「うーん……レミリア姉様に胸を張って『辛い時は仕事を任せて』とは言ったけど、私とフラン姉様2人がかりでも出来るか心配になってきたなぁ」
レミリア姉様に、辛い時は仕事を任せてと豪語してから1週間が経ったとある日、実際に任された際にしっかり勤められるようにするため、私とフラン姉様は地下の大図書館で『当主の仕事の解説書』を片手に、本棚にある本をランダムに開いてパッと見続け、勉強に都合の良さそうな本がないかどうか探し回っていた。
あの時は、レミリア姉様をちょっとでも楽させてあげたいと言う意思が強く、素人に毛が生えた程度の私とフラン姉様でも簡単な内容の仕事であればこなせるだろうと言う、そんな思いがあった。
しかし、いざ書いてもらった『当主の仕事の解説書』を見ながら地下の大図書館で勉強を始めると、当然ながらそんな思いが如何に甘かったかと思い知らされる事となる。
確かに、簡単な仕事であれば何とか今の私とフラン姉様でも軽く勉強をすればこなす事は可能であるかもしれない。だけど、少しでもレベルが上がれば、もらった説明書を見ながらでも出来るかどうかと言う感じだった。当然、その場その場での応用力が問われる仕事となると、私には完全にお手上げである。フラン姉様なら分からないけど。
「あはは……だよね。普段のちょっとした仕事なら今の私とリーシェでも出来そうだけど、他吸血鬼一家との利害関係が絡んでくる仕事とか、スカーレット家の経営に面子がどうのこうのとか、全くじゃないけど分からないし」
「やっぱり? でも、少し分かるだけでも凄いと思うけどなぁ。フラン姉様は」
こんな様だから、年単位で勉強をしたとしてもレミリア姉様の代わりが勤まるのか、余計に気が休まらないのではないかと心配になっている。フラン姉様も同じ様に思ってるみたいで、不安そうに私に話しかけてきたけど……始めてからたった数日で少し分かるのなら、私よりかは優れているのだろう。
「2人共、今日もお勉強? 頑張ってるわねぇ」
なんて事を考えながら役立つだろうと直感した本を手に取り、近くにあった椅子に座って勉強を始めようとした時、パチュリーに勉強頑張ってるねと声をかけられた。難しそうな本を手に持っていたことから、どうやらパチュリーも私たちと同じ机で本を読もうとしているらしい。
「あっ、パチュリー……そうだよ! お姉様のためにリーシェと一緒に頑張ってるの!」
「うん。だけど、いざと言う時にレミリア姉様の代わりになれるかどうか心配でさ……」
パチュリーからそう声をかけられた私とフラン姉様は、レミリア姉様のために勉強しているけどこれがかなり難しくて、いざと言う時に代わりを勤められるのかと言う不安を抱いていると言うのも、ついでに伝える。私たち姉妹よりも長い時を生きる彼女ならば、この不安をキッパリと断ち切ってくれる何かを言ってくれるかもと言う、そんな期待から来ていた。
「なるほど。まあ、私はフランとリィが焦る事はないと思うけどね。だって、まだ勉強始めてから1週間しか経ってないもの。何にしろ、その位の短さじゃ誰が何をやっても同じよ」
「うん」
「魔法研究に戦闘技術会得、テーブルマナーだってそうでしょ? 1週間以内に完璧に出来た試しなんてある? 私だって、今挙げた奴の中で1週間以内に
すると、パチュリーは少し考えた後に私とフラン姉様に向けて、まだ焦る必要などないと言ってきた。
言われてみれば確かに、挙げられた例の中の事で1週間以内に完璧に仕上がった事はないし、それ以外でも1週間以内に1人で完璧に出来るようになった事なんて、例外を除けば一切なかった。
それに、当主の仕事は今考えると魔法研究や戦闘技術の会得と同様、例外には入らないレベルであると分かる。パチュリーの言う通り、私は焦りすぎていたのかもしれない。
「確かにパチュリーの言う通り、早くお姉様の役に立てるようになりたいって思って、私たちは焦ってた。たった1週間で、完璧に出来るはずなんかないのにね」
「うん。レミリア姉様だって、長い時間をかけてここまで頑張ってきたんだし」
「そうそう。焦らず騒がず、時間をかけて頑張っていけば良いのよ。そうすれば、いずれはレミィの助けになれるから」
そうして、パチュリーのお陰で抱いていた不安と焦りが解消されたところで、早速持ってきた本を使って勉強を始めた。
(……)
ただ、魔法研究の時間を削ってまで勉強しているにも関わらず、私の方の勉強はあまり進まずにいた。難しそうな単語やら心得やら、レミリア姉様のくれた解説書がなければ、更に進まずにいた事だろう。まあ、魔法関係の本だったら例え難しくても、こんなに進まないなんて事はほぼないのだけど。
ちなみに、フラン姉様の方は、レミリア姉様からもらった解説書片手に色々とメモを取ったりしながら、時々悩みつつもほぼ順調に勉強が進んでいる。
何故、これ程までに差が出てしまうのだろう。私の適性が足りないのか、勉強方法を致命的に間違えてるのか、単に私が馬鹿なだけかは分からないけど、これならフラン姉様に任せた方が良いのではと思い始めた。
(いけない。また焦ってる……)
しかし、パチュリーもさっき言っていた通り、今日を入れたとしてもまだ勉強し始めてから1週間である。フラン姉様が勉強を始めるまで分からないと言っておきながら勉強がほぼ順調なのだって、単に私よりも適性があるだけの話であって、私に適性が全くないとは言い切れない。
だから、逸る気持ちを抑えて、私は私なりに時間をかけてでも知識などを蓄え、レミリア姉様の助けになるための勉強を焦らず進めようと誓った。
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