不安に苛まれしリーシェ
(えっと、レミリア姉様は食堂に居るね。フラン姉様は……うん。いつも通り、部屋の中でのんびりしてるのかな? 館への侵入者も居ないみたいだし……美鈴もパチュリーもエルも、皆元気みたいだから大丈夫そう!)
祝宴の席にて派手にやらかし、台無しにするどころか姉様2人に大迷惑をかけたあの祝宴からいつの間にか1年が経ったとある日の夜、私は自室で本を読んだり絵を描いたりしながら一定時間毎に能力を使い、館全体の姉様たちの位置を探知していた。それは、姉様2人を中心として館の皆に危機が訪れた際に誰も殺させないため、即座にその場へと向かって対処を出来るようにするためだ。
あの日、自分自身はともかくとして、明確に姉様2人に対して殺害をすると言う言葉を聞いてあの事態を引き起こしてから、どうも私はおかしくなったらしい……と言うよりは、確実におかしくなった事が分かる。それは、前よりも遥かに館の皆が殺される事に対して、過剰なまでの恐怖と不安を感じるようになったのがあるからだ。
後は、あの時から今までの1年間で、およそ7割の確率で私の失態が要因で周りから姉様たちが惨たらしく何者かに殺され、誰も居なくなる悪夢を見る。
姉様2人を中心として、美鈴やパチュリーにエルやエルと一緒に仕事をするメイドさんたちが、たまに来るお客さんと会話をしていた際に、そのお客さんが皆を殺しにかかるのではないのかと言う、抗い難い疑念を抱く。
それと、姉様2人と一定時間以上話す・何らかのスキンシップをするなどの行為を、それぞれ1日に1回は最低でも取らなければ不安のあまり何も手につかなくなると言う、これら3つの変化が私の身に起こり始めたりしたのも大きかった。これを、本格的に姉様たちに迷惑をかける前にどうにかしたいとは思いつつも上手く行かず、今まで殆んどどうにも出来なかった。
(うーん……レミリア姉様とフラン姉様のところに行くかな)
そんな事を考えていたら急にレミリア姉様やフラン姉様のところへと行き、話したりスキンシップしたりしたくなる突発的な衝動に駆られた。一瞬だけどうしようか考えて迷うも、濁流の如く押し寄せてくる不安に押し潰されそうになるのに耐えきれず、すぐに向かうべく私はまず最初に、フラン姉様のところへと向かう事に決めた。
「えへへ……待ってたよ、リーシェ! 最初に私のところに来てくれたの、スッゴく嬉しい!」
「……」
もしかしたら、1人でのんびり過ごしていたいかもしれないとか、何か作ったり書いたりしてるかもしれないとか考えながら扉を開けると、ベッドに腰かけていたフラン姉様に待っていたよと声をかけられ、思わず黙り込んでしまった。どうして私が今ここに来る事が分かったのだろうと、不思議に思ったからだ。
しかも、人の血入りのワインボトルのような容器とワイングラス、メイドさんの作ってくれたと思われるお菓子、その他私好みの本や魔導書が数冊と、使い込まれてはいるものの見ただけで高級品だと分かる各種文房具が、フラン姉様の机上に用意されていると言う準備の良さ……まるで私が、しばらくこの部屋に居る事を想定している発言である。
でもまあ何であれ、取り敢えずフラン姉様とのお話とかスキンシップとかは問題なく出来そうな感じだから、どんな理由があれど良しとしようかな。
「フラン姉様、どうして私が今ここに来るって分かったの?」
「えっとね、私はリーシェの事を
「なるほど……ってまさか、部屋でお着替えしてる途中とか入浴中とか、後は研究してるところとかもずっと……?」
「ううん、違うよ。
頭の中でそう考えつつ、目的である会話を始めてからすぐに、どうして分かったのかと言う疑問を解消するために質問を投げ掛けてみたら、フラン姉様が私の事を
「ねえ、リーシェ。最近どう? あの、私とお姉様たちが誰かに殺されるって言う悪夢はまだ見てる?」
「うん、相変わらず。それに最近、言いたくないけど……殺され方がどんどん惨くなってるから……レミリア姉様とフラン姉様の姿を見てお話ししてないと、とっても不安なの。本当に私があの時よりも何かを仕出かしたせいで皆居なくなるんじゃないかとか、たまに来るお客さんが姉様たちを殺す敵に見えてきたりとか、あんな事を仕出かした私を姉様2人が嫌ってるんじゃないかとか――」
その話が終わった後、フラン姉様に1年前から見るようになった嫌な悪夢の事についてを聞かれた。だから、あまり口に出すのは憚られるけれど……治るどころかむしろ、殺され方が惨たらしくなっている程に悪化していて、お陰で変な不安まで抱く羽目になってしまっている事などを途中で泣きそうになりながらも、何とか全部吐き出そうと口を開こうとしたその時……
「もう良い! それ以上……苦しんでまで無理しないで! そんなリーシェ、見たくない!」
フラン姉様が涙目になりながら、もうやめてくれと類を見ない程に本気で怒ってきたため、私は話すのをやめる事にした。
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