鬼が始めた妹探し生活 作:琉鬼
「ようやく抜けたぜ……」
魔女教との争いの後、足跡を辿りながらしばらく歩き、ようやく森を抜けたリアム。
日はだいぶ落ち、空はオレンジ色に染まっている。
「さて……この後どこへ行くべきか……」
ここからは足跡がつかない石道。
手がかりがもうないのだ。
「とりあえず、近くの街で情報探しだな」
そう言ってリアムは街へと歩き出した。
しかし……
「街って……どこだ?」
何を隠そうリアムはこの森から出たことがほとんどないのだ。
街の場所など知るわけが無い。
「人間が通るのを待って、道を聞くのと……
ひたすら歩き続けるのと……どっちがいいかねぇ。
……ま、考えたって仕方ねえ。歩ってりゃそのうち着くだろ」
リアムは考えるのを放棄し、まっすぐ石道を歩き始めた。
その最中に妹のことを考え始める。
「そういや手紙に、姉の方……ラムの方が素質があるって書いてあったな。
んで、魔女教は桃色の髪の方の角を折ったって言ってたな。
せっかく素質があったのに、角折られちったらなぁ……」
鬼族は基本的に二本の角を持って産まれてくる。
ただ双子は例外で、片方の角を一つ欠損、つまり一本の角で産まれてくるのだ。
そしてその角を折られた場合、ほとんどの力を失ってしまうのだ。
つまり、現在ラムは力のほとんどを失っている。
「しかも手紙に、俺を超えるかもって書いてあったぐらいなんだから、相当な素質だったんだろうな……。
でもそれなら、魔女教が何人いたところで負けるわけねえんだけど……」
ここでリアムは二つの仮説を立てる。
一つ目は、魔女教の中でも特別な地位を持っている、魔女教大罪司教が来たという仮説。
それなら負けても仕方ないかもしれない。
二つ目は、妹に攻撃を仕掛けられてそれを守って角を折られたという仮説。
こちらも仕方ないことだと思われる。
この二つの仮説、どちらの方が確率が高いかと考えた場合。
「……二つ目だな」
一つ目の仮説の確率はかなり薄いと考える。
大罪司教を送るほどあの村は大きくない。
しかも大罪司教の力となれば、村の原型が残ってないだろう。
魔女教があの村を襲った理由は分からないが、少なくとも大罪司教は来ていないと考える方が自然だ。
二つ目の仮説の場合。妹の方……レムは力がないことを悩んでいた。
ということはその言葉の通り、普通の鬼の子供より力は弱かったんだろう。
双子なのだからそれは当たり前だ。
その妹を守りながらでは、かなりの力量の差がない限り、かなり厳しい戦いになる。
「……何考えてんだ俺。ラムが角折られた理由なんて考えてどうする?そんな細けえこと考えてる暇あったらもっとしっかり歩きやがれ」
無駄な考えをしていた自分に喝を入れ、歩を早めた。
いつの間にか完全に日は落ち、空には満天の星空が見える。
「結構歩いたけどなぁ……。ま、人間が近くにいねえとこに村を作ったんだから、街が近くにねえのも当たり前か」
鬼族は人里離れた山奥に集落を構えるような細々とした暮らしをしていた。
人里から離れた所ということはつまり、街の近くではないということなのだ。
「今日はこの辺で寝るとするか」
村からずっと歩いてきて、さすがのリアムも少しは疲労を見せていた。
疲労をためて体を壊したら元も子もないと考え、ここで寝るという考えに至った。
「ホントだったら近くに空き家でもありゃいいんだけどな。そんな偶然ある訳……って……は?」
そう思った瞬間、数百メートル先に建物を確認したリアム。
テンションが上がったリアムは全速力でその家へと走る。
その建物は木造の小屋だった。
外からの確認だが、人の気配はない。
「すんませーん!誰かいますか~?」
一応念の為声をかけて確認したが、反応はない。
「鍵は……かかってねえな。誰の小屋だかわかんねえけど……今日一晩だけ貸して貰うぜ」
そう言ってその小屋のドアを開けたリアム。
中を確認すると、完全な小屋だった。
中には何も無く、広々としたスペースが広がっていた。
「今日はゆっくり眠れそうだな」
そう言ってその小屋に横になるリアム。
「小屋があるってことは、人間が近くにいるってことは多分間違いねえ。
ってことは街……それか村が近くにあるかもしれねえ。何とか希望は見えてきたな。
明日中に人を見つけられたらいいな」
そう考えながら……リアムは眠りについた……。