目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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今話もレミリア視点です


狂喜する天使

「あっ、レミリア姉様にパチュリー! 見てよほら、エルが死んだの! 死んだんだよ!」

「「……」」

 

 フランからの知らせを受け、私はパチェと共にエルが眠るメイドたちの部屋へと向かったものの、あまりのリーシェの狂い様に閉口し、一言も発する事が出来ずにいた。

 

 私が想定していたのは、他人がドン引きする位に狂って大笑いしつつもどこか抑えきれない悲しみを醸し出す、お母様が死んでしまった時のような感じのリーシェである。

 しかし、今私たちの目の前に居るリーシェからは悲しみなどは微塵も感じず、むしろこの状況を()()()喜び楽しんでいる感じしかしない。満面の笑みを浮かべて翼を時折パタパタとはためかせ、まるでフランみたいに大きな声を出して私とパチェに呼び掛けてきた事が、そう思わせてならなかった。

 

「あれ、レミリア姉様? そんなに難しそうな表情を見せて、どうしたの?」

「いや、えっと……リーシェが何でそんなに楽しそうな仕草を見せるのか、考えていたからよ。出来たら、説明して欲しいわ」

「なーんだ、そんな事だったの? じゃあ、経緯も含めて説明してあげるから聞いてね!」

「ええ、分かったわ」

 

 それにしたって、あまりにも変わり過ぎだろう。一体どうしてここまで別人の様になってしまったのか、理由を考えてみたけど分からずに悩んでいると、リーシェがそんな私を見て不思議に思ったらしい。もう少しお互いに近づけばキスが出来てしまう距離まで顔を近づけ、どうしたのかと聞いてきた。

 

 なので、いきなりの仕草に少し驚きつつも、出来たらで良いから説明をして欲しいとお願いを持ちかけたところ、輝くような笑顔を浮かべながら了承してくれたため、聞き逃さないように聞く態勢を整える。

 

「えっと、レミリア姉様たちが来る少し前かな。いつもの様にエルの様子を見に行ったら、今にも途切れそうな弱々しい声で私を呼んでたのを聞いたの」

「なるほどね。それで?」

「明らかに調子が良くないって分かったから、慌てて大丈夫って声をかけたら……私の手を握って『ごめんなさい』『私が逝っても姉妹仲良く元気で居て下さい』って言った後にね、そのまま眠る様にして死んじゃったんだ。本当、あの時は頭の中が真っ白だったなぁ」

 

 すると、リーシェはこうなるに至るまでの経緯を、まるでそれが良い思い出であったかの様に、軽快な感じで説明をし始めた。

 

 一転して聞いている私やフラン、パチェやいつの間にか来ていた美鈴、部屋の外から様子を見守るクレイナ含めたメイドたちの沈んだ雰囲気と対比してみると、リーシェの狂い様は非常に目立っている。大方、それがあまりにも心を抉ってきたから、反射的に狂う事で精神由来の出来事による命への影響を抑えたと言った所だろうか。

 

「まあ、当然悲しくて泣いたんだけど……不思議とすぐにこの状況が楽しくて、嬉しくなってきちゃったんだ。最初は抑えようかとも思ったけど、その内そんな気も起きなくなって……うん。常識的に狂ってるとは思うよ? でもね、今の私はとっても幸せな気分なの! きっと死んじゃったエルだって、塞ぎ込んでる私よりも幸せ一杯の私で居てくれる方が嬉しいはず! ふふっ……アハハハハ!!」

 

 そんな感じで、こうなるに至った経緯の説明を聞きながら、頭の中で色々と推測をしていると、突如としてリーシェが大笑いしたと同じタイミングで魔力が急激に膨れ上がっていくのを感じ、それが一定の量に達した瞬間、身体の周囲に青白い稲妻が数秒間隔で迸る現象が発生し始めた。

 

 何をどう見ても、これは明らかに暴走状態と言えるだろう。技術などはともかくとして、今のリーシェが発する魔力の総量は『狂気の啓示』を使用したフランと遜色なく、私の全力を僅かながら上回っている。

 更に、身体の周りを時折迸る、余剰魔力が変換されたと思われる稲妻が強力な防御壁となり、並以下の実力者であれば攻撃を当てる事はおろか、触れるだけでも致命傷となり得ると、見ただけで理解出来た。言わずもがな、メイドたちはこれに触れれば即死してしまうだろう。

 

「お姉様、リーシェ大丈夫かな……?」

「大丈夫と信じたいけど、どう考えてもこれは……」

「ええ。正直これは、私の目から見ても大丈夫とは絶対に言えないわ。魔力の流れも量も暴走する状態にまで乱れてるし、感情や性格も普段と比べて大きくねじ曲がってる上に瞳がまるで正気じゃない……エルの死は、私たちの想像を遥かに超えて、リィの精神を叩きのめしたと言えるでしょうね」

「やはり、そうなるわよね。まあ、分かってはいたけど」

「そっか……」

 

 当然、こんなリーシェを見れば、フランが大丈夫なのかと不安に思うのも仕方ない事ではあるけど、どう見ても大丈夫な状態ではなかった。で、パチェも同じ様な事を思っているらしく、今のリーシェの様子を淡々と語りつつ、この状況で大丈夫なはずなどないと、主にフランの方に顔を向けながらきっぱりと宣言をしていた。

 案の定、リーシェをたった1人の妹として溺愛しているフランは、大丈夫でないと聞いたお陰で露骨に落ち込むも、すぐに気を取り直してこの状況に向き合おうと試み始めた。

 

「ふぅ……そうだ! レミリア姉様、フラン姉様! さっきも言ったけど、私ね……今、とっても幸せなの! だからさ……」

 

 で、そんな感じのやり取りを3人で交わしていた時、今まで大笑いしていたリーシェが突如として黙り、改めて今の自分がとても幸せであると言う事をアピールし始めた。リーシェが黙った瞬間からもう嫌な予感しかしなかった私は咄嗟に全力を開放、グングニルを構えて後ろに居た美鈴にメイドたちの頑丈な地下室への避難と、万が一エルの遺体が傷ついては大変であるため、その保護を命じる。

 

「この幸せ、皆に分けてあげる……!」

「「っ!?」」

 

 そして、美鈴が私からの命令を実行して部屋を出て、リーシェが少し震えた声でこの場の雰囲気を底冷えさせる、私たちに対する裁きの宣告ともとれる一言を言い放ち、青白く発光する稲妻を纏った矢を弓につがえて放とうとした瞬間……

 

「ごめんね、リーシェ……」

「うっ……!!」

 

 溺愛している妹とを戦わなければならないと言う苦痛に顔を歪め、涙を流しつつもリーシェを力の暴走から救うために決意を固め、狂気の啓示を使った状態のフランが繰り出した、爆発する火球を放つ魔法により壁ごと突き破って外へ吹き飛ばしたため、被害はメイドたちの部屋が悲惨な事になるのみで済んだ。

 

「パチェ、フランに続くわよ!」

「ええ!」

 

 そして、壁の欠片ごとで館の外へと追いやったこの期を逃さず、私とパチェはフランに続く形で、爆風で吹き飛んでいったリーシェを追っていった。




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