「レミリア姉……様?」
レミリア姉様とフラン姉様に危害を加えると宣言した老吸血鬼に対し、衝動と怒りの赴くままに奥義魔法で消滅させようとした時に現れ、それを中断させたのはレイブン家と話をしていたはずの、
いつの間にか目の前に現れていたレミリア姉様は何も言わず、また私がどんな事を聞いたり言おうとも無言で、周りの視線などまるで存在しないかのように気にせず、暖かく抱きしめてくれている。けれど、その表情はとても悲しそうで、怒りに任せて1人の吸血鬼を消滅させ、今まさに老吸血鬼を殺そうとしている私を哀れんでいるような、何とも言えないものだった。
そんな様子のレミリア姉様を見た私は、自分の今までしてきた行為が姉様2人を安心させるどころか悲しませていた、もしくは恐怖を抱かせていたのではないのかと言う不安に苛まれ始める。そうであれば、私が吸血鬼の子を消した時に感じた『喜び』は姉様2人に危害を加えた敵が消えたお陰などではなく、実際は考えたくもない程のおぞましい『異常性』を秘めていて、それが発露したせいだと言う可能性がないとも言い切れなくなる。
(……)
頭の中でそう言う考えが浮かぶと、連鎖的にどんどん悪い方向へと思考が向かっていってしまう。もしかしたら、今日の出来事でレミリア姉様やフラン姉様、果ては美鈴やパチュリーやエルなどと言った紅魔館の皆から疎まれ、腫れ物として扱われるかも知れないと言う事にまで囚われ、涙が勝手に溢れ出してくる。そんな事はないとは分かっていながらも、どうしてもそう考えざるを得なかった。
「リーシェ。貴女はきっと、今日私やフランのためにやったこの行為が逆に迷惑だったのかと、不安に苛まれているのよね。確かに過激過ぎなのは否めないかもだけれど、貴女の消したあの吸血鬼からは
「私も、側に居たのに何も出来なかった……いや、しなかったせいでリーシェを傷つけて、ごめん!」
しかし、私のそんな不安は、レミリア姉様とフラン姉様が周りを巻き込む程の攻撃は少し過激過ぎであるとは言いつつも、行為自体は認めてくれた事によって完全に打ち砕かれ、その破片は霧のように消滅していった。
ただ、大好きな皆に忌み嫌われると言うのは回避が出来たものの、そのせいで全く謝る必要がないレミリア姉様やフラン姉様に謝らせてしまい、故意にではないとは言え紅魔館のイメージを悪くしてしまった事に対する罪悪感が、今度は私の心を急速に埋め尽くして行く。
「そんな……姉様、謝らなくても良いのに……むしろ、私の方こそごめんなさい……ごめんなさい……!」
そうなると、私の瞳から流れる涙の量と罪悪感が加速度的に増えていき、姉様が何か言ったり聞いてきたりしたとしても、もはやまともに受け答えが出来る状態ではなくなっていった。周りの吸血鬼たちが何と言ってこようとも、同様である。
「レイブン伯爵!! 居るかしら!?」
「ええ、居ますよ。何でしょうか? レミリアさん」
「凄く申し訳ないのだけど、リーシェがこんな状態だし……帰らせてもらうわよ!」
「分かりました。事が事なので、仕方ないでしょう。この場の後始末は私と妻にお任せ下さい。流石に、明日以降起こりうる出来事に関してはどうしようもありませんが」
「十分よ! 感謝するわ!」
心の中で何とか涙を抑えて受け答えが出来るまでになろうとしていると、レミリア姉様が猛烈な威圧を放って周りを無理矢理黙らせた後、大声でレイブン伯爵を呼び、私がこんな状態であるから帰ると言う事を伝えた時に、この場の後始末までも引き受けてくれるとまで言ってきたのを聞いた。
何故、他人である私たちのためにそこまでしてくれるのかは不明ではあるけど、純粋にそれはありがたかった。そして、私や姉様2人のために色々とやってくれているレイブン伯爵に対して、例えば目の前で危ない目に合っていたら助けてあげようと自発的に思う位には
関心を持った。まあ、大前提として姉様2人に館の皆が最優先であり、周りから何と思われようとも変わりはないけど。
「さて、リーシェ。帰るけど、自力で飛べ……ないわよね。愚問だったわ」
「お姉様! 今度は私がリーシェを抱いていきたいの! 良いでしょ?」
「いや、今はそんな事言ってる場合じゃないんだけど……まあ良いわ」
「やったぁ! じゃあ、抱くね!」
そんな事を思っていると、抱きしめてくれていたレミリア姉様が離れ、間髪入れずにフラン姉様が何故か私を
「ふふっ……これだけの事があったし、疲れたよね! お休み、リーシェ!」
それからすぐ、肉体的にも精神的にも疲れていた私は、フラン姉様に抱かれながら耐え難い程の猛烈な眠気に襲い掛かられたため、そのまま目を閉じ、眠りについた。
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