「フラン。準備は良いかしら?」
「うん! バッチリだよ、お姉様! この日のために、沢山の魔法を覚えたんだから!」
リーシェを含めた、館の皆に危機を及ぼす狂った吸血鬼だけを滅ぼすために色々と準備を重ねてから2年、ようやく私とお姉様は計画を実行に移すために行動を起こそうとしていた。
狂った吸血鬼たちが住む館の内情調査から始まり、防御・補助系統の魔法を完全に問題なく扱えるようになるまで練習したり、お互いに実戦形式でも戦ったりして想定外の強敵による危険度を限りなく減らす事に力を入れるなど、色々と大変ではあった。
けれど、美鈴を傷つけた上にパチュリーやエルたちまで傷つけようとした挙げ句、あの可愛いリーシェの笑顔を2度と見れなくしようとまでしたアイツらをこの世から消すためなら、この位は余裕で乗り越える事だって出来た。そして、リーシェ本人から教えてもらった『神々の目』を筆頭とした、数々の身を守るための魔法もあるのだから、きっと上手く行くだろう。
「あれ? レミリア姉様にフラン姉様、お出掛け?」
頭の中で考え事をしつつもさて出発しようかと、正面玄関からお姉様と一緒に出ようとした時、魔導書を持ったリーシェに見かけられ、声をかけられてしまった。本当なら一緒に連れて行きたかったのだけど、この計画にリーシェがついてきてしまうのはとても不味いから、上手く察させないようにする必要がある。お姉様曰く、ほぼ確実に悪夢が悪化し、リーシェから笑顔が消えてしまう可能性が極めて高いからだと言う。
ただ、下手に本当そうな作り話を考えて言ったとしてもあの日以来、今回の内容のように私たちが危ない目に合うかもしれない何かがある用事に向かう計画があると察され、守らなければとついてきてしまう。なので、ここは下手に嘘をつくよりも、ある程度は本当の事を話した上で留守番を全力でお願いをした方が良いとの判断を下す。
「ええ。ちょっとリーシェを連れていけない程の訳アリの用事で、私とフランで行ってくるからお留守番、よろしくね。
「そうなんだよ……リーシェ、ごめんね。帰ってきたらたっぷりお土産話聞かせてあげるから、お願い!」
「そっか。じゃあ、姉様2人が居ない間はここは任せて。お土産話、楽しみにしてるから……」
結果は上手く行き、何をしようとしているか察してそうな顔をされながらも何とか、リーシェをお留守番で館に留めておく事に成功した。あんな悲しく心配そうな顔をさせてしまうのは忍びないけど……連れていった方が断然地獄のような事態を引き起こすのは間違いないから、耐えなければいけない。勿論、物理的な意味などではなく、精神的な意味で。
そうして、お姉様と私は美鈴やリーシェたちに見送られながら、目的である狂った吸血鬼の殲滅へと向かっていった。
「さてと……リーシェにお土産話を聞かせてあげると言ったからには、無事に戻らないとね」
「うん! 何てったって、私の妹のリーシェが見せてくれる可愛い笑顔を守るためだし、悲しませちゃ本末転倒だもんね!」
「ええ。それと、リーシェは
「アハハ! 分かってるよ、お姉様!」
道中、お姉様とそんな会話を交わしながら絶対に無事に帰ってくる事を誓っていると、1人目の住む館が遠目に見えてきた。何だかんだで狂った吸血鬼の中でも厄介な相手であるため、自然と緊張感が私の心を満たしてくる。
「何です――」
「これが終わるまで眠ってなさい。心地良くね」
そうして、館の門の前に居た門番に『微睡みの泡』と言う強力な睡眠魔法をかけて眠らせ、まずは館内に侵入する事には成功した。当然と言うべきか、異変を察知した館内の使用人たちに攻撃を受けるも警戒を怠らなかったため、リーシェの『神々の目』のお世話になる事もなく回避するなどし、睡眠魔法を初めとした補助系統の魔法で戦闘不能にする感じで対処が出来ている。
時折、睡眠魔法が効きづらいか全く効かない使用人も居たけど、そう言う時は拘束魔法や雷属性系の麻痺魔法で動きを封じるか、致し方なく実力で気絶させるなど、そう言った形で偵察した時の情報を元にして走破していく。
「お姉様! 調子はどう?」
「絶好調よ! フランはどうかしら?」
「ふふっ、私も絶好調だよ! この日のために今まで頑張ってきたんだから、まだまだ動けるし!」
「……言うまでもなかったわね!」
今のところ、お姉様と走りながらこんな会話を交わしたり出来る位には調子は良く、館内の突破も上手く行ってはいる。だけど、これから私たちが行くところは1つの吸血鬼一家をまとめる主の居る場所である。しかも、聖魔騎士団との戦いにも参戦する位の実力者であるから、しっかりと対策は取ってきたとは言えど、常にこちらの予想外の一手を繰り出してくる可能性だってあるため、油断は禁物だ。
そうして偵察通りのルートを駆け抜け、立ちはだかる使用人たちを無力化しながら目的の場所の扉を開けて入っていき、私たちは主と対峙する位置まで向かっていった。
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