「おはようございます! リーシェちゃん!」
「……えぇ!?」
レミリア姉様に喜んでもらった誕生日会の開催から半年経ったとある日、いつも通り睡眠を取って夜に目覚め、枕元に置いてある本でも読もうかとした時に私は驚いた。何故なら起きた瞬間、聞き覚えのない声で『おはよう! リーシェちゃん』と言われたからだ。
声のした方を向くと、そこに居たのは黒髪に灰色の瞳、立派な翼を持った、母様と同程度の身長の悪魔の女性だった。声も聞いた事がなければ全く見た事がなかったので、この館に新しく入ったメイドさんだろうと思った私は、貴女は誰なのかと聞いてみた。
「うーん……そうね。リーシェちゃんの護衛兼メイドになった悪魔よ! まあ、貴女のお母さんとお父さん、お姉さんたちが人間の村に狩りに行って帰って来るまでだけど……その様子だともしかして、聞いてなかった?」
「えっと……あ、確かにそんな事言ってたような……」
すると、眼前の悪魔の女性は母様たちが人間の村に狩りに行って帰って来るまでの、私の護衛を頼まれたと答えた。そう言えば、昨日寝る前にそんな話を母様から聞いた事を、彼女に言われて思い出した。誰か護衛をつけるとは聞いてたけど、悪魔だとは言ってなかったから、少しだけ驚いた。
「と言う訳で、ほんの数時間だけだけどよろしくお願いね! リーシェちゃん」
「えっと……あ、はい。よろしく……」
こうして、母様たちが帰って来るまで護衛兼メイドの悪魔の女性と過ごす事となった。
とは言っても、知らない人が1人増えたところで多少緊張するようになるだけで、やる事は変わらない。いつも通りベッドから起き、枕元に置いてあった本を手に持ち、椅子に座ってのんびり読書をしたり、絵を描いたりした。
(私をずっと見てるだけで暇そう……本とか読む人なら、読んでてもらおうかな? どうせ、部屋の外に出ないし)
途中、ずっとこっちを見てるばかりでやる事がなくて暇そうにしている彼女を見て、いくら任務とは言え何だか可哀想に思えてきたため、部屋に置いてある本を暇潰しに読みたいなら読んでも良いと言ったら……私を見ながら
何か不穏な文言を聞いた気がしたけど、今のところ何もされてないし、彼女からは全く危機を感じないので、それは聞かなかった事にしていつもの趣味の続きをする。
そうして5時間程経ち、ずっと椅子に座ってばっかりで疲れてきたので、気分転換にベッドで寝転がって本でも読もうとした時、館の中に母様たち4人が入ってくるのを自身の能力で感知した。いつぞやの暴走の日から今日で1年半、ようやく母様たちだけなら館内に居るかどうか程度なら自由意思で分かるようになった。
(それにしても5時間か……父様に加えて、今回は母様に姉様たち2人も行ったのに……狩る相手が多くて想像以上に強かったのか、単に距離が遠すぎたのかな?)
今回の『狩り』には、スカーレット家で私以外全員が行ったのにも関わらず、今までで1番時間が経っていた。その理由について何でだろうなと思った私は、館の中に母様たちの存在を確認してからずっと考えていると……
「ただいまー! リーシェー!」
「リーシェ、ただいま。悪魔の貴女も、ご苦労様」
「あ、お帰りなさい! フランちゃんにレミリアちゃん」
「フラン姉様にレミリア姉様、おかえり。父様と母様は大丈夫?」
「ええ。お母様が腕に銀の矢で傷を負ったけど、大した事はなかったわ」
豪快に扉を開けて、フラン姉様とレミリア姉様がこの部屋に入ってきた。多少服が汚れていたり破けてはいたけれど、大きな怪我もなく無事に狩りを終える事が出来たみたいで、ホッとひと安心した。父様と母様の方も、母様が銀の矢で軽い傷を負ったものの、大したことはなかったらしい。
(ん? フラン姉様が連れてる男の子は一体……?)
「それで、フラン姉様が連れてるその男の子はどうしたの?」
「えっとね、リーシェのために村から連れてきたんだよ。この子の血を少しだけ味見したら凄く美味しかったから、飲んでもらいたくてね。それに……」
その時、フラン姉様が手を繋いでいる、私たちとほぼ同じくらいの背丈の男の子が目についた。吸血鬼に対して恐怖を抱いていないのか、とてもリラックスしているように見えたのが不思議に思ったので聞いてみた。
フラン姉様曰く、その男の子の血がとても美味しかったようで、私にも飲んでもらいたいと思って連れてきたらしい……と言うよりは、姉様たちを見るや否や
しかも吸血する際、魅了の魔法等を使わなくても
「リーシェ。一応聞くけど、吸血方法は大丈夫かしら?」
「うん、大丈夫。説明されなくても、本とかで知識だけはあるから」
そんな理由もある上、話通り男の子が全く嫌がらないと言う事もあり、姉様2人に悪魔の女性に見守られながら、知識通り首筋に噛み付き、血を吸う。
(あ、美味しい……と言うか、こんなに気持ちいいなんて知らなかった……!)
そうして飲んだ血が喉を伝っていくと、身体が一瞬震える強い快感が襲いかかって来た。知識としてある程度は理解していたつもりだったけど、これ程までとは予想だにしていなかった私は彼の血をもう1口飲んだ後、思わずフラン姉様に男の子を突き返した。
「……リーシェ? もしかして、味が駄目だったの?」
「ううん、違う。とっても美味しかった。けど、私にはまだこの男の子の血は、刺激が強すぎるみたい……」
「そうなんだね……喜んでもらえると思ったんだけどなぁ……」
すると、私のその態度を見てフラン姉様が露骨に落ち込んだため、何とか元気になってもらおうと言葉を紡ぐものの、余計に落ち込ませるだけになってしまったため、後で元気になる何かを用意しておこうと思った。
その後は、姉様たちと入れ違いに部屋に入ってきた母様の元気そうな様子を見て安心したり、一緒に居てくれた悪魔の女性にお礼を言って別れてから、いつも通り趣味を楽しんで1日を過ごした。
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