目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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今話はレミリア視点です

※今話の最後部分の改稿を行いました


訳ありの来訪者たち(中編)

「なるほど。話を全部聞いて理解したけど……貴方、随分と舐め腐ってくれたじゃない。腹立たしいわね」

「……」

 

 レイブン伯爵たちから半ば脅される形で促され、細々とした声で語り始めた依頼者の話を全て聞き終えた私は、怒りと呆れと悔しさを足して3で割ったような、そんな感情を抱いていた。依頼者が、色々な意味で相当()()吸血鬼だったためである。

 

 彼の話を要約すると、自分の心ない一言や子供に対する態度の酷さで彼女を追い詰めてしまってから一切話をする事もなくなり、その内に彼女の知り合いに連れ出されたと言うのを隠していたと。

 で、真実を話すと確実に断られると分かっていたがために、真っ赤な嘘で塗り固められた手紙を私たちに送って演技までして信用させ、強固な包囲網を突破して連れ戻してもらう考えでいたらしい。

 

 で、自分の思いに反して紅魔館に保護されてしまう話になってしまい、焦った彼はとち狂ってうちに刺客を送り込むも当然館の中にすら入れず全て失敗し、終いには館を訪れた『正義の味方』たちから肉体的にも精神的にも地獄など生温い制裁を長期間受けさせられ、自分が如何に酷かったかを骨の髄まで思い知って今に至るとの事。

 何をされたのかは知らないし、聞こうとも思わない。相当キツい事をされたのだけは分かったけど、自業自得なので同情は全くなかった。

 

 しかも、何故私たちに手紙を送ったかと言う理由について聞いたら、単純に吸血鬼としては子供で経験値が少なく、騙しやすいだろうと思ったからだと言ってきた。酷い話ではあるが、私たちは実際騙されていた間抜けだった訳だから、目の付け所は良かったと言わざるを得ない。

 もしも、正義の味方の吸血鬼があの時何も言わなかったら確実に依頼者に引き渡し、保護対象の吸血鬼2人の身を危機に晒していたと断言しても過言ではない。

 

 ちなみに、話を私の隣で聞いていたフランは、私たちを騙した依頼者の顔を見るのも不快なのか、一切視線を合わせようともせずに何か考え事をしていた。まあ、こんな事をされれば誰でも不快には思うだろうし、当然と言えば当然の態度だと思う。

 

「良い事思い付いちゃった! お姉様、ちょっと行ってくるね!」

「えっ? フラン、一体何処に……まさか!?」

 

 なんて事を頭の中で考えていると、無表情で何か考え事をしていたフランが、突然不敵な笑みを浮かべ始めたと思えば、すぐに座っていた椅子から立ち上がると、走って部屋を出ていってしまったのを確認した。この間、僅か3秒足らずである。

 

 一瞬、フランが何を企んでいるのか分からなかった私だったけど、そう時間もかからない内に1つの可能性(リーシェを焚き付ける)に辿り着いた。そうならば、どう焚き付けるのかにもよるけれど、ほぼ確実に過剰制裁になる運命しか見えない。能力を使わずとも、それだけはすぐに理解出来る。

 

「うーん……報復自体はするのは確定でも、流石に殺すまでは不味いわね。正義の味方さんたちが制裁してくれたみたいだし、尚更……」

「レミリアさん。もしかして、フランドールさんは報復のためにリーシェさんを焚き付けに?」

「可能性としてはあるわ。でもね、寝ているあの子を起こしてまで焚き付ける理由がないから、分からないのよ」

「確かにそうですねぇ。報復なら、フランドールさんでも容易に可能でしょう――」

 

 しかし、だとしたらわざわざリーシェを焚き付ける理由が全く分からない。こう言ったらあれだけど、フランならそんな面倒な事をしなくても、自分で制裁を下した方が断然早いからだ。

 それに、リーシェの事が大好きで仕方ないフランが、わざわざ嘘をついた上で疲れて寝ているリーシェを叩き起こして焚き付けるなんて事をするとは、到底思えない。聖魔騎士団が攻めてきたとかなら理解出来るけど。

 

「貴方、覚悟は良いかな? お姉様とリーシェを騙して、刺客を送り込んでさ……お姉様、毎日スッゴく仕事が大変で辛そうだったの。 美鈴が身体を張って始末してくれなきゃ、もっと大変だった。それに、私たちが保護してる大人吸血鬼と子供も同じ。貴方のお陰で辛い思いをしてるんだよ」

 

 そんな感じでレイブン伯爵たちと共に、怯えきっている依頼者を無視して一体何をしに部屋を出ていったのかの議論を交わす事数分、色々とお世話になったパチュリー所有の魔導書である『ノーマラー(状態異常魔法大全集)』を持ったフランが、パラパラとページを捲りながら1人で戻ってきた。

 

 もう1人居る気配が全くない事から、私の想像していた『フランがリーシェを焚き付ける』と言う最悪の可能性は潰えたと考えても問題ないはずだ。まあ、フラン自身の怒りが沸点に達してるみたいだし、結局はどちらでも似たような感じになりそうではある。

 

「だから、今から制裁を下すけど……安心して。ただ少し、()()()()()()()()()だから」

「あっ……」

 

 すると、フランは私たちを騙した依頼者へ向けて何らかの状態異常をかけるために、本を見ながら魔法を唱え始める。

 そして、30秒程の詠唱が終わると依頼者の周りを何やらどす黒く、禍々しいオーラを纏った手のひらサイズのどす黒い炎が3つ程、周囲をグルグルとゆっくり回り始めた。

 

 状態異常魔法だと言うのは分かるけど、それにしては感じる魔力がフランの狂気解放状態に比肩するレベルで強く、禍々しい。恐らく呪いを与える魔法なのだろうが、こんなのを食らえば状態異常で苦しむ以前に、レイブン家の息子以下である依頼者は即座に発狂死してしまうはず。

 これでは、攻撃魔法としては成功していると言えるものの、状態異常を与えて苦しめる事を目的とした魔法としては、失敗と言えるだろう。まあ、本を見ないと出来ない位の習熟度だから、仕方ないけど。

 

「さあ、今までお姉様たちを苦しめた分、今度は貴方が――」

 

 そうして私が考え事をしている間にも、フランはどす黒い炎と依頼者との間隔を少しずつ縮めていき、すぐにでも当てる準備を整えていた。

 

「レミィ。これは一体、どう言う状況なの?」

「……うん。何があったかは分からないけど、確かにこれはメイドさんの言った通り、緊急事態みたいだね」

 

 しかし、その瞬間に寝間着姿のリーシェにパチュリー、美鈴までもがやたらと焦っているメイドに連れられて部屋に現れた事に驚いてフランが魔法を消滅させたため、依頼者に対して何かが起こる事はなかった。




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