(まさか、3人もこの館に居るなんて……!)
狂った吸血鬼の1人が住む館へと突撃を敢行し、当の本人を始末するためにお姉様と一緒に主の部屋へと乗り込んだ時、私は喜びと警戒心を同時に抱く事になった。幸か不幸か、その場に3人もの始末対象が一堂に会していた光景を目にしたと言うのが理由である。
これは、上手く行けば美鈴を傷つけ、パチュリーやエルを傷つけようと画策した挙げ句に、大好きなリーシェの笑顔を奪い去ろうとした、見るだけで恨みと怒りと殺意が滾ってくる奴らを1度に葬り去る事が出来る最高のチャンスだ。ただ、それと同時に実力はともかくとして、数的にも更に不利になってしまうと言う、それなりにピンチな状態にも追い込まれていた。さて、どうしてくれようか。
「ふぅ……私と可愛い妹2人に宣戦布告とも取れる発言をした上、うちの門番に怪我を負わせて他の住人にも危害を加えようとしたからには、それ相応の覚悟は出来ているだろうな? この期に及んで、出来ていないとは言わせんぞ、
「「「くっ……!」」」
なんて事を考えていると、お姉様が3人を見るなり手に持っているグングニルの柄を強く握りしめ、いつもの紅い色の雷ではなくどす黒い闇属性の雷を纏わせ、今にも殺してやろうかと言わんばかりにそれを向けながら、大人吸血鬼顔負けの威圧感のある口調で怒りを露にし始めた。
これ程お姉様が本気の本気で怒った事なんてなかったから、凄くビックリした。けど、私だって今は抑えて落ち着かせているだけで、同様に怒りが渦巻いているから、お姉様が本気で怒っているのも理解出来る。
「我々に痛手を負わせたアイツが責任を負わぬのなら、館の奴らが代わりに制裁を受けるのが道理だろうが。その結果、死んだとしたらそれも制裁の内だな。最高なのはアイツを我々の手で始末出来る事だがまあ、想定外に門番が強すぎて頓挫し……」
「おい止めろ! もう喋るな――」
すると、この館の主が何を思ったのかは知らないけど、お姉様に対して刺激にしかならない余計な事をベラベラと喋り始めた。どうやら、美鈴のお陰でその日の計画が頓挫する事になったらしい。帰ったら、何かお礼をしてあげないといけないと思った。
「フラン! 狂気の啓示を使っても良い……と言うか、命令よ。使いなさい!」
「えっ? あ、うん……分かったよ、お姉様!」
で、当のお姉様はこの館の主が言った言葉を聞いた瞬間に更に激昂し、グングニルに纏わせていたどす黒い闇の雷が槍全体を覆い尽くす程にまで増大した。それと同時に、私にも
まさか使っても良いと言う許可ではなく、使いなさいとの命令を下されるとは思ってもいなかったけれど、これで心置きなくアイツらを本気でこの世から消せるとだけあって、私の気分は高揚した。
(すぅ……はぁ……)
狂気の啓示を使って抑えていた狂気を解放すると、私の中に渦巻く怒りを含めた色々な感情が爆発的に増大していくのを身に染みて感じていた。リーシェを始末してやろうと言ってのけた事で余計に狂気が強化されているのか、ちょっとでも気を抜いてしまえばこの館ごと皆殺しにしてやると言う衝動に押し潰されそうな程になっていた。
まだギリギリ、抑えられる位には理性の方に天秤が傾いているけど、あまり長時間の狂気解放は虐殺コースまっしぐらだから、素早くアイツらを
良く考えたら、リーシェも祝宴の時私やお姉様を殺すと言われて衝動のままに吸血鬼を1人消していたけど、今ならその気持ちがとても良く理解が出来た。これは確かに、吸血衝動と同等かそれ以上に抗いがたい衝動であるのだから。
「アハハ! さあ、お姉様……早くコイツらを壊そうよ!!」
「言われなくても、私は最初からそのつもりよ! フラン!!」
そうして私とお姉様は、万が一に備えてリーシェに教えてもらった自動反撃魔法の『神々の目』を使い、かつお互いに全力を出しながら3人の吸血鬼へと襲いかかっていった。
「ちくしょう!! 奴も化け物だったが、コイツらも大概だろ!?」
「正面からの攻撃は膨大な魔力か剣や槍捌きで弾かれ、不意討ちの攻撃は良く分からん魔法弾で打ち消され、何とか傷をつける事に成功しても即座に再生……やってられん!!」
「ぐっ! 俺らが防戦一方にまで追い詰められるとはな……」
流石、聖魔騎士団との戦いに参戦して生き残った者と言うべきか、高い戦闘技術と連携でしぶとく対抗してきていた。が、基礎的な能力は今の私やお姉様に劣っているから、そう時間も経たない内に防戦一方のアイツらを一方的に叩きのめすところにまで来ていた。
「すぅ……お前たちなんか消えて居なくなっちゃえ!!」
15分程の戦闘の後、何とか動けなくなるまで追い詰める事に成功した私は、コイツらがもう2度とお姉様やリーシェ、美鈴にパチュリーにエルたちを傷つけて笑顔を奪う事のないように、掌に展開した魔法陣から全力の火炎放射を放って全員を灰すら残さず消滅させ、この戦闘をほぼ無傷で終える事に成功した。
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