目覚めたら、レミリアとフランの妹になっていました   作:松雨

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今話はレミリア視点です


波鎮めの首飾り

「そう言えば、パチェ。あの日に『封印を解いても問題がなくなるような物を用意する』って言ってたじゃない。それって一体何なの?」

 

 フランやパチェの協力の元、暴走してしまったリーシェを致し方なく封印し、その後片付けなどを行ったあの日からちょうど1週間が経って大分落ち着いてきた時、私はとある疑問を解決するために地下の大図書館へと、ティーポットとカップを持って訪れていた。

 その疑問は、パチェが言った()()()()()()()()()()()()()()()()()()とは何なのか、と言うものである。

 

 本当ならあの時に質問すれば早かったのだけど、色々とゴタゴタしていてそれどころではなかったから、今になった。まあ、その時は私もそれを聞ける精神状態ではなかったし、仕方ないだろう。70歳と言う、人としては長く生きてくれたエルのお葬式とかもあったし。

 

「あぁ、その事? 簡単に言えば、暴走前の生活を送る事を可能とさせつつ、感情の揺れなどで起こる性格のねじ曲がりと力の暴走が起こりそうになった時、確実かつ強力に抑えてくれる魔道具の事よ、レミィ。勿論、既存の物にそんな都合の良い物はないから、一から私が研究開発するわ」

 

 なんて事を考えていると、パチェが私の質問に対して答えてくれた。どうやら、リーシェが暴走前の生活を変わらず送る事が出来て、力の暴走と性格のねじ曲がりを正確かつ強力に抑えてくれる『波鎮(なみしず)めの首飾り』と言う魔道具の事であったらしい。

 ただ、既存の物の中でそんな都合の良い物はないようで、パチェが一から研究開発するみたいだ。

 

「なるほどね。でも、それだとどれだけ上手く行っても、6年で済みそうにないんじゃない?」

「そうね。全てが最低でも理想通り、出来れば理想以上に進まないと、十中八九そうだと言っても良いわ。魔道具製作に適した材料選びと成形、完成させた物に付与する各種魔法術式の研究開発・調整、魔法術式が望む形に発動するかどうか、重大な欠陥や欠点の発見と改善とかをしなければならないから」

 

 確かに、パチェが一から全て作るのなら安全性としてはこの上ない物が出来るのだろうけど、工程の全てを自分1人で行うのであれば、非常に長い時間を要す事はほぼ確実である。それこそ、1週間前にパチェが言っていた『リィの封印を解くのは最短で6年先』との言葉が、理想論と化すと断言出来る位には。

 

「そう。分かってはいたけど……色々な意味で厳しいわ、本当に」

「ええ。でも、封印魔法である以上はリィに()()()()()()から、そこだけが救いね。ただ、精神的に強い方のレミィならともかく、リィを溺愛しているフランが長い間耐えてくれるかは……懸念するべきよ」

「えっと……うん、そうよねぇ。でも、どうしようかしら……?」

 

 頭の中でそんな風に思考を巡らせつつ会話を続けていると、パチェが『封印魔法をかけたリーシェが死ぬ事はない』から、時間がかなり長く掛かろうともその点に関しては大丈夫だと言った上で、別の懸念を示した。それは、リーシェを溺愛しているフランが、数年ならともかく下手すれば数十年単位続くかもしれないこの状況に、精神が耐えられなくなるかもと言う懸念である。

 

 今はまだ、封印されているリーシェに毎日軽く挨拶しに行く程度で収まっているけど、これからどんどん時間が過ぎていくにつれて、そんな程度で済まなくなるのは私にも容易に想像が可能だったし、パチェがそう言うのも理解出来た。

 

「なら、いつも以上に長く濃く()()()()()あげたらどう? リィの事を溺愛してるフランだけど、レミィの事も同じ位愛してるのだし。それか、いつもとふれあい方を変えてあげるのも良いかも知れないわね。例えばどう変えろとかはまあ、事が事だし()()()()()()()()()

「ぶっっ……! げほっ、げほっ……」

 

 ただ、私はリーシェ本人ではない以上、その懸念をどう解消したら良いのかが分からない。なので、そのためにどうしようかと真剣に考えていると、パチェが澄ました表情をしながらふれあいの事について言ってきたものだから、思わず飲んでいた紅茶を吹き出してしまった上に、むせて咳き込んでしまった。

 

 咄嗟に顔を逸らせたからパチェにはあまりかからなかったのは良かったけど……まさか、ふれあいの事について触れて来るとは、予想外にも程があるだろう。

 

「レミィ、大丈夫? ごめんなさいね、容易に触れられたくない事に触れて」

「ふぅ……大丈夫よ。もう既にバレてるものだと思ってたし……それより、パチェの案を採用させてもらう事にするわね」

 

 なんて思考を巡らせていると、パチェが私たち姉妹のタブーに触れたと思ったようで、とても申し訳なさそうに謝罪してきた。

 しかし、フランやリーシェとふれあいを始めてからかなりの時間が経ってる今、音漏れなどの対策を取っているとは言え、どこからかその際に何をしているのか漏れる可能性を想定していた事もあって特に不快感などは感じなかったから、気にしないでと言った。まあ、今その話が出てくるとは予想していなかったから、かなり驚きはしたけれど。

 

「さてと、疑問は解決したし……わざわざありがとう、パチェ」

「どういたしまして。余程の無茶振りとか変な話じゃなければ、いつでも構わないわよ。親友なのだから」

「ええ、そうさせてもらうわ」

 

 そして、疑問が解決した後はわざわざ研究の時間を割いてまで話を聞いてくれたお礼をパチェにして、私は自分の部屋へと戻って行った。

 




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