目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

50 / 251
聖魔騎士団との戦い(前編)

(はぁ……緊張してきた……)

 

 黒夜館を飛び立った後、聖魔騎士団の本拠地へと向かう吸血鬼軍団の前衛部隊の前に居た私は、言い表し難い緊張感に包まれていた。超遠距離からの先制攻撃と言う役割を割り振られているのと、かつ万が一攻撃を受けた際に1番狙われやすい位置に居るためである。

 

 私への攻撃は能力で察知して回避する事が出来るからまだしも、超遠距離攻撃によって相手に与えた損害の大小によって、ここに居る吸血鬼たちの生存確率が左右されると言うのは極めて重要だ。

 

 正直、誰が聞いても最低だと思うような事を言ってしまうと、他の吸血鬼の事などどうでも良い。ただ、それだと私だけが良くても姉様2人や美鈴、パチュリーやエル、館のメイドさんたちを厄介事に巻き込んでしまいかねない上、損害を与えられなければ相手が活気づいてしまうだろうから、何がなんでも頑張らないといけない。

 

「今までは噂伝いでしか聞いた事ありませんでしたが、遂にリーシェさんの『魔法』を見れるとは。こんな状況ですが、とても楽しみですねぇ」

「はぁ……うん。期待せずに見ててよ、レイブン伯爵」

 

 そうやって、心の中で館の皆のために頑張ろうと誓いを立てていると、レイブン伯爵が隣へとやって来て、私の『魔法』を見れる事が楽しみであると声をかけてきた。良く考えたら私の作った魔法は姉様2人や館の皆以外だと、館内に襲撃を仕掛けてきた敵に対してしか使った事がないなと思いつつ、期待せずに見ててくれとのやり取りをレイブン伯爵と交わしていた。

 

(……っ!)

 

 すると、私の能力の探知範囲内に聖魔騎士団特有の何だか嫌な感じの魔力をかなり大量……脅威度が高そうな人物を60も捉えたため、レイブン伯爵にお願いして後ろからついてくる味方に対し、その場で一旦止まってもらうように伝えてもらった。

 まだ、目的地まで数km程度の距離があるため、味方の吸血鬼たちも戸惑いを隠せないと言った感じだけど、捉えたのに捉えられていない振りをして近づき、無駄な被害を生み出す方が良くない。だから、私のこの選択は正しいと言えるはず。

 

「しかし……本当にこの距離を――」

「信じなくても別に良いけど、私は嘘はついてないとだけ言っておくね。さてと……」

 

 頭の中でそう言う考えを巡らせながら、私は誘導陣術(インディクションサークル)の詠唱を始める。

 

「『迷いし者を導くしるべ、光が届かぬ闇の中でも』」

 

 私がそう言うと、背後で複雑な模様の魔方陣が形どられてくのが見えずとも理解が出来たため、一息ついてから詠唱を再開した。

 

「『荒れて狂いし天の中でも導きましょう、終わりまで』」

 

 最後まで詠唱を終えた瞬間、魔力がかなり消費されたような感覚がしたため、無事に発動自体は成功したのは分かった。不思議とそれ程疲れがなかったのは、出発前に魔力を少しずつ提供してもらったからだろう。味方を攻撃に巻き込んでしまわないようにやったこの行動が、思わぬ形で私の助けとなった感じである。

 

 そして、当然ではあるけれどこの魔法単体のみでは全く役に立たないため、純粋な攻撃魔法である『【神弓】イチイバル』の詠唱に入った。脅威度の高い敵の数は60だけど、紅魔館に攻め込んで来る予定だった100を超える聖魔騎士団の事を考えると、総合的な戦力の数はそれの比ではないのは明らかだ。しかし、無関係な人物を巻き込み過ぎるのは好ましくないから、今回用意する雷矢の数は6本かつ貫通特化のものにしておく事に決めよう。

 

「『遥か古代の神の矢よ、我が前あらわる幾多の敵を』」

 

 詠唱の前半部分で放つ矢を生成するための魔方陣を生成し、一息ついた。

 

「『御身に宿る力を以て、空駆け穿て、イチイバル』」

 

 一息ついた後は生成した魔方陣から1本ずつ矢を取り出し、能力で探知した敵の中から10人をロックオンし、かの存在が居る方角へと放つと言う行為を6回繰り返した。

 

(命中率は……7割か。にしても、突然矢が消滅するなんて……)

 

 そうして、放った矢の3割が迎撃された気配がないのに突然消滅すると言う奇妙な事態が起こったものの、狙った7割の敵に命中して葬る事が出来た。先制攻撃としては上出来だろう。

 で、この誘導陣術を発動したままにしておくとあらゆる魔法攻撃に勝手に強い追尾性が付与され、通常攻撃や魔法ですら冗談ではない魔力消費量となってしまって、私の存在自体がお荷物と化してしまうから、解除しておいた。

 

「リーシェさん……終わりました?」

「うん、終わったよ。後は、他の吸血鬼さんたちと攻め込むだけ」

 

 先制攻撃が済んで誘導陣術を解除した後、側で見守っていたレイブン伯爵に終わったのかと聞かれたから、終わったと答える。すると、それを聞いたレイブン伯爵が後ろに居た前衛たちに先制攻撃が終わった事を伝えて、彼ら彼女らを率いて先に飛んで行ってしまった。

 

「ふふっ……流石はリーシェ、私の妹ね」

「そうだね、お姉様! よーし! 私もリーシェに負けない位に頑張るぞー!」

 

 こうして、多少の想定外はあったものの先制攻撃を成功させた私は、離れた所から見守ってくれていた姉様2人と共に、前衛たちの後についていって聖魔騎士団の本拠地へと向かって行った。




ここまで読んで頂き感謝です。お気に入りや評価をしてくれた方に感謝です。感想を書いて下さった方も、ありがとうございます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。