目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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末妹の不安と後悔

「リーシェお嬢様、何だか浮かない顔をされてますけど……どうかしましたか?」

「うん。実はね、ここ最近レミリア姉様とフラン姉様が、中々遊びに来てくれなくて……寂しいし、不安なの。いきなり、これからしばらくの間訳あって、()()()()()()()()()()()()()って姉様2人からのお願いしてきたって事は、もしかしたらって……」

 

 冬も近づき、随分と冷えるようになってきたある日の夜中、私は少し暖かい格好をして外に出て、門番の仕事をしている美鈴と話をしていた。

 半月前、姉様2人からいきなり『訳あってしばらく遊びとふれあいを減らしたい』とお願いを急にされた事によって寂しいと感じたと同時に、もしかしたら私が避けられているかもしれないと言う不安がよぎったからである。

 

 最初は、もうすぐ私の誕生日だと言う事もあって、それ関連での『訳』だったのかと思ったけど、良く考えてみたら去年以前の私の誕生日には一回もこんなお願いはされなかったため、違うとしか考えられない。

 

 次に考えられたのは、私が遊びやふれあいの時を含めた生活の中で、姉様2人に気付かぬ内に不快な思いを繰り返していたが故に、怒ってしまったと言う理由である。正直、これについては心当たりがないとは言い難いため、可能性としてはあり得そうだった。

 

 勿論、一緒に居る時に姉様2人はいつもと変わらず嬉しそうにしてくれているけど……今まで1度もされた事がなかったお願いに、私が避けられ嫌われかけてるのかもと言う不安が、決定的な証拠がないにも関わらずどうしても消えなくて、頭の隅でずっと燻っていた。

 

「その件なら、一切心配要らないと思う……いや、要らないですよ。リーシェお嬢様」

「そうかな……?」

「はい。えっと、考えてみてください。仮にリーシェお嬢様の事が嫌いになったのであれば、一緒に居る際に心から幸せな表情を見せてくれる事は勿論、そもそも一緒に居ようすら思わないでしょう。ましてや、自分自身から近づいてくれるなどまずあり得ないかと」

 

 すると、私の話を聞いてくれていた美鈴から『嫌いになったのなら、普通は一緒に居る際に幸せそうな表情を見せたり、そもそも一緒に居ようと思ったりしないだろう』と、そう言われた。

 私で例えるなら、レミリア姉様やフラン姉様、エルや美鈴、パチュリーやメイドさんたちを悪く言ったり害そうとする奴と一緒に居たいと思い、居て幸せに感じるようなものである。普通に考えれば、そんな事は絶対にあり得ない。

 

 つまり、レミリア姉様やフラン姉様が、私と居る時に心から幸せそうにしてくれているのが嫌われていない何よりの証拠と言う訳で、嫌われているかもしれないと言うのは、私が勝手に抱いていた根拠のない不安と妄想だったと言う訳である。

 落ち着いてみれば分かるような事だっただけに、馬鹿過ぎる自分を思わず殴りたくなる衝動に駆られた。当然、何とか耐えたけれど。

 

 ただ、姉様2人と一緒に居る時間が減った事に対して感じる寂しさはどうしようもないから、それを紛らすために私もしばらくは魔法の研究にでも集中しよう。研究をしてれば、時間なんてあっという間に過ぎていく様に感じるだろうから。

 

「うん、言われてみれば確かにその通りだね。美鈴、話を聞いてくれてありがとう」

「いえ、気にしないでください。最近は侵入者も来客もいなくて暇でしたし、良い暇潰しになりましたから」

「そう? なら良かった」

 

 そんな事を思いながら、仕事中にも関わらず私の長話に付き合ってくれた美鈴にお礼を言い、館の中へと戻っていった。

 

(うん、何だか心が軽くなった……ん? 姉様たちの声……)

 

 美鈴に不安に思っている事を話して気楽になった私は、色々と考え事をしながら何気なしにとある部屋の前を通った時、楽しそうに話している姉様2人とエル、いつもエルと一緒に居るメイドさんたちの声が聞こえた。

 悪いと思いながらも、姉様たちが何を話しているのかが気になった私は、こっそり扉に耳を近づけて集中力を高めると、会話の盗み聞きを実行に移す。

 

「エル! 前と比べてどうかな? 私とお姉様、上手になったと思う?」

「大分上手になられたと思いますよ。3週間、殆んど休まずに毎日練習と勉強をなされた成果がしっかりと出ているようで」

「そっか。さっき作った()()、美味しく出来てるんだね! 良かったぁ」

「ふふっ……当然よ! リーシェとの至福の時間を削ってまで練習したんだもの。少しは上達していなきゃ、割に合わないわ」

 

 すると、少し聞きづらいものの、何をしているかが会話から分かってきた。どうやら、姉様2人が何らかの料理を作り、その作った料理を食堂ではないこの会議室へとわざわざ運び、エルたちに食べて評価してもらっていたようだ。ついでに、私との一緒に居る時間が減った理由も、料理を作る練習をしていたからと言う事も判明した。

 

 これで、私の不安は完全に解消されたのだけど、その後に聞いてしまった姉様2人の会話の内容に、この上ない程の衝撃を受けてしまった。

 

「そうだね、お姉様! でもね、正直言ってリーシェに喜んでもらえるか心配なの……」

「大丈夫よ、フラン。あれだけ練習したのだから、リーシェが喜ばないはずがないわ。とは言え、少し不安が残ってるのも事実だから、当日まで休まずに練習して解消出来るように頑張るわよ」

「うん! えへへ……リーシェ、喜んでくれるかな?」

 

 何故なら、1週間後に迫っている私の誕生日のために、自分たちの時間を割いてまで料理の練習をしていると言う内容であったからだ。それを非常に嬉しく思うと同時に、話の盗み聞きなどと言う愚かな行為をしなければ良かったと、酷く後悔もした。恐らくサプライズで喜んでもらおうとしていた姉様たちの計画を、このままでは当の本人である私が盗み聞きをしたせいで、完膚なきまでに台無しにしてしまったからと言うのが大きかった。

 

(……よし! 聞かなかった事にしよう!)

 

 故に私は、そんな姉様たちの思いを無駄にしないように、今聞いた事を()()()聞かなかった事にするため、ぶっ通しで魔法の研究に励もうとこの場で決意し、この場を急いで後にした。

 

 




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