エルのお願い事
「お姉様、何だかやる事なくて暇だね!」
「ええ、そうね。でも、あの時みたいに何かとピリピリした時よりは、やる事なくて代わり映えない日々を過ごす方が気楽で良いわ」
「確かに。お陰で魔法研究に集中出来る時間とか、姉様2人とのんびり過ごしたり、ふれあったりする幸せな時間とか増えたし」
「ふふっ……違いないね、リーシェ!」
2人の吸血鬼の保護を、美鈴を主とした館の皆の協力で完全にやり遂げてからあっという間に10年経ったある日、私はレミリア姉様の部屋でフラン姉様と一緒に何をする訳でもなく、会話をしながらのんびり過ごしていた。
何かと忙しく、完全に気が休まる時間が少なかったあの3年間とは打って変わり、ここ10年は平和で代わり映えのない毎日が変わらず過ぎていく事が多かった。
流れを挙げると、部屋からほぼ出ずに魔法の研究を何日に渡って行ったり、館の皆と楽しく話して遊んだり、姉様2人とのんびりするかふれあいをしたりと言った感じである。後はたまに、侵入者を排除した報告が美鈴から上がる位だ。
正直、何年に1度のペースでも良いから何か新鮮な出来事が起これば良いかもと思う事は、たまにだけどあった。しかし、あの時みたいな出来事が起こった時のリスクを考えると結局は姉様2人と同じで、代わり映えがあまりない代わりに、今の様に幸せな毎日を過ごす方が良いと言う結論に行き着く。
まあ、レミリア姉様やフラン姉様は元よりエルや美鈴やパチュリー、その他沢山のメイドさんの誰かが、私が『新鮮な出来事』を求めすぎたが故に欠けてしまうなど、決してあってはならない事だから当然と言えば当然だろう。
「あの、失礼します。レミリア様方、少しお願い事があるのですが……今、問題ありませんか?」
「ええ。どうせ暇だったし、問題ないわよ」
「うん、大丈夫だよ!」
「勿論良いよ。でも、エルが畏まってお願い事をしてくるなんて珍しいね。どうしたの?」
そんな事を考えながら会話をしていると、掃除を終えたばかりらしいエルが部屋へと入ってきて、畏まった態度でお願い事があると私たちに言ってきた。普段のエルとはまるで別人であるその様子に、相当聞いて欲しいお願い事であるのは明らかだった。
良く考えたら、エルから何かお願いをされた事なんて指で数えられる程度しかなかったし、今は時間が有り余っていると言っても過言ではない上、他にも断る理由が何一つ見当たらなかった。なので、エルの問いかけに対して私と姉様2人はすぐに首を縦に振り、話を聞く態勢を整える。
「ああ……うん。確かに、それは仕方ないよね。フラン姉様」
「まあね! 普通の人間があの歳になっても20年前と変わらず、あれだけ大変な仕事をしてればそうもなるし! で、お姉様。勿論『お休みと趣味
「当たり前よ。何せ、エルが何も言って来ないなら、近い内にそんな日を私の方から言ってあげるつもりだったのだから」
そうして、態勢を整えてエルから聞いたお願い事とは、『お休みと趣味
確かに、年齢から来る体力の衰えは努力ではどうにもならない部分もあるし、エルのそのお願いは至極当然なものと言えるだろう。普段、そう言う事をあまり言わないエルが言ってきたのであれば、やはり相当来ていると見て間違いはない。そんな素振りなど全くなかったと、記憶していたのだけど。
で、エルからのお願いを聞き終えたフラン姉様がレミリア姉様に対し、確認するようにして『そのお願い、聞き入れるよね?』と聞き、レミリア姉様が『当たり前よ』と答えた事で、休みが増やされる事が決まった。
まあ、いずれは休みをあげるつもりだったみたいだから、エルがお願いすれば聞き入れられる事は、最初から決まっていたようなものだけど。
「と言う訳で、エルのお願いは聞き入れる事に決めたわよ。後、仕事の量も減らして若いメイドか体力があって健康なメイドに回して、人員も増やそうかしらね。それに、他のメイドたちもそう思ってるかも知れないし……うん。休みが欲しければあげるから、私に声をかけて欲しいって、他のメイドたちにも伝えてくれる?」
更に、普段の仕事時間も減らしてその分を若いメイドさんか体力があって健康なメイドさんに回し、新しい人を雇う事をレミリア姉様は、その場で矢継ぎ早に決めていった。
そして、他にも休みが欲しいと思っているメイドさんが居るかも知れないと考えたらしく、休みが欲しければ私に言えばある程度はあげる事が出来ると、エルに他のメイドさんたちに伝えてもらうようにお願いを持ちかける。
「ありがとうございます! その位なら、お任せください」
「ええ、お願いね」
レミリア姉様からの話を聞いたエルは、心底安心したような表情を見せると、お任せくださいと宣言してから部屋を出て行った。休みをもらえた事が相当嬉しかったらしい。
(エル、他にも何だか言いたそうだったような……気のせいかな?)
ただ、エルが去り際に一瞬だけ他にも何か聞きたげな表情を見せた様に見えたため、私の頭にふとそんな考えが浮かんだ。しかし、1秒にも満たない極短時間での出来事だったため、気のせいだろうと結論付け、私は姉様2人との幸せな時間を過ごす事に決めた。
ここまで読んで頂き感謝です。お気に入りや評価をしてくれた方に感謝です。感想を書いて下さった方も、ありがとうございます。