目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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今話はフラン視点です


心に秘めた、フランと皆の思い

「はぁ……」

 

 エルの死によって暴走したリーシェをお姉様やパチュリーと協力して抑え、これ以上傷つけないために不本意ながら封印し、安全な地下の大図書館の一角にあるパチュリーの魔法で施錠された空き部屋へと移動させた後、私は戦闘で崩壊した場所の応急修理と後片付けを、考え事をしながら皆と一緒に行っていた。

 

 パチュリーのお陰でリーシェがこれ以上苦しまず、戦った私たち以外の誰かに犠牲者や負傷者が出る前に暴走を止められたのは、確かに喜ぶべきなんだろうなとは思う。私やお姉様だったら、動けなくなるまで叩きのめすしか出来そうになかったから。

 

 ただ、それでも私は喜ぶ事は出来ないどころか、むしろ辛い思いすら抱いていた。本人の方が辛いであろう事は言うまでもないけど、封印すると言う事はとても長い間……全ての事が上手く行くのを前提として、少なくとも6年はリーシェと楽しく話せないし、愛しさを感じられないし、ふれあいだって出来ないと、パチュリーから言われて思い知ったからだ。

 

 後は、リーシェ程ではなくても、エルが居なくなった事に対する悲しみが私にもあると言う理由が挙げられる。もし、リーシェが悲しみのあまり暴走せずに比較的落ち着いていたのならば、私が大泣きしていたかも知れない位だ。

 

 それにしても、こんな状況になってみて如何にリーシェに対して依存していたかを、改めて嫌と言う程理解したけど……私はそれでも依存から脱却しようなどとは思わない。リーシェだって、私を心の支えにしているのだし。

 で、当然ながら封印を解かれた際に私が落ち込んでたりすれば、心の支えどころか『心配』と言う心の枷になってしまうのは明白だし、露骨に落ち込む訳にはいかない。頑張って、今から元気でいなければ。

 

「フラン、大丈夫? 辛かったら、リーシェのところに居ても良いわよ? 後片付けなら私たちでやっておくから」

「レミィの言う通りよ、フラン。貴女が片付けをやらなくても、誰も文句を言ったりはしないし、不満を抱いたりはしないわ」

 

 頭の中でそんな事を考えながら作業を進めていると、私の心の内がいつの間にか行動か表情に出ていたのか、お姉様とパチュリーが手を止めて心配そうに声をかけてきてくれた。

 で、何なら後片付けなんかやらなくても良いから、封印されたリーシェの所に居ても良いよと気遣いまでしてきてくれた。自分たちだって辛いはずなのに……

 

「……ううん、大丈夫だよ。それよりも、お姉様とパチュリーの方は大丈夫?」

「私なら大丈夫よ。心配してくれてありがとうね」

「同じく。封印魔法2つに魔力をごっそり持ってかれたけど、レミィとフランのお陰で身体自体は余裕ね」

「そっか。なら良かったけど」

 

 そう言う考えが頭に浮かんだ私は、リーシェの様子を見に行きたい気持ちを抑えて大丈夫だと答え、逆にお姉様やパチュリーに大丈夫かと言葉をかけた。

 結果は、仕方ないと割り切っているからかは不明だけど、私のようには落ち込んでいなかったみたいで、2人は共に大丈夫だと答えを返してくれたからホッとひと安心である。

 

「辛いわよね、フラン。致し方ないとは言え、愛する妹(リーシェ)をあんな形で封印しなければならないのだから」

「うん。凄く辛いけれど……1番辛いのは、慕ってた人が目の前で逝く姿を見て、こんな事になる位に心が壊れちゃったリーシェだと思うの。それに、いつか封印が解かれる日になった時、私がどんよりしてたら悲しまれちゃうし……だから――」

 

 すると、そう答えてくれてからあまり間を置かずに、お姉様が私を抱き寄せ、優しく頭を撫でながら『辛いわよね』と言ってきた。どうやら、私が大丈夫と言った時に心の中で考えた事が、お姉様にとっては丸分かりだったみたいだ。

 

 でも、1番辛いのは仲の良かったエルに先立たれ、ショックで心が壊れてしまったお陰で暴走を引き起こし、封印される事になってしまったリーシェである。

 その上、いつか封印が解かれた時に私がこんな辛そうにしていたら、壊れた()()で治せばまだ何とかなる程度に収まったリーシェの心を、死んだも同然な状態となるまでに消し飛ばす事になりかねない。

 

 だから、声をかけてきてくれたお姉様に今考えていた事を話した上で、頑張って元気で居れるように頑張ると、今すぐ泣きたくなる程の辛さに耐えて、そう言おうとした。

 

「無理しなくても、泣きたければ泣いても良いのよ? 辛い思いは溜め込まないで時々発散しないと、身体に毒なのだから」

「えっ……?」

「フラン。本当は今、泣きたくなる位に辛いんでしょ? エルの死、大好きな妹のリーシェとの望まぬ戦闘、そして封印……うん。もう一度言うけど、無理して溜め込む位なら、この場で存分に泣きなさい。大丈夫、()()()()()咎めたりはしないわ」

「ぐすっ……お姉様ぁぁ……エルとは2度会話が出来なくなったのに、リーシェともしばらく話す事すら出来ないなんて嫌だよ……うぅ……」

 

 しかし、その言葉はお姉様の『泣きたければ泣いても良いのよ?』との一言によって遮られ、言えずに終わる事となった。

 

 そして更に、私が泣きたくなる程辛い状態であると看過している事を伝えてきた上で『この場で存分に泣きなさい』と、お姉様自身も目を涙で潤わせた状態で言ってきたものだから、もう耐えられない。戦闘中にも渦巻いていた色々な感情が混ざって爆発、勝手に涙が溢れ出してきた。

 

「エルって慕われてたのね……前から分かってたけど、改めて実感したわ」

「確かに。彼女とは話してて楽しかったですし、何より思いやりのある方ですから。皆さんが泣いて悲しむのも、リーシェお嬢様が狂って暴走してしまったのも、痛い程良く分かります。メイドの仕事の手際の良さなどを抜きにしても、本当に惜しい方を亡くしましたよね……」

 

 で、感情をむき出しにしながら思い切り泣いてると、時折一緒に手伝ってくれてるクレイナを含むメイドさん、美鈴やパチュリーのエルの死を悲しんだり、すすり泣く声が聞こえてきた。これを聞けば、皆にとってエルの存在がどれだけ大きかったのかが良く分かる。

 

 ちなみに、リーシェを心配する声も殆んど同じ位存在したけど、こちらは死んだ訳ではなく()()されてるだけだとパチュリーが説明した上で、出来る限り早く『封印を解いても問題がなくなるような物』を用意すると宣言した事で、その声はすぐに収まっていた。

 

 まあ、性格がねじ曲がった上に余剰分が出てくる位に魔力が増大し、最終的には封印するしかなかった暴走を抑える、または完全に止める物を用意するのはいくらパチュリーと言えど簡単ではないだろうし、封印期間について聞いた話を加味すれば、どれだけ上手く早く事が進んだとしても6年はかかるだろう。

 

勿論、そう事が上手くいくとも限らないから普通に考えれば10年単位、立ちはだかる壁の内容によっては100年近くと言うのも全くあり得ない話ではない。まあ、流石にそこまではいかないだろうけど。

 

「フラン、どう? スッキリしたかしら?」

「うん……! ありがと、お姉様! えへへ……」

「良かったわ……じゃあ、後片付けがある程度済んだら、一緒にリーシェの様子でも見に行きましょう! まあ、封印されてるから見るだけしか出来ないし、何か変わる訳でもないけど」

「そんなの分かってるよ!」

 

 1人で泣き、思いの丈を吐露して大分スッキリしてきた頭の中でそんな思考を巡らせつつ、お姉様からの質問に対して肯定の意を示すと、ある程度の応急措置と後片付けを済ませた後に封印されたリーシェの様子でも見に行こうと誘われた。

 

 その際、見る以外の行為が出来る訳ではないし、何か変わる訳ではないと言われたけど、そんな事は百も承知である。なので、そんなお姉様の問いに対しても肯定の意を示し、さっさとある程度の後片付けを済ませてしまうためにフォーオブアカインドを使って出した分身に命令を下して、本体である私自身も全力で動き始めた。

 




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