巨蟲列島 蟲姦お断り!【完結】   作:灰色の空

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少し胸糞展開があるかもです。


愚か者に辟易する

 

 

(暑い…湿気が強いな)

 

 額から流れ出る汗を拭い薄暗い山道を歩み続ける。当たりは暗闇に包まれてきており時間帯は夕方を越え夜に差しかかっていた。隣の伊能や後方の織部、先頭にいる箕輪などの姿は俺には見えるが、他の皆には松明が無ければ視認が難しくなってくる頃だろう。

 

 

「ただいま、蟻原君」

 

「おかえり。大丈夫だったか?」

 

「虫に襲われたけど、この通り皆無事だよ」

 

 織部たちが一軒家に帰ってきたのは夕方だった。話を聞くと診療所に向かった物の一度通った道にハンミョウと言う虫が巣を作っており襲われたのだという。だから診療所へ行くのは危ないって話したのに。

 

「地面に隠れる虫で、本当に危なかったよ。このマチェットが無かったら宮園さんは助けれなかった」

 

 寝ぼけながらも渡したマチェットが役に立ったみたいだ。尤もこの島では使わない状況でいた方が良い事なのは言うまでもないのだが、それでも役に立ってくれたのなら幸いである。

 

「それで、その抱えている竹は一体?」

 

「武器。竹は鋭くて刃物として扱いやすいんだ。僕はこっちを使うからこれは返すよ」

 

『…バンブーブレード?』

 

 竹を半分に割った簡易的な竹刀が伊能の武器となるらしい。確かに俺のマチェットでは重くて使いにくいのかも。…ポニーテールな快活少女に竹刀か。何だか似合いすぎて仕方がない。

 

 そんな伊能と無事を喜び合っていたら今後の俺たちの方針としていつの間にか織部さんが言う安全な場所へと移動することが決まったらしい。

 

 そろそろ夜になって来るのに移動って大丈夫なのか?とかこの滞在している一軒家に泊まってから朝方移動するべきなのでは?とか疑問は付き纏うが、悲しいかな。移動を始めようと準備している皆に反対することが出来ないチキンな俺でした。

 

 

(湿気が酷い。そろそろシャワーに入りたい)

 

 汗ばむ体のなんて不快な事か。出来るのならシャワーを浴びてさっぱりしたいがここは虫の支配する島。そんな快適な空間なんて存在しないしある筈もない。尤もそれ以上に気になる事があるのだが。

 

(…不快だ。湿気も酷いが何かざわつく気がする)

 

 松明をもって移動はしているが蟲が近くで狙っている様なそんな気がして酷く不快なのだ。周りが森で暗闇を歩いているからってのもあるんだが…

 

「ねぇ蟻原君」

 

「どうした」

 

「なんか嫌な予感がしない?」

 

 近くにいた伊能が気になるのかしきりに首筋を触っている。何が気になるのか聞けば、先ほどから鳥肌が立って仕方がないのだというのだ。

 

「なんて言うか、ハンミョウに襲われる直前に感じた悪寒に近くて…」

 

 ピリピリとしたものを感じとったらしい伊能。ふむ、となるとここは織部さんに相談した方がいいな。どうせ先生は俺の意見なんて聞こうともしないだろうけど

多人数でごり押せばこっちのもんよ。

 

「ふむ。なら織部さんに聞いてみようか……?」

 

「あれ?織部さんは?」

 

 後ろで殿を務めていたはずの織部さんはいつの間にかいなくなっていた。委員長の後ろを歩いていたはずで、皆に何かあった時すぐに伝えれるように殿にいた織部さんが。

 

 ゾワゾワと背中に鳥肌が立つ、思考が白くなっていく。その織部さんの後ろにいたのは誰だ?

 

「委員長!織部さんは!?」 

 

「え?睦美は私の後ろに…あれ?」

 

 伊能の言葉で委員長がようやく織部さんが居なくなっているという異変に気付く。でも俺の危惧するのはそこじゃない。

 

「先生!睦美が遅れているみたいなので待ってもらえませんでしょうかっ!?」

 

「団体行動がとれない人は置いて行きます。そう言えば碓氷君も居ないようね。全くまたしけこんでいるの。いやらしいっ」

 

 青山が何やら言ってるがもうそんな事はどうでも良かった。

 

「伊能!行くぞ!」

 

「うん!」

 

「あ、おい待て蟻原!」

 

 気が付いた時には伊能を連れて俺は駆け出していた。後からアキラの声が聞こえたとか他の皆がどうとか孤立すれば虫が来るとかもうそんな事はどうでも良かった。

 

 

 

 

 ただ、あの娘が心配だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「睦美ちゃんって言ったっけ~ そんな指をこすり合わせて居ないでオレともっとイイ事しようよぉ~」

 

「んんんーー!!」

 

 碓氷に体を拘束され、木に押し付けられた睦美。口元を手でふさがれ反抗しようにも体格差から上手く体を動かせずにいた。

 

 睦美が湿気の高まった事に注意を促そうとした時碓氷によっていきなり拘束され茂みに連れ込まれ皆からはぐれてしまったのだ。

 

「暴れないでよぉ~~ それとももっと乱暴な方が好みなのかなっ♪」

 

(い、いやぁ!)

 

 体を拘束され碓氷によって着ていた迷彩ジャケットを脱がされスカートを脱がされてしまう。

 

 同世代の女性からしてみれば体力や力はある方だった。だが、今碓氷によるこの強姦行為によって睦美は恐怖に縛られ力を出せないでいた。虫に関しては勇気ある行動が出来た睦美も人に対しては只の少女だったのだ。

 

「ヒュウ♪中々でっかいモン持ってるじゃん コイツは美味そう~」

 

(助けて…千歳ちゃん!伊能さん!)

 

 遂にブラジャーに手を掛けられ、睦美の胸が露わになってしまう。声を出すことも出来ない恐怖に蝕まれる睦美は必死に助けを求めていた。

 

 脳裏に浮かぶの親友である千歳とこの島に来てから仲良くなってきた伊能。友人に助けを求めつつ必死でもがく睦美に碓氷は痺れを切らす。

 

「そんな胸をプルンプルン動かしてっ ははっそんなに欲しいなら一気に行こうかなっ!」

 

(~~~~!!)

 

 下着をずり降ろされ、背筋に鳥肌が立つ。今自分を襲っている男が何をしようとしているのか嫌でもわかってしまう。

 

(助けて…蟻原君!)

  

 絶体絶命の瞬間、届かないと理解しつつも睦美は脳裏に浮かんだ男の名を叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ォォオオオ!!」

 

「うべらっ!?」

 

(…へ?)

 

 その瞬間後ろから声と共に碓氷が吹き飛ばされていくのを見た。情けない悲鳴を上げ乍らゴロゴロと転がる碓氷。何が起きたのかを理解する暇もなく声が掛けられる

 

「睦美!」

 

「織部さん大丈夫!?」

 

 駆けつけてきたのは親友の千歳と伊能の二人だった。肌蹴ている睦美の服装に気が付いたのか伊能は落ちていたジャケットを着せようとする。

 

「ちとせちゃん…いのうさん…」

 

「ひっ!?や、やめてくれぇぇ!!」

  

 涙目になりながら助けに来てくれた友人たちを見た時、悲鳴が聞こえてきた。助けを求める哀れな悲鳴の持ち主は先ほどまで自分を襲っていた碓氷だった。

 

「じょっ冗談だよ!お前なら分かるだろ?」

 

 へたり込みながら木にしがみついて必死に弁解する碓氷。そんな碓氷を追いつめていたのはいつもの明朗さを失くした無表情の蟻原だった。

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 その光景を見た瞬間、蟻原は頭が真っ白になった。この危険な島において幾度も皆を導き救った少女が木に押し付けられ襲われている。襲っていた男は第一印象でいけ好かなかった男であり何をしているかなんて理解するまでもなかった。

 

 

「うべらっ!?」

 

 走ってきた速度のまま飛び蹴りをかます。無様に転がる碓氷がまだ生きていたのが癪になり内心舌打ちをする。

 

(今こんな奴はどうでもいい、織部さんは…―――)

 

 視界に入った少女はジャケットを脱ぎ捨てられスカートも失くしており辛うじてシャツだけしか着ていない状態だった。シャツからのぞかせる少女の素肌。何をされようとしていたのか何が起きようとしていたのか、気付かないほど鈍い蟻原ではない。

 

「はぁ…」

 

 口から出てきたの意外な事に溜息だった。助けに来たことに気が付いたのか地を這うようにして逃げる碓氷に歩みを進める。

 

「じょっ冗談だよ!お前なら分かるだろ?」

 

 蟻原の異様な雰囲気に怖気ついたのか言い訳をし始める碓氷に対しいて蟻原は目の前にいる生き物を人間だとは思わなくなっていた。

 

 人は出来るなら助けるが、人以下の生き物ならその範疇ではない。

 

(…まぁ生きていても面倒か)

 

 無意識に握っていた拳を固めていく。力が入り過ぎているのか血管が浮き出て腕全体が震えだす。怒りは顔に出ることなく、心は嫌になるほど冷めていく。 

 

「ひっ や、やめ」

 

 命乞いすらどうでも良く拳を振り抜く。巨大化した虫たちの甲殻に衝撃を与え、巨大化した蟹のハサミを引きちぎる握力と腕力を持った蟻原の拳は人が当たれば絶命させる必殺の拳だった。

 

 碓氷の顔面に向かって放たれる蟻原の拳。当たれば頭蓋が砕けるその拳は真っ直ぐに獲物を狙う。

 

 

 

 

 

 

 

 

「止めろ 蟻原」

 

 だが、突如割り込んできたアキラによって拳の矛先はへたり込んでいた碓氷の上、木に直撃し、太い幹の半分を砕くことで止まってしまった。

 

「どうして止めるんだ?こんな屑、生きていても仕方ないだろ」

 

 どうして止めてしまうのか、アキラの行動が分からなくなり問いかければ溜息をつかれてしまった。そして向けられた言葉は何処か諭すような響きがあった。

 

「そりゃ俺も同感だ。だがな、殺っちまったらあの娘らが悲しむぞ」

 

 アキラが顎でしゃくった場所にはこちらの方を見て緊張した顔をした三人が居た。睦美は蟻原が止まった事で強張らせた顔を解いて、千歳は緊張気味にいきさつを見ており、伊能は碓氷への嫌悪感で眉根を寄せていた。

 

「虫を殺すなら俺は何も言わねぇけどよ。こんなゴミ野郎でも人を手に掛けたら笑えなくなっちまうぞ」

 

「……そうだな、すまん」

 

 向けられる視線が安堵と緊張だったことでようやく蟻原は握っていた拳を解いた。確かに一度でも人を殺めたら彼女たちとの信頼関係は失われもう二度と笑いあう事は出来ないかもしれない。アキラの間一髪の行動は自分たちの今後を決めた可能性すらあった。

 

「有難うアキラ。お前のお陰でとんでもない事になるところだった」

 

「良いって事よ。全てはこの糞が悪いんだからな」

 

 蟻原の感謝にニヒルに返すとアキラは逃げようと這いつくばっていた碓氷の尻に蹴りを入れ動きを封じ込めた。潰れたような声が出たが気にしないアキラは確かに不良と呼ばれる人間だった。

 

「この糞野郎。俺たちの女に手ぇ出そうってのはどういう了見だコラ!」  

 

「わ、悪かった!オレが悪かったから蹴らないでくれ!」

 

「アァン!?舐めんじゃねぇぞ!」

 

 後ろで碓氷に蹴りをかましているアキラに後は任せ睦美たちの所にやって来る蟻原。睦美はもう着替え終わっており大丈夫の様だった。暴行された後は無く、残ったのは迷彩ジャケットのジッパーが壊れた事ぐらいだろうか。

 

「あー…大丈夫?」

 

 襲われかけた女の子にどう声を掛ければいいのか蟻原は知らない。だから頭を書きようやく出てきた言葉はそんなありふれた言葉だった。

 もっと気の利いた言葉を言えばよかったかと内心で愚痴る蟻原に睦美は襲われたという事実が無かったのではないかと思わせるような凛とした声を出す

 

「私は大丈夫です。それよりも早く先生たちに知らせないとっ」

 

 襲われたというのにそれよりも先に知らせる事があるという睦美に蟻原たちは首を傾げるのだった。 

  

 

 

 

 

「先生お知らせたいことがありますっ!」

 

 何やかんやで待っていた仲間たちと合流した睦美は今のこの状況が危険だという事を知らせようとする。だがそんな睦美に食って掛かる者がいた。

 

「貴方先生にどれだけ迷惑を掛けたと思っているのよ!」

 

 中城の信奉者である青山だった。青山の認識からするといきなり列からはぐれ、移動する先生に対して迷惑を掛けた睦美に声を荒げたのだ。

 

 怒りのままに睦美に平手打ちをしようとする青山。しかしその手は途中で遮られる。

 

「おい、今の俺は気が立ってんだ。あんま不用意なことすると…」

 

 いつの間にか傍に立っていた男蟻原だった。掴まれた腕が言葉と同時に力が籠められる。その万力のような力とたやすくへし折るのではないかと言う冷ややかな声に咄嗟に手を放す。

 

「今は織部さんの話を聞こうじゃないか。注意はそれからでも出来るよな」

 

「っ!」

 

 蟻原の冷めた視線とわずかに匂わせる暴力の雰囲気に青山が一歩引く。蟻原からしてみればきゃんきゃんと煩い青山はとても面倒だったのだ。力の差をちらつかせれば案の定黙ってしまった青山に興味をなくすと睦美に対して話の先を促す。

 

「今このまま進むのは危険ですっ。至急緊急野営をすることを進めます!」

 

 睦美の話では今この湿気が強い状態だと飛翔甲蟲が空を飛び俊脚蟲が餌を求めて走りまわる湿度だというのだ。

 

 俊脚蟲はオサムシやオオゲジなど脚が速く貪欲な食性の虫であり巨大化して居たら自分たちが逃げ切る事は不可能である。だから今はその虫たちを避ける為に先ほどまでいた民家まで行くべきだと織部は提案したのだ。

 

「私たちは貴方の提案の飲んでなけなしの体力を削ってきたのにまた戻れと言うのですか?」

 

「そうよ!貴方が言い出した事なのに何で撤回するのよ!」

 

「先生!睦美の言う事は正確です!ここは睦美の言う通りにしないと危険です!」

 

 中城や青山の言葉に反論するのは千歳や園部など睦美の事を信用する者達。進むべきか戻るべきかで場は騒然としている。

 

 

 そんな中蟻原は遠くの森を気にしていた。

 

「どうしたの蟻原君」

 

「いや、何かあっちの方が光ったような気がした」

 

 蟻原の視線の先を伊能もまた同じように見てみる。すると確かにかすかな光が光ったような気がした。

 

「あれ、何だろう。生存者かな?」

 

「こんな時間にか?巨大化した虫が支配するこの島で呑気に光を照らし歩く馬鹿が生き残っているとでも?」

 

 伊能の言葉に蟻原は否定をする。どう考えてもこの時間に歩くのは危険すぎるとこの島で生き残っている経験からそう判断したのだ。だからあの光を呑気に生き残った生存者だと判断するのは愚かだと判断したのだ。

 

「…だよね。って事はやっぱり生き残っているのは僕達だけか」

 

「そーなる。尤も今現在分裂しかけているけどね」

 

 口論がヒートアップしている連中を一瞥する。議論をするのは構わないが気に入らないのなら放っておけばいいのではないか。そんな事を考えてしまうほどに蟻原の脳内は冷めてしまっていた。

 

(今現在進行形で危険な事に巻き込まれそうな俺達も結構な愚か者だな)

 

 溜息をつきたくなる現状、出来れば危険な事に巻き込まれたくないと考えたが、どうにもそう言う訳にはいかなさそうだった。

 

「他にも生き残っていたんだ! ねぇねぇキミどこから来たの~」

 

 蟻原と伊能が目撃した光に向かって碓氷が駆けだしたのだ。  

 

(…こんな時間に点滅する光。辺りは虫が居る筈で、しかもあの光は俺達の身長より高い場所で光っている)

 

 アレが生存者の光ではないという事に判断する材料はいくらでもある筈だった。だが駆け出した碓氷はそんな事に気が付かず嬉しそうに駆けだしていく。

 

(提灯アンコウ、食虫植物。…なーんてあのゴミじゃ思いつかないよねぇ)

 

 光っているのがどんな物なのか、蟻原はわざわざ口を開いて碓氷に伝える気もない。蟻原にとって助けるのは仲間だけであり、何より自分たちが生き残るうえで最も大切な少女を傷つけようとした碓氷を守る気はさらさらなかった。

 

「駄目っ!逃げてぇぇ!!」

 

 光に近づく碓氷に織部が叫ぶが全ては手遅れだった。駆け寄った碓氷の足元に落ちてきた光。うぞうぞと蠢くそれは虫であることにようやく碓氷は気が付いたのだ。

 

「ぎゃぁあああ!!!」

 

 悲鳴を上げる碓氷に纏わりつく虫たち。その様子を蟻原は無表情で眺めていたのだった… 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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