「レミリア姉様、フラン姉様……大丈夫かな? 何処か知らないところで倒れて動けなくなってたり、しないかな? 私の教えた魔法、役に立ったかな……?」
レミリア姉様とフラン姉様が私に館の留守を任せ、訳アリの用事に向かってからおよそ5時間、強い不安に押し潰されそうになっていた。何故ならば、後もう少しで夜明けが近いと言う時間帯になると言うのに、帰ってきていないからだ。たまに使った能力の探知範囲内にすら姉様2人の反応がなかったのも、不安を増長させる要因になっている。
2年程前からわざわざ防御系統の魔法を教えてくれと頼み込んできたり、出発前の姉様2人の様子と私を連れていけない訳アリの用事に向かうと言っていた事を考えたら、私が傷ついて死ぬかもしれない程の危険極まりない敵と戦いに行くとしか思えないだけに、自分にもっと力があればと後悔しきりだ。
「リーシェ様。過剰に心配しなくても、あの2人なら大丈夫だと思いますよ。今まで何があろうとも、それによって傷つきはすれど、必ず元気に帰ってきていますからねー」
「うん、確かにエルの言う通りだけどね。それでもやっぱり、心配なものは心配なの。万が一が
「まあ、確かにないですねー」
頭の中でそんな風に考えながらエントランスをうろうろしていると、いつの間にか側に居たエルに、姉様2人は今まで何処かに出掛けていって、例え何かトラブルがあったとしても、傷つきはすれど元気に帰ってきている事を引き合いに出して、今回も大丈夫だと私を安心させようとしてくれた。
ただ、万が一が絶対に起こる事はないと言うのを証明する手段などない故に、心配なものは心配だ。そう言うと、エルも確かにそうだと納得していた。
「帰って来たわよ。随分と長引いちゃってごめんなさいね」
「ふぅ……ただいま、リーシェ」
エルとそんな会話を交わしたりしてから10分位が過ぎた時、館の正面玄関が開き、今1番目にしておきたい姉様2人の姿が見えた時、私は反射的に2人の方へと走って向かっていった。レミリア姉様は出掛けていった時とほぼ変わらない様子で居て、フラン姉様の衣服がボロボロかつ感じ取れる魔力の量がかなり減少していたものの、元気そうな姿を見せてくれたから、ようやくホッと一息つける。
「レミリア姉様。フラン姉様の服がボロボロで、凄く疲れてそうに見えるけど……何かあったの? 教えて欲しいな」
「あぁ……うん。実はね……」
けども、フラン姉様の息が荒く、服などもボロボロなな姿になっているのかはとても気にはなったので、一息つく前に良ければ教えてくれないかとお願いをしてみたところ、レミリア姉様は口を開いてくれた。
レミリア姉様曰く、今まで前に美鈴を傷つけた吸血鬼たちに報復しに行っていたらしい。で、その過程で更にパチュリーやエルたち、美鈴や私を苦しめて、言うのも憚られる程の惨たらしく殺すと同義の発言をとある吸血鬼がした事で自分よりも先にフラン姉様が激昂して逆にその吸血鬼を全力で惨たらしく殺し、全員始末し終えるまでずっとそのテンションだったからとの事。自分の出番が殆んどなくなる位だったみたいだ。
なるほど。そうならばあらゆる敵の攻撃を受け続け、殆んどの敵を始末したフラン姉様の服がボロボロで、魔力もかなり減少しているのも頷ける。
ちなみに、それに私を呼ばなかったのは、もしかしたらその過程で発された吸血鬼の言葉で傷ついてしまう可能性が、レミリア姉様の能力で
仮に私が用事の内容を知っていて無理をしてついていったとしたら、何を言われる事になったのかは分からないけど、それによって心が傷ついて、自分自身だけでなく巡りめぐって姉様2人や館の皆をも傷つける事態に発展していただろう。
「そう言う訳だったんだ……まあ、前よりも遥かにマシになったとは言え、私もまだ自分の身体の事を考えずに無理しちゃう癖が抜けきってないしね。レミリア姉様、気を遣ってくれてありがとう」
なので私は、わざわざ気を遣ってくれた事に対して感謝の意を示し、今後も引き続きその癖を極限まで減らす努力をしていこうと心の中で思っていると、突如としてフラン姉様が私に抱きついてくると言う行為をし出したため、驚く。
「外では我慢してたけど、もう限界……リーシェ、ごめんね」
「え? ごめんってどう言う……!?」
更に、抱きついてきながらフラン姉様が耳元で囁いたと思えば、そのまま私の首筋へと視線を向けていた。この行為は明らかに『吸血』しようとしている風にしか見えないけど、だとしても私には抵抗する意思は起きなかった。それよりも、吸血鬼が吸血鬼の血なんか飲んで色々と大丈夫なのかと、かなり心配になる。
「あっ……!」
案の定、フラン姉様が私の首筋に噛みつき、小さく音を立てながら血を吸い始めたその瞬間、自分がグラスの血を飲んだり誰かから吸血する時に感じる快感よりもかなり強い快感が電流のように身体を駆け巡り、思わず声をあげて尻餅をついてしまった。しかし、それでもフラン姉様は私から離れる事はなく、一心不乱に血を吸い続けていた。
襲い来る快楽の波に、声にならない声をあげてしまいそうになるのを歯を食いしばって耐えながら、私は今まで吸血した事のある極一部の人が、もっと吸ってくれと恐怖を覚える程懇願してくる気持ちを、たった今理解した。吸血される方も気持ちいいと感じるのは知っていたけど、下手すれば癖になってしまいそうな程なのかと、驚きを禁じ得ない。
これを知って、私は館の人間のメイドさんからは、直接吸血をしない方が良さそうだと実感した。まあ、今まで1度もやったことはないんだけども。
「えへへ、ありがと……」
そんな感じで1分半経った頃、フラン姉様が小さな声でそう私に対して耳元で言い、私に寄りかかって気持ち良さそうに寝息を立てながら眠り始めた。血液と同時に魔力が結構吸われたからなのか、快楽が強すぎて疲労困憊になったのかは分からないけど、しばらくこの場から動く事が出来なかった。
「ごめんなさい。無理にでも止めれば良かったわね……」
「リーシェ様、ごめんなさいねー」
「ううん、大丈夫だよ……それよりも、早くフラン姉様をお部屋に運んであげなきゃ……」
「……」
で、10分程経ってようやく動ける位にまで回復してきた私は、この光景を見ているだけだった事を謝ってきたレミリア姉様たちに、そもそも怒ってはいないから大丈夫だと言った後、フラン姉様を抱き抱えて部屋まで運んであげるために、少しふらつく足取りで歩みを進めていく。
「フラン姉様、私もこの部屋で休むね……」
そうして部屋についた後にベッドに寝かせ、毛布をかけてあげてから自分の部屋へと戻ろうとした私だったけど、頑張って歩くのすら辛くなってきたため、一声かけてからフラン姉様のベッドに寄りかかるようにして休む事に決め、目を閉じた。
ここまで読んで頂き感謝です。お気に入りや評価をしてくれた方に感謝です。感想を書いて下さった方も、ありがとうございます。