「お帰りなさい……えっと、その方は一体どうされたんですか?」
当事者を交えた話し合いにより、大人の女性吸血鬼とその子供を紅魔館に一時保護する事を決定し、周囲を警戒しつつレミリア姉様の隠蔽魔法も使って館へと戻った私たちは、この2人を皆に紹介すると同時に協力を呼び掛ける行動を起こしていた。知り合いですらない訳アリ吸血鬼と恐らく長期間、一緒に暮らすようになると言う理由である。
それ
「なるほど、そんな事があったとは……中々面倒な出来事に巻き込まれたみたいですね」
「ええ、そうなのよ。と言う訳で、しばらく彼女をうちに置く事になったから、より一層の警戒をお願いね。もしかしたらだけど、この2人を狙った愚か者が増えるかもしれないから」
で、そんな訳で最初にこの2人を紹介したのは美鈴であった。館の敷地に戻って最初に目にしたからと言うのもあるようだけど、レミリア姉様曰く、侵入者による影響を真っ先に受ける『門番』だからと言う方が、理由としては大きいらしい。
確かに、いくら妖怪として安定した強さを誇り、純粋な身体スペックや中~遠距離戦闘はともかくとして、近接戦闘の強さでは姉様2人に僅かに劣る程度の美鈴でも、ある程度強い大人吸血鬼の侵入者を複数相手取るのは厳しいかもしれない。だから、レミリア姉様が真っ先に美鈴に話に行ったのは、とても納得出来る行動だった。
「勿論です! お嬢様方に信頼して門番を任されている以上、どんな侵入者であろうと絶対に通しません!」
「ふふっ、頼もしいわね。でも、だからと言って無理はしないで」
「うん。レミリア姉様の言う通り、美鈴は私たちの家族。居なくなると、寂しいから」
レミリア姉様の話を聞いた美鈴は、この2人を狙った愚か者を含め、館に侵入しようとする不届き者は絶対に通さないと、笑顔を見せながら言ってくれた。美鈴がこんなにも自信を持ってそう言ったのを聞き、元からそうだったけどより頼もしく思えてくる。
だけど、それを守ろうとするあまり身を削り過ぎて死んでしまい、居なくなってしまうのには耐えられないから、レミリア姉様が無理をしないでと言ったのに続いて私もそう言った。昔、何回も無理して死にかけたりとかしては、姉様たちに凄く怒られてる私が言うのもアレだと気づいたけど、今は考えないでおこう。
ちなみに、私たちが連れてきた2人……実質大人吸血鬼1人だけど、彼女に対しては美鈴は何も言わなかった。今、彼女がとても神経質になってる事を察したからだろうか。
「さてと、次は……エルのところに行きましょうか。吸血鬼の子の世話とか、彼女の食事とかの話をしたいからね」
「なるほど」
美鈴との話を終えた後、次は吸血鬼の子のお世話やこの子の母親についての話をするために、レミリア姉様と一緒にエルの居るであろう場所へと向かい始めた。もしかしたら、何かしらの理由でエルを含めたメイドさんたちに赤ちゃんのお世話をしてもらう機会が出てくるだろうし、何より1人分多く食事を用意する手間をかけさせる事になるからだ。
吸血鬼の赤ちゃんのお世話については、離乳食の時期になるまでは人間の赤ちゃんと大差ないからある意味気楽だけど、それでも大変なのは変わりない、美鈴と同じ位重要な立ち位置である。
「あっ、レミリア様にリーシェ様、お帰りなさい。彼女たちは、お客さんですかー?」
「ええ。まあ、訳アリのお客さんだけれど」
そんな感じで考え事をしながら数分、館の倉庫前を通った時に、掃除道具を持って部屋から出てきたエルから声をかけられ、2人の事を聞かれたため、美鈴に対して説明したのと同じようにしてレミリア姉様が説明を始めた。
「レミリア様たちも大変ですね……分かりました。他のメイドたちには私から説明しておきますから、大丈夫ですよー」
「ありがとう。面倒かけて申し訳ないわね」
「いえいえ、依頼の中での出来事なのですから、仕方ないですよ。では、お掃除の続きがあるのでこれで失礼しますねー」
すると、一切の不満などを示す事なくエルは説明に納得してくれた上、他のメイドさんたちにもこの2人について伝えてくれると言ってくれた。
何の知らせもなく増やした仕事なのだから、少し位は面倒そうにしてくれても不思議ではないのに……いつか、仕事しないでのんびり出来る日でも作ってあげなきゃ。
「よし。これで、後説明してないのはパチェとフランだけね。行きましょう」
「うん、分かった」
頭の中で色々考えながらエルへの紹介と説明を終えた後は、まだ説明していないパチュリーとフラン姉様のところに行くために歩みを進め始めた。
パチュリーはともかく、フラン姉様は気まぐれに館内を出歩いたりするから、能力でも使わないと下手すれば会うまでに何十分も館の中をうろつく羽目になる。なので、今回も能力を使ってフラン姉様の居場所を探ったところ、地下の大図書館に2人で一緒に居る事が分かったため、レミリア姉様に伝えて向かう事が決まった。一緒に本でも読んでるのだろうか。
「あっ、お姉様にリーシェ! お帰り!」
「結構帰ってくるの早かったわね。レミィにリィ。それで、子供を抱いたその吸血鬼が例の?」
「ええ。その通りよ、パチェ。実は、話すと少し長くなるのだけど……」
そして、2人の居る地下の大図書館へと向かった後は先ほどまでと同じように出かけている間、一体何があったのかと言う経緯も含めて紹介と説明を済ませ、これからしばらくの間は紅魔館で暮らす事になるからと、協力をお願いした。
「なるほどね。だったら、つい最近整理したばかりの部屋があるから、そこを彼女たちの部屋として使うと良いわ。ちょっと陰気臭いけど、家具さえ置けば部屋としては使えるはずだし」
「えっ? でもそこって、パチュリーがいずれ魔導書専用の部屋にするために……」
「大丈夫よ、リィ。貴女はそんな心配しなくても、私が良いと言ったのだから」
結果は、パチュリーもフラン姉様も快く協力を約束してくれる事となった。更に、パチュリーに至っては魔導書の保管庫にしようとして
ただ、私がそう心配しているのがお見通しだったらしいパチュリーが、私に向けて微笑んでから『大丈夫よ』と言ってくれたため、その心配はしなくても良いやと思う事にした。本人が良いと言っているのに、無関係な私があれこれ言うのも何か違うだろうし。
「なら、急いで家具の調達を済ませないとね。それまでは結構時間もかかりそうだし……私と一緒の部屋で過ごすとしましょうか」
「はい……」
こうして、館の主要な住人たちへの説明と紹介を終え、助け出した2人の部屋の問題もパチュリーの厚意で解決し、いつまで続くか分からないこの生活が始まる事になった。
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