鬼が始めた妹探し生活 作:琉鬼
なかなか続きを考えるのに時間がかかってしまいました……
「スゥ……スゥ……」
静かに寝息を立てながら寝ているリアム。
そんな中外から、ペタッペタッという足音が聞こえてくる。
「ん……なんだ……?」
その足音で目覚めた彼は、その音を集中しながら聞いた。
そうすると足音は小屋の前で止まり、その足音の主はガチャリと音を立て小屋に入ろうとした。
「待て……。ナニモンだ?」
リアムは入ってきた何者かにそう問いかける。
「あ……すいません!空き家かと思って一晩ここに泊まろうと思って……」
何者かはリアムにそう返した。
暗くて顔は見えないが、声を聞く限り女性。恐らく同い年ぐらいの少女だろう。
どうやら敵対心は無さそうだ。
「はぁ……。気にしなくていい。別に俺の小屋じゃねえしな」
「え?それじゃあなたは何故ここに?」
「あんたと同じ理由だ。一晩だけ寝かせてもらおうと思ってな。鍵もかかってなかったし、多分空き家なんだろ」
「あ、そうなんですね。……私もご一緒しても大丈夫ですか?」
初対面の男相手に全く警戒心を抱かない彼女に少し呆れるリアム。
「あのさ……。初対面の俺が言うのもなんだけど、相手を簡単に信用しない方がいいぜ?」
リアムがそう言うと彼女は少し笑いながらこう言った。
「大丈夫です。私……、共感の加護を持ってるので、あなたの感情を読み取れるんです。今のあなたの感情は心配……。敵対心を持ってないことは分かるので」
「さいですか……。まぁいいや。あんた名前は?」
「ルナです。ルナ・モーネ」
「俺はリアム。さっきも言った通りここは俺の小屋じゃねえ。休むんなら勝手に休みな」
彼はぶっきらぼうにルナと名乗った彼女にそう言った。
「ありがとうございますリアムさん」
感謝の言葉を述べるルナ。
「なぁ……。ひとつ聞いてもいいか?」
「はい、なんでしょう?」
「見たところあんた一人みたいだが……、こんな時間に女一人で何やってんだ?」
リアムはルナに素直に聞きたい質問をぶつける。
「実は……私、最近家族を亡くして……。色んなことを知りたくて旅をしてるんです」
「悪いこと聞いたな……。すまん」
「いえ……。リアムさんこそこんな所で何を?」
「俺は……妹を探してんだ」
リアムはこれまであったことをルナに話した。
村から追い出された話。
村を見に行ったら村が全滅していた話。
親からの手紙の話。
妹の話。
話し終わってリアムがルナの顔を見ると……。
彼女は泣いていた。
目から大粒の涙を流しながら。
「おいおい……。なんであんたが泣いてんだよ」
「だって……、そんな悲しい思いをして……旅をしてるなんて……。私だったら耐えられない……」
「……一度も会ったことないとは言っても、俺は兄貴だからな。妹のために動くのは当然だろ。親父とお袋にも約束したしな」
「……あの、一つお願いがあるのですが」
ルナからお願いという言葉が出て、リアムは少し身構えた。
「なに?言っとくが無理なことは出来ねえぞ」
「私も一緒に連れて行ってくれませんか?」
「はぁ!?」
いきなりのお願いで少し動揺するリアム。
「いきなりどうした!?初対面の男相手に一緒に連れていけって!」
「共感の加護であなたの感情を読めると言いましたよね?」
ルナは涙を拭きながら話を続ける。
「さっきのあなたの感情は二つありました。一つは心配。これは恐らく妹さん二人に対しての心配ですね。
そしてもう一つは……、悲しみ。ご両親を亡くした悲しみと、一人で旅をする寂しさによる悲しみですね?」
「……加護持ちだかなんだか知んねぇけど、あんたに俺の何がわかんだよ……」
彼女が言ったことは図星だった。
リアムはずっと自分に嘘をついていたが、村を追い出されてからずっと一人で、話し相手が欲しいと思っていた。
しかし、自分について来たら恐らく危険が伴う。
彼女と一緒に行きたい気持ちと、彼女を危険にあわせたくない気持ち。
その二つの気持ちで葛藤する。
考えてる間に、またルナが話しかけてくる。
「現在の感情は嬉しさと心配が混ざってますね。一緒に行きたいと思いつつ、私に危険が及ぶんじゃないかとお考えですか?」
「……加護ってのは恐ろしいもんだな。そんなことまでわかんのかよ」
「ふふっ……。生まれた時に世界から頂く加護ですからね~。
私への心配ならいりません!あなたの邪魔はしませんから……」
「……本当に危険かもしれねぇぞ?」
「覚悟は出来てます!」
共感の加護を持っていない彼でも、この感情は読める。
大きな覚悟。
彼女はそれを持っていた。
「はぁ……、分かったよ。一緒に行こうぜ」
リアムがそう言った瞬間、彼女はパァっと笑顔になった。
「ありがとうございます!実は私も一人で旅をするのがすごく怖くて!」
「俺は用心棒かよ……、ったく。ただ……、いつも俺が守れる訳じゃねぇ。自分の身を守るための力は必要だぞ?」
「分かってます!」
「分かってるならいいや……。よろしくな、ルナ」
「はい!リアムさん!」
「あ~、俺のことは呼び捨てでいいぜ。一緒に旅すんのにさん付けは違和感があっからな」
「分かりました!リアム!」
「そんじゃ明日も早えからとっとと寝るぞ」
「はい。おやすみなさい!」
こうしてルナという一緒に旅する仲間が増えたリアム。
これからの旅の行く末はどうなるのか……。
それは神のみぞ知るのだろう……。