フラン姉様が母様たちと狩りに行った時に連れてきた、人間の男の子で初めての吸血をやってから1年半、特段大きな出来事も何もなかったため、いつも通りの日常生活を過ごしていた。
日が沈む頃に起きてから枕元に置いてある魔導書などの本を手に取って1時間程読み、姉様かメイドさんが部屋に呼びに来たら食堂へ行って食事を取る。
そこから趣味を5~8時間程度嗜み、姉様たちと何かして遊ぶか、母様たちと力を扱う練習をするか等をした後は、魔法で適温に保たれた大浴場で姉様たちと一緒に疲れを癒し、部屋に戻って寝ると言った感じで毎日を過ごしていたら、あっという間に1年半も経っていた。
吸血鬼が長命だからなのか、私だけ感覚がおかしいのかは分からないけど、たまに1年半前の事をまるで数日前の事のように感じる。まあどちらにせよ、今のこの快適極まりない生活を堪能して過ごすまでだ。
「失礼しますね、リーシェ。今お話出来ますか?」
「うん。別に暇だから大丈夫だけど……母様、急に改まってどうしたの?」
そうして趣味を嗜んでいると、母様がいつもとは違う改まった感じで部屋の扉を開けて入ってきた。手にはいつも愛用している金色の弓を持っているから、もしかしたら弓関連の何か厳しい練習でもするのかも知れない。
(それにしては少し様子が……と言うか、弓が光り輝いてない……?)
そんな事を考えながらどうしたのかと聞いて、返答を待っていると……私は唖然とする事となった。母様がいつも狩りに行く時等に愛用している金色の弓を
母様曰く、1年半前の狩りの日に銀の矢を腕に受けてから1年と5ヶ月……つまり1ヶ月前から、使う度に魔力をかなり多く消費するこの金色の弓を使う事が負担となって仕方ないらしい。それで、どうしようか悩んでいた時に、未だ姉妹の中で武器を持っていない私に与えようと思い立ち、今に至るとの事。
話を聞いて、道理で1ヶ月前から母様たちとの練習や軽い手合わせの時間が減った訳だと納得したと同時に、そのハンデがありながら私と姉様たちを相手どっても勝ち続ける強さは、本当に凄いと思った。
「と言う訳で、リーシェ。この弓に魔力と妖力を半分程度流し込んで下さい。そうすれば完全にこれは貴女の物になって、他の誰も使う事はおろか、触れる事すら難しくなりますから」
「……うん」
思考を巡らせていると、母様が輝きを失っている金色の弓を完全に私の物とするために魔力と妖力を流し込んでくれと言ってきた。話が唐突過ぎてついていけないけど、そう言われたらやるしかないので、言われた通りに力を半分流し込む。
すると、突然その弓が頭に響く高音と眩い閃光を放ち始めたため、私と母様は思わず目を瞑って耳を塞いだ。そうして少し経った後、目の前にある弓を見て私は再び驚いた。何故なら、前の弓の面影が皆無となっていたからである。
全体的に青みがかった銀色に、弓幹の形は至って普通であるものの時折稲妻が迸り、どう言う訳かその迸っている稲妻が全く周りに被害を及ぼしていない上に、これが驚く程手に馴染んだ。自分の魔力と妖力を加えたからだろうか。
「うーむ……どうやら、リーシェは雷にかなり適性があるみたいですね。それにしても、これ程までに変化するとは予想外でした。後は上手い事これを扱う練習と……ついでに、雷魔法の練習も集中してやりましょう。他の練習は、少し頻度を減らしましょうかね」
「うん、分かった。だけど母様、あまり長時間は……」
「言われなくても、今日は軽めにしますよ」
そうして出来た弓をあらゆる角度から見回していると、母様がこれを扱う練習と、ついでに適性のある雷魔法の練習をやろうと言ってきた。魔力と妖力が半減しているため、あまり長時間の練習は勘弁して欲しいと思っていたら、どうやらそれは分かっていたらしく、今日は軽めにしますと言ってきたから、これを了承して地下室へと向かった。
「さてと……リーシェ。最初は魔法陣から専用の矢を出す魔法と、弓を収納する専用魔法を練習しましょう。これが出来なければお話になりませんからね」
「なるほど……」
地下室へと入った後、最初に始めたのが弓を使うのに必要な矢を出す魔法と、この弓を出し入れするための魔法だった。母様曰く、この魔法が出来ないと弓を扱う事が不可能になってしまうとの事なのだけど……これがなかなか厳しかった。
特に専用の矢を出す魔法の魔力消費が多過ぎて、母様みたいに壁に大穴を開ける威力の矢を出す事はおろか、半分以下の威力の矢も厳しすぎる始末であった。良く考えたら、母様がかなり魔力を消費すると言っていた上に、練習前に半分魔力を使っているため、当たり前だ。
そのため、本当はこれ以外にも雷魔法の練習なども少しやる予定だったけど止めて、今日は切り上げる事に決まった。
「良く考えてみたら、魔力を半分消費した状態でやる訓練ではありませんでしたね。ごめんなさい」
「ううん、大丈夫。それよりも、また明日からよろしくお願いね。母様」
「当然ですよ、リーシェ」
こうして、弓をもらって最初の練習は、始まって1時間で幕を閉じた。
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