見せようとも思わない。

 

「見たいなら、良いよ」

「え……?」

 

 なんて事を思っていると、リーシェがその手に持っていた魔導書を躊躇いもなく私に手渡してきた。思わず突き返そうとしてしまうも、見せてくれると言って渡してきたのに見ないのもあれかと思ったので、受け取って見てみた。

 

 そこに記されていたのは、私の見た事もない魔法の数々であった事から、やはり文字通りの彼女独自の魔導書であったようだ。しかも、その魔法の1つ1つの術式はかなり完成されたものが多く、それでいて効果が凄いものばかりである。これで未だに研究を始めて30年と少しだと言うのだから、驚きしかない。

 

「えっと……パチュリー的には私の魔法、どうかな?」

「独学かつ、たった30年でここまで出来れば言う事なしよ。きっと、私と同じくらいの年数を費やした頃には追い抜かれてるかもね」

「そう? ありがと」

 

 だから、リーシェからこれに書かれた魔法についての評価を求められた時、素直に称賛する言葉が出てきた。と言うか、これがまだまだと言う評価なら、世の中の大半の魔法使いの立場がなくなる事だろう。

 

 見せてもらった魔導書を返してリーシェの部屋を出た後は、この館の門を守護する東洋の妖怪の元へと向かった。

 

「あっ、パチュリーさん。体調戻ったんですね」

「お陰様で。と言うか、自己紹介する前に私の名前を知ってたのは、レミリアから?」

「はい。レミリアお嬢様からですね。ある程度の事は聞いています」

「なるほど」

 

 で、今までの流れで自己紹介をしようと思ったら、先に私の名前を知られていた。どうやら、レミリアから私の名前を含めたある程度の情報を聞き入れていたらしい。これなら、今すぐ自己紹介する必要性はないだろう。

 

「あ、申し遅れました。私は『紅美鈴(ホン メイリン)』と言って、この館の門番をしています。これからよろしくお願いしますね」

「ええ。呼び方は……美鈴で良いかしら?」

「良いですよ! パチュリーさん」

 

 そう考えながら一言二言会話を交わして場を後にし、最後に私のために整えてくれたと言う部屋へと案内される過程で、私は度肝を抜かれる事となった。何故なら、部屋へと向かう途中に膨大な量の魔導書を含む本が所狭しと置かれていたからである。

 

「ふふっ……驚いたかしら? 勿論、貴女もここの住人なんだから、使いたければ自由に使ってもらっても構わないわよ。何なら、ここを丸ごとパチュリーの領域にしても問題ないわ。私たちは、時々使えればそれで良いから」

「……」

 

 しかも、レミリアはこの膨大な量の本を私の裁量に任せるとまで言ってきたから、更に驚く事となった。まあ、この量の本をしっかりと管理するのは大変そうだから、それを押し付けられたとも考えられるけど……それを入れても、私にとってはこの量の本を自由に出来ると言うのは非常に大きかった。

 

 そして、自分の私室となる部屋も1人で居るには大きすぎるとも言える広さであったから、あまり誰にも見せたくはない魔導書も沢山保管出来るだろう。

 

「じゃあ、私たちはこれで部屋に戻るけど、何かあったらいつでも訪ねてきてね」

「何かやってる時じゃなければ、力になるから!」

「勿論、頼りにしてるわ。2人とも」

 

 そう言い残して、案内を終えたレミリアとフランの2人が部屋を出て行った後、私は心の中でこれから始まる安寧の日々を想像しながら、自分が手に持っていた本を開いて読み始めた。

 

 

 




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