「フラン、リーシェ。調子はどうかしら?」
「絶好調だよ、お姉様! 今からたっぷり遊べると思うと、スッゴく楽しみ!」
「私は普通かな。まあ、姉様たちの足を引っ張らない程度には頑張るよ」
聖魔騎士団の本拠地襲撃の流れを協議してから半年、私たちは館を出る準備に入っていた。1週間前、レイブン伯爵の使者から騎士団に動きが見られたとの情報が館にもたらされたからである。
その際、半年前に集まった各吸血鬼の代表が率いる戦力もレイブン家の住む『
「さて、私は準備出来たけれど……フランとリーシェはどうかしら?」
「私はいつでも良いよ!」
「私もフラン姉様と同じだよ、レミリア姉様」
頭の中で1週間前の事を振り返っていると、レミリア姉様が私とフラン姉様に準備が出来たかと、そう聞いてきた。と言っても、私は持っていく物は特にないため、フラン姉様がいつでも良いよと言った後に自分も同じであると言う事を伝えた。
「分かったわ。じゃあ皆、行ってくるわね」
「気をつけて下さいね。お三方の無事を祈りながら、館の守備を頑張ります!」
「まあ、レミィたちなら大丈夫なのだろうけど……無事に戻って来なさいよ」
「本当、お願いしますよ。誰か1人でも物言わぬ屍となって帰って来たら私、悲しみのあまり後を追いそうですからねー」
「アハハ! 勿論だよ、皆!」
「約束するよ。無事に戻って来るって」
レミリア姉様にそれを伝えた後は、心配そうに見送りに来てくれた美鈴やパチュリー、エルにその他のメイドさん数人に絶対に死なずに戻ってくると誓い、手を振りながら戦力となる吸血鬼たちが集まる『黒夜館』へと向かって行った。
目的地へと向かう道中、飛行速度でも雷属性の魔力の補助がなければレミリア姉様やフラン姉様に食らいつくのがほぼ不可能である事に、今更ながら気づいた。まあ、雷属性の魔力による補助を受けてようやく同等の速度になる事は出来たけど……
「雷を纏いながら飛ぶとか目立ちすぎる……」
「確かにそうね。それに、魔力の消費量も中々多そうだし……」
「そうだね、お姉様……リーシェ! それやらなくても、私たちが貴女に合わせてあげるから大丈夫だよ!」
青白い稲妻を纏って妙な音を立てながら飛行すると言う、夜にやるには目立ちすぎる状態となってしまった。レミリア姉様の心配する魔力の消費量についても確かに無視出来ない位にはあったため、フラン姉様の合わせてあげる発言を機に、私の通常速度で合わせて飛んでもらう事になった。
(素の状態での飛行速度を上げる練習しなきゃなぁ)
そんな事を考えながら飛んでいく事10分、私の視界に闇夜に溶け込むような色合いの館が映り込んできた。レミリア姉様に聞いたところ、それが目的地の黒夜館であるようだ。随分時間に余裕を持って紅魔館を出たはずなのだけど、遠目に見て軽く数十人の吸血鬼や魔法使いたちが庭に居るのが分かった。
「おお……あれが父の言っていたスカーレット家の三女『リーシェ』か。確かにあの容姿、驚きを禁じ得ないぞ」
「それに、彼女には後ろにも『目』があるらしいですぞ。何でも、背後からの不意の攻撃も、あっさり避けられてしまう」
「だから、彼女には『触れざる天使』と言う2つ名があるのか。確かに、言い得て妙だ」
で、私たち3人が出来そうなスペースを見つけて着陸し、声をかけるためにレイブン伯爵を探している最中に私の噂話が耳に入ってきたものの、大した事はなかったのでそのまま聞き流す事に決める。
「スカーレット家の皆さん。お待ちしておりましたわ」
「ええ。館を早く出たつもりなのだけど、この様子を見るに随分と待たせていたみたいで、申し訳ないわね」
「いえいえ、とんでもないですわ。予想以上に彼らが来るのが早すぎただけですので、貴女たちは何も悪くないですよ」
そんな感じで他にも時折聞こえてくる、私や姉様2人についての噂話をスルーしつつ、レイブン伯爵を探して歩き回り始めて少し経った頃、後ろから私たちを呼ぶ声がしたので振り返って見てみた。すると、そこに居たのはレイブン伯爵ではなく、彼の妻であるルーテ夫人であった。
前に会った時とは違い、自身の身長ほどの長弓を背負っている彼女は、伯爵に勝るとも劣らない妖気を放っていた。しかも、私も弓を扱うが故に、一目見ただけでルーテ夫人には
「とまあ、挨拶はこの位にしておいて……リーシェ。貴女が敵に対する先制攻撃と、その後の後方支援を行うにあたって何かやっておきたい事はある?」
「うーん……じゃあ、味方全員の『魔力』を少しずつ取り込むのを手伝ってもらえると嬉しいかな。私の攻撃で、万が一
すると、ルーテ夫人が挨拶を手早く終わらせ、私に対して襲撃の際にやっておきたい事はあるかと質問してきた。想定外の質問に少し驚きつつも、私の遠距離攻撃魔法で味方に危害を与えないようにするための『魔力の提供』を手伝って欲しいと、そうお願いをした。
「了解。と言う訳で、彼女の攻撃で
結果、ルーテ夫人がそう呼びかけた事によって、大半の人がほんの僅かの魔力を快くかどうかは判断に困るものの、すぐに提供してくれたお陰で15分も経過する頃には、味方全員の魔力を無理に頭に叩き込む事が出来た。これで、私の視界外かつ探知範囲内の味方を誤って攻撃してしまう可能性を極限まで減らす事に成功した。
「さて、もうやる事はないらしいですし、そろそろ皆でここを出ましょう! 我々を脅かす聖魔騎士団に、吸血鬼の力を見せるのです!!」
「おぉぉぉーーー!!」
こうして色々と戦闘前の準備を整え、ルーテ夫人がこの場に居る全員に向けて鼓舞するような言葉をかけた後、全員で目的を果たすためにこの場を飛び立っていった。
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