「フラン、リーシェ。エルが少し元気になってくれて、良かったわね」
「うん! 今まで隠してたのが凄く辛かったって分かったよ。だって、話終えた時には憑き物が落ちたみたいに、すっきりしてたし!」
「そうだね。レミリア姉様」
深夜にまで及ぶ、エルとの楽しい会話の一時を過ごした後、私は姉様2人にお願いをして、自分の部屋で続きの楽しい一時を堪能していた。有り体に言ってしまえば、軽いふれあいなしの会話などのみだと、今日に限っては少し物足りないと感じてしまっていたと言う、そんな理由があったからなのだけど。
とは言え、会話だけでも幸せかつ楽しかったと思っている。だから、例えふれあいをしなかったとしても、レミリア姉様やフラン姉様と仲良く平和に過ごす事が出来れば、それだけで良い。
(エル、確かに元気そうには見えたけど……大丈夫かな?)
まあ、取り敢えずそれは置いといて、レミリア姉様とフラン姉様の問いかけや話に同意を示しつつ、私は拭えないとある懸念を抱いていた。それは、見た感じ元気そうに見えるエルが、近い内にまた体調を崩してしまわないかと言うものである。
更にそれに加え、人間であるにも関わらず吸血鬼の私にも今まで親しく楽しげに接してくれていたエルや他のメイドさんたちに、
「リーシェ、大丈夫? 何か辛そうだよ?」
「うん。分かってはいるんだけど、仲良いメイドさんたちが私よりも先に死んじゃうって改めて思うと、どうしてもね」
なんて事を考えていると、そんな私の心の内が顔に出ていたらしい。フラン姉様から『大丈夫? 何か辛そうだよ?』と、凄く心配そうに聞かれた。
一瞬、何でもないよと言おうとしたけど、フラン姉様の事だから隠してもすぐにバレるだろうし、これ以上心配させるのは嫌だったから、包み隠さず今抱いている不安を全て露にする事に決める。
「……確かに、私もお姉様も確かに辛いと思ってる。だけど、メイドさんは人間で、私とお姉様とリーシェは吸血鬼。そんな彼女たちを館に雇い入れ、過ごして仲良くなれば避けて通れない道なの。辛いと思うけど、耐えなきゃいけないの」
すると、そんな私の心の内に秘めた不安についての話を、凄く真剣な表情で聞いてくれていたフラン姉様が改めて、これは種族の違いによる逃れられない運命なのだから、どうしても耐えなければいけないときっぱり断言をしてきた。
まさにその通りなのだけど、当のフラン姉様も少し沈んでるように見えるから、やはり親しくしていた人が先立つのを見届けるのは辛いらしい。
「でも、耐えられなくなりそうって気持ちは分かるよ。だから、その時は私やお姉様、美鈴にパチュリーもいるし……存分に思いの丈をぶつけてきて。全部受け止めてあげるからさ」
「私も同じよ、リーシェ。それに、私たちもそうだけど、今からそんなに思い悩んでいたら当のエルたちが最期まで楽しく過ごせないわ。
で、一呼吸置いてフラン姉様が、私の気持ちが良く理解出来るからと言い、逃れられぬ運命がやって来た際に耐えられなくなるようだったら、その時は思いの丈を自分たちにぶつけてきても全て受け止めてあげるから良いと言ってくれた。
そして、間髪入れずにレミリア姉様が、今からそんなに思い悩んでいたらエルたちまで気分が沈んでしまうだろうし、皆笑顔の良い思い出にしておきたいから取り敢えず、無理でなければ今は笑顔で居ようと言ってきた。
確かに、まだその時でもないのに落ち込んでいたら、自分や姉様2人やパチュリーや美鈴はもとより、エルを含めたメイドさんたちの思い出に私のその姿が長く残ってしまう可能性がある。それだけは避けたい。
「うん……確かにそうだね。ありがとう、レミリア姉様。フラン姉様」
なので、いずれ先立たれると言う逃れられぬ運命を頭の片隅で想定しつつも、不安によって思い悩み過ぎるのはやめにしようと思い立ち、私の話を聞いてくれた上に納得させてくれるような話をしてくれた姉様2人にありがとうと、笑顔でお礼を言った。
「どういたしまして。少し不安がすっきりしたみたいで、良かったわ」
「そうだね、お姉様! やっぱり、リーシェは笑顔じゃなきゃね!」
「当然よ。リーシェ、笑った時は凄く可愛いもの。勿論、普通にしてる時の表情も可愛いけど」
「そう言えば、今日こっそりリーシェが寝てる時に部屋に行ったんだけど、その時の寝顔がね……」
すると、何故かレミリア姉様とフラン姉様の間で、私が可愛いだの何だのと言った、聞いてるだけで嬉しくも恥ずかしくもある話題が持ち上がり始めた。正直、私よりもレミリア姉様やフラン姉様の方が可愛いのではないかと思うけど、大好きな姉様2人に何であれ褒められるのはとても幸せな心地なため、このまま何も言わずに聞きに徹する事にしよう。
(へぇ……フラン姉様、私が寝てる時に部屋に居たんだ……)
と言うか、今日フラン姉様が私の部屋に寝てる間にこっそり入ったって言ってたけど、一体何しに来てたんだろう。話の内容的に寝顔でも見に来ていたのか、はたまた悪戯でもしに来たのか、特に理由もなくたまたま立ち寄っただけなのかは分からない。
(まあ、別に何しに来てたかなんてどうでも良いや。フラン姉様もレミリア姉様も、凄く楽しそうだし)
ただ、別に何か酷い事をされた訳でも起こった訳でもないし、何の面白味もない私の話で姉様2人が楽しそうに盛り上がってくれるのなら、そんな事は別にどうでも良かった。私も、そんな姉様2人をじっと見て、勝手にほのぼのさせてもらってるのだから。
「あっ、リーシェごめんね! お姉様とだけ話が盛り上がっちゃって」
「同じくよ。ごめんね」
「別に気にしてないよ。可愛いフラン姉様とレミリア姉様の、楽しそうに話す様子が見れたから」
「可愛いって……えへへ」
「あらあら……ふふっ、嬉しい事言ってくれるわね」
その後は、私を会話から置いてきぼりにしてきた事を謝ってきたフラン姉様とレミリア姉様に気にしてないと言いつつ、さっきのお返しとして可愛いと言って照れて喜ぶ様子を見たり、どうでも良い様な会話で3人で繰り返して楽しんだり、レミリア姉様から振ってきた少し激しめのふれあいを堪能したりした。
お陰で、さっきまで抱いていた大半の不安が奥底に押し込められ、過度に思い悩む事がなくなる。勿論、完全に解決して消滅した訳ではないけれど、不安が3分の2軽くなるだけでも十分であった。
(レミリア姉様、フラン姉様。ありがとう、大好きだよ)
こうして、私たち3人は疲れ切るまで私の部屋で過ごし、他にも色々な事をしたり、食事やお風呂や寝る時まで一緒に済ませた、至福の1日を終える事となった。
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