目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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怒れる吸血鬼の子

「うわぁ……リーシェ。随分荒れてるね、あの子」

「うん。話を聞く限り親があの時の戦いで死んじゃったみたいだから、荒れるのも仕方ないとは思う。まあ、こっちに飛び火しなきゃ良いけどね」

 

 フラン姉様と話をしつつ、出された美味しい料理の数々を味わっていた時に突如として暴れ始めた吸血鬼の子を遠目で見ながら、私は万が一こっちに飛び火した時に備え、能力を発動させていた。

 

 昔よりは慣れてきて、今では割と長い時間発動させる領域にはなってきてはいたけれど、それなりの力を消費するこの能力を、本来であれば戦闘時以外では使いたくなかったけれど、そうも言ってはいられなくなっている。何故なら、今の怒れる彼の力は私はもとより、()()()()()()()に僅かでも害を与えられる程に膨れ上がっているからだ。

 

 まあ、レミリア姉様やフラン姉様がちょっと本気を出せばどうとでもなるレベルではあるけど、1%……いや、0.1%かそれ以下であっても大好きな姉様が傷つくかもしれないと言う確率があれば、能力を使っておかなければいけない。

 

「取り敢えず、今のところは物にしか当たっていないって感じだね。彼から近い周りのお客さんたちはレイブン家の吸血鬼たちが守りつつ、ひとまず待避させてるって感じみたい」

「リーシェ、随分興味なさそうに言うね。まあ、本当の事を言うと他人事だし、リーシェやお姉様が無事なら後は何でもいいやって思ってるから、私も同じなんだけどさ」

「うん。だって、姉様2人と館の皆以外には全然興味ない……いや、実際には少しだけ興味あるかな?」

 

 そんな事を考えながら周りの状況を観察していると、フラン姉様からそんな事を言われた。普通であれば、彼ほどの力を持つ吸血鬼が暴れているとあればこの場から逃げるか、力のある吸血鬼なら彼を止めるかと言った選択肢を選ぶだろう。

 私のように、遠くからそれを見つつ解説をするなんて変人みたいな事をする吸血鬼は、そうそう居ないはず。一緒に居るフラン姉様も私と同じだと言っているけれど、姉様は祝宴に慣れない私のために側に居てくれている。もしかしたら、姉様のその言葉には方便が含まれているのかもしれないから、一概に私と同じだとは限らない。

 

「あれ? リーシェ、あの子が何かこっちを見てるよ?」

「え? あ、本当だ。まあ、私たちの格好は結構目立つし、目についちゃうのも仕方ないけど、何か飛び火してきそうな気が……!?」

 

 なんて事を考えていると、物を壊したり後衛の吸血鬼に対する憎悪の念を抱きながら暴れていた吸血鬼の男の子がこちらを、特に私の方に長く憎悪をひしひしと感じる視線を向けてきている事に、フラン姉様に言われて気づいた。それのみなのであればどうでも良かったのだけど……次の瞬間、彼が私の視界から消失し、急速にこちらへ魔力を高めながら近づいてくるのを能力で探知した。

 

「フラン姉様! 私から遠ざからないでね!」

「へっ!? あ、うん!」

 

 明らかにこちらを害するためにしている行動に危機を感じた私は、即座に中級防御魔法の1つである『プロテクトサークル』を発動、発生した防御魔方陣と障壁で自分とフラン姉様を囲んだその刹那、障壁に何かが激突した。咄嗟の発動であったからか防御力が多少低下したものの、少し障壁の耐久が削られていたのみで済んだのは幸いである。

 

「名家の癖に、後衛の要を任されてた癖に……僕のお父様位守れない屑が……!」

「私が力不足なのは、完全には否定しない。ただ、誰であろうとあの戦いで全員を守りきる事なんて不可能。聞いた話だけど、レイブン家のルーテ夫人ですら、自分や伯爵以外では側に居た味方位しか守る事しか出来なかったのだから」

 

 しかし、父親が死んだ事が相当堪えているらしく、私が後衛の要であった事を知っている彼は、憎悪の念を最大限に高めつつ、何度も何度も魔力を纏った拳で障壁に打ち付けていた。

 

 確かに、好いていた親の死は辛い。ただ、あの混戦時に1人の死者を出さずに守りきる事は不可能である故に、私に対してどうこう言われても困る。だから、防御魔法で攻撃を防ぎつつ、受けた損傷を魔力で修復させながらそう言う旨の言葉を、彼にかけた。

 

「と言うかそもそも、私は君の父親の顔すら知らない。もしも知っていて、なおかつ危ない目にあっていた事を探知出来ていたのであれば助けられていたかもしれないけど、私だって姉様2人と他の味方で精一杯だったのだから、父親の魔力を知らなければどうしようもない。気持ちは分かるけど、だからと言って私に攻撃を仕掛けて来られても困る」

「まるで興味なさそうに言って……だったらお前もその辛さ、味わってみろ! レミリアやフランドール、アイツらに僕が手を下す事でねぇ!!

 

 しかし、納得していない様子であったため、面倒ではあったけれど何とか分かってもらおうと話しかけていた時、彼の発した姉様2人を殺すと言う言葉を聞き、自分が自分でなくなるような感覚に襲われてしまう。

 

 そして、気がついた時には既に、私は彼に対して雷を落としていた。

 

 




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