がっこうぐらし!RTA 反面教師チャート   作:メニコン先輩

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りーさん視点なので初投稿です


おくじょう

 最初に聞こえたのは悲鳴だった。この声はグラウンドの方から聞こえたものだと分かったものの、そこで何が起こっているのかは分からなかった。私たちがいた屋上に怪我人を連れた女子生徒が慌てた様子で飛び込んできたのだ。

 

 察するに数人の「凶暴化」した生徒に襲われたようだ。傍にいた佐倉先生の携帯に電話があり、そのすぐ後に屋上の扉を叩く彼らが現れた。佐倉先生はそれを必死になって抑えていたが、私はそれを呆然と眺めることしか出来なかった。

 

 女子生徒が連れてきた怪我人が、扉を叩く彼らと同じようになってしまったのを見ても、私は何も出来ないままだった。

 

 うめき声をこぼしながら、女子生徒に近付く彼は、彼女が振りかぶったシャベルによって動かなくなった。そして、佐倉先生が抑えていた扉は、波が引いたように静まり返っている。

 

 助かったのだと分かってようやく、これが現実起こっていることだと認識できた。グラウンドでや校内から聞こえていた悲鳴は聞こえなくなっていた。

 

「めぐねえ、携帯・・・・・・」

 

 由紀と呼ばれていた子が指さすのは、先ほどまで佐倉先生が持っていた携帯電話だった。先生が扉を押さえている間に床に落ちたそれは、短く点滅を繰り返して着信があったことを知らせている。

 

「・・・・・・鴻池先生?」

 

 携帯の画面を見て、先生はいまだ震える指で掛けなおした。

 

「だめ、出ない・・・・・・。これからどうしたら」

 

 しばらく携帯を耳に当て続ける佐倉先生だったが、やがて諦めて携帯を握ったままの腕をだらりと下ろした。

 

 そのすぐあとだった。先ほどまで抑えていた扉のドアノブが、向こう側から捻られていた。佐倉先生は息を呑み、わずかに後ずさった。その間も小さな金属音が続き、やがて収まった。

 

 そして扉の向こうから、男性の声が微かに聞こえたのだ。扉から少し離れていた私には聞こえなかったが、扉の近くにいた先生と由紀ちゃんの耳には届いたようだった。佐倉先生は慌てて扉を押さえていたロッカーをどかし、鍵を開けた。

 

 扉を開いた先にいたのは、肩で息をする男性教師と、首にチョーカーを巻いた女子生徒だった。由紀ちゃんはその女子生徒と面識があるようで、抱きついて互いの無事を喜び合っていた。

 

 何度か校内で見かけたことのあるその男の先生は屋上をゆっくりと見渡すと、フェンスの近くで泣き崩れるくるみと、その傍らに横たわる遺体に目を留めた。

 

 彼は彼女に何か声を掛けようとする素振りを見せたが結局何か口に出すことはなく、これからのことだろうか、佐倉先生と相談をはじめた。

 

 二人の相談の結果、救助が来るまでこの場所で立てこもることが決まり、私たち生徒は二人の先生の指示に従うことになった。

 

 夕暮れ過ぎ、私たちは身を寄せ合って小声で話し込んだ。

 チョーカーを首に巻いた女子生徒、貴依ちゃんは見た目の派手さとは裏腹に、気遣い上手な優しい性格をしていた。ショックを受けていたくるみをそれとなく気配り、私がつい口にした妹の話を真剣に聞いてくれた。

 

「先生に相談してみなよ」

 

 先生、と聞いて私はすぐそばでウトウトしている佐倉先生に目を向ける。すると貴依ちゃんは苦笑いを浮かべた。

 

「めぐねえじゃなくてさ、ほら」

 

 彼女が顎で差したのは、私たちから離れて扉前に座り込んでいる男性教師だった。

 

「騒動が起きた時さ、私パニックで何も考えられなかったんだ」

 

 ポツリと言葉をつなぐ貴依ちゃんは静かに先生を見つめていてた。

 

「そこに先生が皆に逃げるよう叫びながら走ってきてさ。その声で『あ、逃げなきゃ』って思ったんだよ。でも・・・・・・」

 

 そこで貴依ちゃんは彼女の側に寄り添って眠る由紀ちゃんの頭をなでた。

 

「この子が見当たらなくて、心配したんだ。今のりーさんと一緒だよ。由紀は私にとってどんくさい妹みたいなもんだからさ。それで先生に駆けよって『由紀がいない!』って泣きついてさ」

 

 口角を上げて可笑しそうに話す彼女につられて、少しだけ気分が明るくなる。

 

「そしたら無事にここで合流できたんだ。だからさ、先生に相談してみなよ。頼りなさそうに見えるけど、きっとなんとかしてくれるって」

 

 私は貴依ちゃんに短く礼を言う。すると彼女は満足そうに頷くと「そろそろ遅いし、おやすみ」とだけ告げて既に寝息を立てている由紀ちゃんに寄り添うように横になった。

 

 目を覚ましたら、貴依ちゃんの言うとおり鴻池先生にるーちゃん、妹のことを相談してみよう。

 

 ・・・・・・しかし、彼は妹のことを助けてくれるだろうか。彼が私たちを助けているのは、先生という職務から来る責任感によるものではないのか? だとすれば自分の学校の生徒ではないるーちゃんを助けてくれるのか? もし断られたら私はどうすれば・・・・・・。一人で救助に向かう?

 いやまず学校から逃げ出すことすらまともに出来るか怪しい。学校を出てるーちゃんの通う小学校までいけるだろうか。 

 

 ・・・・・・そうだ、何か彼の弱みを握れば協力してくれるだろうか。

 




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