能力が暴走し、地獄のような苦しみを味わいながらも、母様のお陰で何とか切り抜けたあの日からちょうど5日経ったある夜、私はいつも通り部屋に来たフラン姉様と会話を交わしていた。
「リーシェ、調子はどう?」
「フラン姉様たちのお陰で、もうすっかり良くなったよ。頭痛いのもあれから全然ないし」
「そっか。本当、良かったぁ……」
あの日から部屋から1歩も出ず……と言うか、レミリア姉様とフラン姉様に出させてもらえず、着替えや食事の世話をですら姉様たちにやってもらうなど、強制的に休まされた。
自分でやると言っても聞いてくれず、着替えさせられた時は物凄い恥ずかしかったけど、お陰で調子はかなり良くなったので感謝はしている。
「それだけ元気なら、今日魔法とかの練習に行っても大丈夫そうだね。お母様もお姉様も待ってるから、早く行こ!」
「……あっ」
いつかお礼をしなければと心に思いながら会話をしていると、フラン姉様がこれだけ元気なら、魔法とかの練習も大丈夫そうだから早く行こうと言ってきた。
そう言えば一昨日、身の回りのお世話をされている時に『リーシェの調子が良ければ、明後日の夜に練習よ』と、レミリア姉様が言っていたような……恥ずかしながら、フラン姉様に言われるまですっかり忘れていた。
「リーシェ、そんな顔してどうした……もしかして、実は調子が良くないとかなの……?」
「ううん、違う。ただ、今日調子が良ければ練習だった事を忘れてただけ」
思わず呆けていると、そんな私の様子を見てフラン姉様が、まだ調子が悪いのかと勘違いし始めた。なので即座にこれを否定、今日が練習日だと言うのを忘れていただけと説明し、勘違いを解く事が出来た。
「なーんだ……普通に忘れてただけだったんだね。調子が悪いとかじゃなくて良かった! じゃあ、改めて早く行こう。お母様とお姉様が待ってるよ!」
「うん、分かった……ってフラン姉様!? そんなに腕を引っ張らないでぇーー!!」
そうして、誤解が解けて笑顔になったフラン姉様に、力一杯手を引っ張られながら、母様と姉様が待っている地下室へと飛んで向かい、開いている扉から勢い良く突撃していくようにして中へと入った。
ただ、その勢いでフラン姉様の手から私が離れてしまい、思い切り吹き飛ばされてしまったけど、母様に受け止めてもらったお陰で一切の怪我はなかった。
「フラン、貴女もう少し加減を覚えなきゃ駄目じゃない。ほら、さっきの勢いで吹き飛んでいったじゃない。お母様が受け止めてくれなきゃ、今頃怪我をしていたかも知れないのよ?」
「……ごめんなさい」
「謝る相手は私じゃなくてリーシェよ、フラン」
「ごめんね、リーシェ……」
「うん、良いよ。今度はもう少しだけ優しくしてね」
お母様に抱かれながら下に降りると、私をここに連れてきたフラン姉様がもう少し加減を覚えなさいと、レミリア姉様から注意を受けていた。その後、レミリア姉様に促されて私に謝ってきたのでこれを受け入れて許したけど……正直、痛かったけど怒ってなかったし、怪我も何もなかったから謝らなくても良かったのにと思ったけど、こんな状況なのでそれは言わないでおいた。
「さて、謝罪も一通り済んで皆が揃ったところで……早速練習を始めましょうか」
「うん! それで、今日は最初は何をするの?」
「そうですね……フラン。リーシェと軽く手合わせしてあげてくれますか?」
すると、お母様がフラン姉様に私と軽く手合わせをしてあげてと言う、とんでもない事を言い始めた。今までレミリア姉様とやり合うフラン姉様を見て来たけど……軽くとは言え、まともにやり合えるとは思えない。
ただ、練習をする約束をして来た以上逃げ出すと言う選択肢は選べないし、何よりフラン姉様が本気で殺しに来るなんて事は絶対にあり得ないだろう。
「私は構わないけど、リーシェはどう?」
「まともにやり合えないと思うけど、よろしくね。フラン姉様」
「分かった! それじゃ、今からやるから行くよー!」
「え、ちょっとまだ準備が……」
そんな訳で、フラン姉様と軽く手合わせをする事になったのだけど……
「凄い、凄いよリーシェ! 避けられたね!」
「ちょっ……フラン姉様これ、絶対軽くじゃないよね!?」
「え? 軽くだけど?」
「嘘ぉ……」
あの時程ではないものの、初手でいきなり『危機』を感じたため、すぐさま横に飛び退いた瞬間、横を炎剣が通り過ぎた。明らかに軽くとは思えない威力の攻撃に思わず、かなり力を入れられていると抗議の意を込めて聞いてみたところ、軽くであると返答が帰って来たため、手合わせを了承した事を後悔し始めた。
その後もフラン姉様が攻撃を仕掛けてきて、私が能力の一部をフル活用してこれを何とか避けると言った事が続く。あまりにも苛烈な攻撃に、こちらから攻撃を仕掛ける余裕など殆んどなかった。
「アハハ! 楽しい、楽しいよ! お姉様とやってるみたい!」
更に時間が経つにつれて、私の体力はもう限界に近づいてくるのに対して、フラン姉様は気分が高揚してきたらしく、攻撃が徐々に速く、強くなってきている。そのせいで時折被弾し、身体にかすり傷を作りながらも何とか致命的なダメージは回避する事が出来ていたけど、このままでは不味い。
「フラン、そこまでにしてください!!」
さあ、この状況をどう乗り切ろうかと死ぬ気で攻撃を避けながら考えていると、母様がフラン姉様にそこまでにしてと強く呼び掛け、それによって手合わせが中断され、結構疲れはしたものの何とか倒れずに済んだ。
「リーシェ……他の練習は、少し休憩してからにしましょうか? それとも、今日はもう止めます?」
「えっと……1時間位休憩すれば大丈夫」
その時、母様が他の練習は休憩するか今日は止めるかと聞いてきたので、1時間休憩してからにすると答えた。
そして、レミリア姉様とフラン姉様と母様の3人で何気ない日常会話をしたり、のんびり紅茶でも飲みながら休憩の1時間が過ぎたところで、再び練習を始めた。
内容はさっきのような手合わせではなく、母様や姉様2人に魔法を手取り足取り教えてもらったり、母様に勧められるがままに始めた弓の練習をしたりなど、今の私でもこなす事だけは可能なものであった。
「……今日は止めにしましょう。リーシェはまだ幼いのですから、あまり無理をさせるのは良くないですからね。まあ、慣れない手合わせをさせた時点で無理はさせてしまってましたけど」
「「はーい!」」
再び練習を始めてからおよそ2時間、大分疲労が溜まってきたところで母様が今日は練習を止めにしようと言ったため、私はそれを了承した。姉様たちも流石に疲れたらしく、母様の提案を了承した。
こうして、今までで1番辛かったと言える練習をした1日が幕を閉じる事となった。
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