「さて、どうしたものか……」
初めてフラン姉様と死ぬ気で手合わせをした練習の日から1年、私は地下の図書館から持ってきた魔導書を読みながら、悩んでいた。今日がレミリア姉様の15歳の誕生日だと言うにも関わらず、お祝いの言葉はおろか贈り物の内容すら全く決まっていないためだ。
いつぞや暇潰しに書いたレミリア姉様の似顔絵でも贈ろうかと考えたけど、誕生日のプレゼントにたった30分程度で書いた絵を贈るなど、どう考えても失礼すぎるため、それは却下した。しかも、15歳と言うスカーレット家の長女吸血鬼、レミリア姉様にとっては節目の年であるから尚更だ。普通の誕生日とは訳が違う。
とは言え、似顔絵以外に贈れるような物を用意する時間などないため、どうしようか考える。
(誕生日会まで残り半日……時間もあるし、レミリア姉様の姿絵を描くかな)
考えに考えた結果、誕生日会ギリギリまでレミリア姉様の姿絵を描く事を決め、読んでいた魔導書を閉じてベッドの枕元に置き、机の上に向かってペンを取り、早速作業を始めた。
いつもならのんびり楽しく描いている絵も、たった半日しか時間がなく、1回たりとも間違えたり出来ないと言う緊張感があるため、気を抜かなかった。と言うよりは、息抜きしようと言う気すら起きなかった。
「うわぁ……それってお姉様の絵? 凄く上手だね! リーシェ」
「え!? あ、なんだ……フラン姉様か、ビックリしたぁ……」
そうして6時間ぶっ通しで描き続け、8割程出来上がってきたところでいきなり後ろから声をかけられた。突然の事でビックリしながらも後ろを振り向くと、そこに居たのはフラン姉様だった。どうやら、何回扉を叩いても返事が全くなかったため、勝手に入ったら絵を描いている私を目撃し、声をかけてきたとの事らしい。
「そう言えば、フラン姉様ってレミリア姉様の誕生日プレゼント、何を贈るか決まった?」
「えっとね……頑張って作った首飾りと、何度も書いては消しを繰り返したお手紙だよ。結構苦労したから、喜んでくれれば嬉しいけど……」
ふいに、レミリア姉様の誕生日プレゼントにフラン姉様が何を贈るのか気になったからついでに聞いてみると、手作りの首飾りと手紙を贈るつもりだと私は聞いた。やはり、手間暇かかる手作りの物を作っていたようで、雑ではないものの暇潰しで描いた似顔絵を贈る選択を却下したのは正解であった。
「手作りなら、きっと喜んでくれると思うから大丈夫。自信を持って、フラン姉様」
「ふふっ……ありがと! リーシェの描いてる絵も、お姉様へのプレゼント?」
「そうだよ。私に出来る事って言ったら、絵を描くくらいだって思って」
「そうなんだね! リーシェの贈り物も、きっと喜んでくれるだろうなぁ……お姉様」
その後は私がレミリア姉様に贈る物について説明したり、フラン姉様のアドバイスを受けながら絵の続きを描いたりしながら5時間過ごし、何とか誕生日会本番までに完璧に仕上げる事に成功した。当初想定していたよりも良い出来の姿絵になり、大満足である。
ただ、ぶっ通しで描いて疲れてしまったため、誕生日会が始まるまでの1時間はベッドに寝転がって休む事に決めた。時折寝そうになってしまうものの、その度にフラン姉様に叩き起こされるため、寝過ごさずに1時間休憩をする事が出来たので良かった。
休憩が終わった後は、主役のレミリア姉様に母様や父様、館の大半のメイドさんたちが待っている食堂へ、プレゼントを持って2人で向かう。その時、本来なら外から色々なお客さんを呼ぶ予定であったらしいけど、レミリア姉様が呼んで欲しくないと強く希望をしたため、父様が寸前で呼ばない事を決めたと言う話をフラン姉様から聞いた。なんでも、私に
(私のためにそこまで……精一杯の笑顔を見せてお祝いしてあげないと……)
そんな話を聞き、レミリア姉様のために慣れないけど、希望通りの精一杯の笑顔を見せてお祝いしてあげようと決意しながら食堂へと入った。
「フラン、リーシェ……待ってたわよ! 隣に座って」
すると、真っ先に目に入ったのはいつもの格好ではなく、深紅色を基調としたドレスを着て、私たちを笑顔で呼ぶレミリア姉様だった。姿形は変わっていないけど、纏う雰囲気は妖艶な大人の女性を彷彿とさせる。特別な誕生日だから、服装も特別気合いを入れたのだろう。
そんなレミリア姉様の変化に少し驚きつつも、促された私たちが空いている席に座ったところで、誰かの『おめでとうございます! レミリア様!』と言う一声と共に、誕生日会が始まった。
机の上に大量に置かれた料理を取って食べたり、大人たちはワインを飲みながら、私たちやお酒が苦手な母様は少量の血入り紅茶を美味しく飲んだりしながら楽しむ。今更だけど、血が入っている食べ物や飲み物の方が美味しいと感じる事に、吸血鬼になったんだと実感した。
「ねえ、お姉様。私たちね、お姉様のために頑張ってプレゼント作ったんだよー! だから、受け取って欲しいな」
「そうなの?」
「うん! こっちのお手紙と首飾りが私で、お姉様の絵が描いてある紙がリーシェからのプレゼントなの!」
そうして誕生日会が終盤に差し掛かってきたところで、フラン姉様が誕生日プレゼントについてレミリア姉様に切り出した後、私の描いた絵もまとめて手渡す。
すると、手渡されたプレゼントを一旦母様に預けてから私とフラン姉様を抱き寄せ、とても嬉しそうにしながらありがとうと言ってくれたこの行為だけで、私の苦労が報われた気がした。フラン姉様も、レミリア姉様が喜んでくれた事に凄く嬉しがっているみたいだ。
「「レミリアお姉様、15歳の誕生日おめでとう!!」」
「2人とも、ありがとう。プレゼントをもらって、笑顔も見せてもらって、最高の誕生日会だったわ……!」
そして最後に、満面の笑みを見せながら2人で改めておめでとうと言ったところで、誕生日会は幕を閉じた。
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