目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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人探しの依頼

「まさか、依頼の手紙を送った当日に来て頂けるとは思っても居ませんでした。感謝致します……」

 

 レミリア姉様と共に、誘拐された息子と妻探しを依頼する手紙を送ってきた吸血鬼の住む館へと訪れた私は、そこで出迎えてくれた主の様子を見て、少し驚いた。何故なら、まるでもうすぐ死んでしまいそうな程に精神が弱りきっていたからだ。

 

 まあ、自分が大切に思っていた家族をなす術なく拐われ、なおかつ生死が分からないとあっては、そうなるのは痛い程良く分かる。もしも、私が彼と同じ状況に追い込まれようものなら、冗談抜きに発狂してしまう事だろう。

 

 基本的に姉様2人を含めた館の皆以外の他人がどうなろうとも構わないスタンスで居る私だけど、大切な家族に対する強い想いが故に弱りきってしまう程落ち込んでいる彼を見て、この案件だけはどうも他人事とは思えない。だから、どうにかして五体満足な状態で見つけ出してあげたいと、そう思った。

 

「貴方の妻と息子が誘拐されたと言う話だったわね。なら、こんなところで無駄話をしている暇はない……と言う訳で、何か2人の魔力を発する物をもらえると嬉しいわ。出来れば、血液辺りだとリーシェの能力で探知するのに都合が良いのだけど」

 

 そんな感じで決意を固めていると、彼の妻と息子さんの2人を探しだして誘拐犯から救うためには、ここで話し込んでいる暇はないと最もな正論を言ったレミリア姉様が、館の主に対して2人の魔力を発する何か物がないかと要求をし始めた。レミリア姉様がこの行動を取ったのは、私の能力で特定の対象を探す場合、魔力を発する何かがどうしても必要不可欠なためだと、何時だか言った事を覚えててくれたからだろう。

 

 この場合、対象の血液を飲めば探知能力が上がり、何らかの探知妨害に対して強くなるから都合が良いのだけど、仮にない場合は一定以上の量の魔力が発せられている物であれば、多少精度は落ちるものの探知は可能となる。ちなみに、聖魔騎士団との戦闘前のように、本人から魔力を提供してもらっても探知能力は上がり、探知妨害には強くなるけど、今回は関係ないから頭の隅にでも置いておく。

 

「リーシェ様の……なるほど。しかし、残念ながらここには2人の血液はない上、息子の魔力を宿した魔道具すらない状態なのです。今ここにあるのは、妻の魔力を宿した小さな宝石でして……」

 

 しかし、そんな都合の良い展開にはならなかった上に、あったのは妻の魔力を宿したビー玉よりも一回り大きい程度の宝石だけだった。おまけに、息子さんの方に至ってはそれすらもないと言う有り様と言う事が分かる。

 これでは、誘拐犯が2人を別々の場所に置いただけで探すのに時間を大幅に取られてしまい、その間に息子さんの命が絶たれてしまう可能性がぐーんと上がってしまうから、そうならないように祈ろう。

 

「小さいわね。リーシェ、これでも行けるかしら?」

「精度はどうしても落ちちゃうし、魔力の記憶に時間が少しだけかかるけど行けるよ! レミリア姉様」

「なら良いわ。お願いね」

 

 無事に命を保ったままで居てくれるように祈りつつ、私は館の主から渡された宝石を手に取り、目を瞑って発される魔力の特徴を掴む作業を始めた。想像以上に魔力が弱いらしく、視界を遮って感覚を研ぎ澄ます行為をしてすら、時折感じる波動が途切れる事があったものの、集中を切らさずに何とか努力を続けた。

 

「……ごめん。随分時間かかったけど、これで多分大丈夫だと思うよ」

「分かったわ。じゃあ、早速行くわよ。リーシェ」

「うん、分かった。館の主さん、行ってくるから待ってて」

「はい。どうか、よろしくお願いいたします……」

 

 そうして努力を続ける事15分、何とか彼の妻が持つ魔力の特徴をほぼ掴み終えたため、目を開けて終えた事をレミリア姉様に報告した。で、館の主さんに行ってくるとの挨拶を簡単に済ませた後、すぐに能力を発動させてこの館を急いで出発し、目的の人物2人をレミリア姉様と一緒に探し始めた。

 

「リーシェ、どう?」

「うーん……私の探知網に引っ掛かってないよ。レミリア姉様の方はどうなの?」

「同じく、偵察蝙蝠でもそれらしき存在は見つかってないわ。精々、飛び回る妖精がちらほら見つかる程度よ」

 

 ただ、休憩を挟んで20分探し、私の能力とレミリア姉様の偵察蝙蝠の捜索網を併せ持ってすら、簡単には見つかる事はなかった。誘拐犯が非常に遠いところに連れていったからなのか、私の能力や偵察蝙蝠を欺く何かを持っているからかは分からないけど、今回の依頼はレミリア姉様が居ても、油断ならない事だけは確かと言うのは理解出来る。

 

「……あっ!」

「リーシェ? もしかして、探知出来たの?」

「うん! 少し遠いけど、間違いないと思う! ただ、その側に他の強い吸血鬼的反応がいくつかあるから、気を付けた方が良いかも!」

「なるほどね。つまり、ソイツらが誘拐犯とその一味である可能性が高い訳でもあると」

 

 更に30分、そこそこ疲れてきながらも上空を飛び回りながら探していた時、遂に能力の探知範囲ギリギリの位置にそれらしき反応がうっすらと現れたのを感じた。ただ、それと同時に目的の人物の反応の他に強い吸血鬼的な反応もいくつか現れた。恐らく、誘拐犯の一味である可能性が極めて高い。

 

 本当なら、ここから誘導陣術を発動させて『神弓イチイバル』や『雷拡の矢』、 奥義魔法の『雷天の矢弾』やその他超遠距離に適した魔法で誘拐犯を目視不可能な距離から叩くのがベストなのだけど、助けるべき存在が居る以上はその手は使えない。最低でも潜入し、敵の目をかわしつつ目的の人物を救い出すまでは、少しの戦闘でも避けるべきだろう。

 

「リーシェ。頑張ろうね」

「うん、勿論だよ。お互いに頑張ろうね、レミリア姉様」

 

 これからどう行動していけば良いのかを考えながら、探知出来た方向にレミリア姉様と共に、お互いに頑張ろうと言いつつ向かっていった。




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