「さてと……準備は良いかしら? リーシェ」
「うん、大丈夫。ちゃんと準備は出来てるから」
レイブン家の使者から聖魔騎士団の本拠地を襲撃する計画について聞かされ、それに参加を決めてから3ヵ月が過ぎたとある日、私たちは実戦形式の手合わせをするために地下室へと来ていた。
目的は、身近に居る実力者である私たち同士で手合わせをする事によって、仮に同等かそれ以上の強敵が出現したとしても、慌てずに対処しやすくするためである。流石に
ちなみに、あの日来たレイブン家の使者は近い内に打ち合わせのために伯爵を向かわせると言ったけど、3ヵ月経った今も来ていない。忘れているのか、はたまた彼らにとっての
「取り敢えず、前に決めたルールの再確認をするわよ。2人とも」
「はーい!」
「うん、分かったよ」
今この状況下で全く関係ない事を考えながら、前もって姉様たちと決めた、実戦形式の手合わせのルールをこの場で再確認した。
中でも特に重要なのは、この2つの項目である。能力の使用では、私とレミリア姉様は大丈夫だけどフラン姉様は一撃必殺のものであるため禁止、魔法の使用も殺傷力の高過ぎるものは威力を抑えて使うか、不可能ならばそもそも使わないでおく事だった。
例を挙げるなら、レミリア姉様の『スピア・ザ・グングニル』や、フラン姉様の『レーヴァテイン』、私なら『
「じゃあ、ルールの確認も終わったところで……行きましょうか」
「分かったよ、レミリア姉様」
「お姉様もリーシェも、頑張ってねー!」
ルールの再確認も終えたところでお互いの距離を少し離し、私とレミリア姉様はそれぞれ雷弓とグングニルを構え、いつでも戦闘に入れるように準備を整えた。
「行くわよ、リーシェ!」
「良いよ、姉様!」
そうして、掛け声と共に最初に攻撃を仕掛けてきたのはレミリア姉様であった。雨あられの如く、紅い光弾が私に向けて放たれてきたのだ。
1つ1つはそれ程威力はないものの、その分手数を非常に多く増やせる。たかが低威力の光弾と侮ると痛い目を見るため、しっかりとこれを回避し、回避不可能であれば防御魔法で防ぐかこちらも雷の矢で相殺して当たらないように努めた。
時々出来た隙をついて私も攻撃してみるものの、能力発動中のレミリア姉様に当てるには至れていなかった。と言うか、経験値が違い過ぎるから、能力を使われていなくても多分厳しいだろう。
「やっぱりこの程度じゃリーシェには当てられないか……なら!」
「ちょっ……姉様いきなりペース上げ過ぎじゃない!?」
すると、レミリア姉様は先程の光弾を小さなグングニルのような槍弾に変え、同時に自身もグングニルを片手に攻撃を仕掛けて来た。この槍弾が中々の曲者で、弱くも追尾性を持っているため、ギリギリの回避では誘導されて当たってしまう特性があった。
槍弾だけならともかく、レミリア姉様自身まで仕掛けてきているこの状況下、今の私にこれを素で避けるのは至難の技なので、ここで早速能力を惜しみ無く全開で発動させる。
(うわっ、どう足掻いても回避不可能な攻撃が4割……なら)
結果、今現在私に向けられた攻撃の4割が避けられない事が判明したため、私はある魔法を略詠唱で発動させた。
「行くよ!『
自分の周りに中規模程度に雷を降らせるこの魔法で、回避不可能な槍弾を相殺しつつ、身一つで突撃してくるレミリア姉様の動きを制限させながら回避に専念した。近接戦闘ではまともにやり合っても全く勝ち目がないからだ。
「なるほど! 厄介な雷……だけれど!」
私の降らせた雷は確かにレミリア姉様の動きを制限し、更に当てる事でダメージを与える事が出来ていたけど……それだけで終わってしまう。能力で雷の降ってくる位置を予知して降らない位置を飛び、私が攻撃を仕掛けて当てるように仕向けてもグングニルで雷を弾いて苦手な至近距離まで肉薄してくると、蹴りを見舞ってきた。
「うっ……くぅ……」
咄嗟に防御の構えを取れたお陰で蹴りの威力をかなり軽減する事が出来たものの、元々耐久に難のある私には結構なダメージとなってしまった。防御魔方陣が粉々に砕け散る程の威力の蹴りを食らい、骨が折れたかと思う位には痛かったけど、折れてはいなかった。
(前よりは実力差は縮んだけど、まだ足りない……か。なら、負担どうこう言ってる場合じゃないかも)
今の攻撃で私は、元々の身体の弱さを抜きにしても実力差が未だに大きい事を思い知らされた。だから、パチュリーのお陰で完成に至ったあの魔法を発動させる事を決意した。
「『迷いし者を導くしるべ、光が届かぬ闇の中でも』」
「っ!? させないわよ!」
当然、レミリア姉様はこれをさせまいとあらゆる攻撃を仕掛けてくるも詠唱と回避に集中しているため、何とかかすり傷で済ませる事が出来ていた。
「『荒れて狂いし天の中でも導きましょう、終わりまで』」
「くっ! 詠唱完了させちゃったようね……」
詠唱を挟んでいるとは言え、発動させるまでに結構な力が消費されてしまった。やはり、能力全開で攻撃を避けながらと言うのはまだまだ私にとっては大きな壁となっているらしい。
「さてと……レミリア姉様!『
「背中に魔方陣……?一体何なのよ、あの魔法……っ!? 不味い!」
そして、『
強い誘導性を持たせたこれは、互いに誤爆しないように距離を開けつつ、青白い尾を引きながらレミリア姉様を高速で追い掛け始めた。今までとは違い、レミリア姉様は明確に焦りを見せたけどすぐに落ち着きを取り戻し、大量の槍弾を全方位にばら蒔いて迎撃を試み始める。
「しまっ――」
レミリア姉様が、後方からジリジリ距離を詰めつつ追尾していく雷拡の矢を6つ程迎撃したところで、こっそり用意していたもう1つの矢を放って
結果、雷拡の矢の崩壊にレミリア姉様を巻き込んだ上、後ろから追ってきた3つの矢も近くで崩壊、それらが全て合わさって雷の大爆発となり、眩い閃光と音が地下室に響き渡ったため、目を瞑った。
「はぁ……はぁ……全く……容赦ないわね、リーシェ」
数秒程度の時間が経ち、閃光と音が収まったタイミングで私はレミリア姉様がどうなったのかを確認するため、瞑っていた目を開けた。
「「あっ……」」
「……? 2人とも、呆けた声を出してどうしたの……えっ」
すると、目の前に広がっていたのは……雷の大爆発の副産物である熱によって着衣の大半が消し飛び、素っ裸と言っても差し支えない程の恥ずかしすぎる格好と化していた、レミリア姉様が居る光景であった。良く見たら、所々矢による傷がちらほら見えるけど、大怪我は負っていないようなので良かったと、ホッと一安心した。
「ちょっ……2人とも、恥ずかしいから見ないでぇ……」
すると、私とフラン姉様の視線の先が自分の身体に向いている事に気づいたレミリア姉様は、自分の今の格好を確認してほぼ素っ裸と言う事に気づいた瞬間、顔を真っ赤にして恥ずかしがり始める。
「……フラン姉様。レミリア姉様の替えの洋服、持ってきてあげてくれないかな?」
「うん、分かっ――」
レミリア姉様の気持ちは痛い程良く理解出来たため、すぐに視線を反らしてフラン姉様に新しい洋服を持ってきてもらうようにお願いをした。
で、私のそのお願いを聞き入れてフラン姉様が即座にレミリア姉様の替えの洋服を持ってこようと地下室の扉を開けた瞬間……
「お嬢様方、お客様がお見えに……あっ」
タイミング悪く、そこにメイドさんが私たちを呼びに来てしまった。私が幽閉解除された際にあった物は全て元あった場所に戻してしまったが故に、レミリア姉様が身を隠す場所がどこにもない。
「うぅ……」
「えっ!?」
その結果、レミリア姉様は近くに居た私の背後に密着するようにして、今にも泣きそうな表情を浮かべながら隠れてしまった。
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