祝宴への誘い
「それで、如何でございますか? リーシェ様」
「いや……私、正直言って聖魔騎士団との戦いに勝利した
聖魔騎士団との戦いを終えてから2週間、魔法と能力の使いすぎによる疲労困憊な状態から、姉様2人やエルを筆頭とした館のメイドさんや住人たちのお世話のお陰でほぼ復活する事が出来たタイミングで、私はとある知らないお客さんからの執拗とも取れる、とある吸血鬼一家の館で行われるらしい『勝利の祝宴』のお誘いを断れず、苦慮していた。
ただ、苦慮していたとは言っても、私が全く対応しなかった訳ではない。自分からしっかりと興味ないから行かないと言う事を根気よく説明したし、それでも無理だったから多少呆れと怒りを露にして断りも入れたりしてみたけど、何故か全く引いてくれない。
「そんな事言わずにどうか……」
「はぁ……勝利の祝宴とか言う奴、レミリア姉様とフラン姉様は参加するの? しないの? 私1人だけだったら
あまりにも来てくれとしつこいから、実力行使をしようかと言うのが頭を過ったけど、それを実行に移したせいで巡りめぐってレミリア姉様やフラン姉様、美鈴やパチュリーやエルたちの身に何か起きては不味いから、実力行使は却下した。
とは言え、このままではいつまで経っても面倒極まりない状態が続くだけとなってしまうから、しょうがなく勝利の祝宴と言うイベントにレミリア姉様やフラン姉様が行くなら行くと妥協する事に決め、そう伝えた。館の皆とは除いて、大人数で騒いだり飲んだりする類いのイベントに興味がないと言うか苦手な私にとって、姉様2人の参加は絶対に譲れない条件である。
「勿論、参加すると言われましたし、フラン様に至っては貴女と行ければ良いなと笑顔で居られましたよ。と言うかそもそも、戦闘時に大活躍された2人を誘わず、リーシェ様のみを誘うなどと言うのはまずあり得ませんから」
「ふーん……気が進まないけど、なら行くかな」
「あ、ありがとうございます! それでは今すぐお2人に伝えてきますので、準備をしてエントランスにてお待ち下さいね」
すると、そのお客さんは既に姉様2人に声をかけて了承してもらったと、私の問いに対してそう言ってきた。正直言ってとても気が進まないけれど、レミリア姉様も行く上にフラン姉様が私と行きたがっていると言われれば行かないと言う選択肢は取れないから、それなら行くと答えた。
そしたら、お客さんは子供のようにとても嬉しそうにしながら、姉様2人に伝えてくるから準備をしてエントランスで待っててくれと私に言い残し、部屋を出て行った。
(どうして、このお客さんはやたらと私を誘いたがるんだろう? 不思議だなぁ)
お客さんが部屋から去った後、頭の中で何故やたらと執拗に私を誘いたがるのかについて考え事をしながら、沢山の吸血鬼さんたちが集まる事が予想される祝宴に向けてよそ行き用のドレスでも着ていくために、クローゼットを開く。
(はぁ……)
しかし、そこにある服がどれもこれも、普段着以外はドレスや半袖の洋服などと言った肌を露出せざるを得ないものが多い。長袖の洋服に、スカートも動きやすさと露出させない事を両立されたものを好む私にとってはあまり着たくない服ばかりだけど、こう言ったイベントに普段着で行く人は少ないとお客さんは言っていた。
つまり、レミリア姉様やフラン姉様も着飾って行くと言う事であり、私だけ普段着で行く訳にも行かなくなってしまったから、仕方ないだろう。
「あっ、リーシェも行くんだ!」
「あの子のドレス姿、何だか新鮮ね。普段、こう言う系統の服を着ないから」
「うん! 確か、肌を見せる服が自分には似合わないし、恥ずかしいから苦手……なんだっけ? 綺麗だし、可愛いからもっと自信持てば良いのに」
「ええ、確かにその通りだと思うわ」
「……」
白系統のドレスを着て、念のために私の魔導書を一冊脇に抱えてエントランスへと向かうと、そこで既に待っていた姉様2人に私のこのドレス姿を綺麗で可愛いと、いきなり褒められたからビックリした。
部屋を出る前に魔法の鏡を改めて見て、無理をしてこの格好を選んだ事を後悔しかけていたけど、他ならぬレミリア姉様やフラン姉様に自信のなかったこの姿を褒められてとても嬉しかったから、無理した甲斐があったと思う。恥ずかしかったけど。
「ありがとう。だけど、姉様2人の方が綺麗で可愛いと私は思うなぁ」
「えへへ……ありがとね、リーシェ!」
「ふふっ、ありがとうね。でも、貴女の方が普段見ない分、余計に可愛く見えるわ。自信を持ちなさい」
それで、あまりにも姉様2人が私の事を褒めてくれるものだから、恥ずかしさのあまり、どう言う訳か心の中で思っていた事をそっくりそのまま言葉にして話してしまったお陰で、余計に恥ずかしい事を言われる羽目となってしまった。まあ、姉様2人が私の言葉で喜んでくれたから良いと思う事にしよう。
「えっと、皆様お揃いになられた事ですし……出発しても良いですか?」
姉様2人とそんなやり取りを交わしていると、放置する事になってしまっていたお客さんが出発しても良いかと申し訳なさそうにして聞いてきたため、このやり取りを中断して放置した事に対して軽く詫びを入れた後に美鈴見送りの下、私たちは祝宴が行われる会場へと向かって行った。
ここまで読んで頂き感謝です。お気に入りや評価をしてくれた方に感謝です。感想を書いて下さった方も、ありがとうございます。