「ん、んん…私…生きてる?」
「あ、織部さんおはよう」
先生の告白?を聞いてから数分後、ようやく織部さんが目を覚ました。寝ぼけ目でぼんやりしているところ悪いがこの状況を確認してほしい
「蟻原君?ここは…」
「ジグモの巣の中。上を見てみ」
「…!?」
お、物凄い表情になった。こう言っちゃ申し訳ないんだが何でこの子って驚いている顔が一々可愛いんだろうね?
「まさか蜘蛛の保存食になるなんて思わなかったよ。まぁ今すぐ食われないだけマシかな」
「…本来ジグモは保存食を作らないんです」
「…ほえ?」
聞けばジグモ保存食は作らない主義なそうで…って事はもしかしたら俺喰われていた?怖っ!
「恐らく巨大化して餌が不足したから本能で昔の行動が蘇ったんだと思います」
「うぇぇ~ 巨大化したから喰われずに済んだって事か?いやどっちにしろこのままじゃマズい事に変わんないし」
「あの、二人とも、話すのはいいんだけどここから出る手段は見つからないの?」
織部さんと雑談をしていたら横から先生の呆れたような縋る様なそんな声が聞こえてくる。うん、確かに呑気に話している場合じゃないな。
「は、はい。まずは無駄に動かない様にして…今は暗闇で目が慣れないので少し待ってください」
「む。それなら今は動かないで居ようか」
と言った所で果たして脱出のプランは出てくるのだろうか。今この場にいる三人とも手を塞がれているので出来るとしたら体を揺らすぐらいだ。
他に分かっているのは俺達三人は蜘蛛の巣に捕らわれたのではなくジグモのケツと繋がっている糸で拘束されているという事ぐらいか。ここら辺は普通の蜘蛛とは違って地中に巣をつくるジグモの性質によるものだろう。
(…詰んでね?いやいや待て待て。何かほかに使える物とか…)
もちろんではあるが周りには何もない、ジグモの巣なので当たり前ではあるのだけど。他に何か使えるのものが無いか探して考えていると一つ思い当たる物があった。
「ねぇ織部さん」
「はい?何でしょうか」
「蜘蛛の糸って燃えやすい?」
「蜘蛛の糸はタンパク質で出来ているので燃えるとは思いますが…」
良しっ!これなら何とかなりそうだな。あ、でも…はぁ
「何かいい案を見つけたのですか蟻原君」
「あー俺ライターを持っているんですよ。頑丈そうなジッポライターですけど」
「…ライター?まぁなぜ持っているのかは不問にしますが、それでどうするのですか」
「糸を焼き切れないかなって。でも燃やそうにも…手を動かせないから取り出せない」
オマケに燃やしたところでこの不安定な宙づり状態で何ができるのかって案件が残っているのですがね。希望が見え掛けたと思ったら結局打開策にはならなくて物凄く先生が落ち込んでいる。
「はぁ…結局どうにもならないのね」
「ま、まぁ助けが来るのを待ちましょうよ先生」
「……キツク当たった私を助けに来てくれる人なんているのかしら」
「…ドンマイです」
うわっ何かさらに落ち込んでしまった。慰めようにも事実過ぎるので下手に言えないし…青山?キャンキャンと騒ぐだけの子猫ちゃんに何ができるっていうのさ。
「仕方ねぇアキラと伊能に委員長が助けに来るのを待つとしようか」
結局何も出来ないって事が判明しただけでも良しとしないと虚しい。寧ろここは逆に考えて大事な場面で体力を温存するという事で…はぁ。
(蟻原君…聞こえますか?)
と、ここで何やら織部さんからひそひそ声が。何か脱出の方法かと思ったが違った。
(なにか先生の対応が柔らかくなっていませんか?)
先生の事についてでした。確かに今までの言動とは程遠い言い方だったもんね。対応も酷い物だったし織部さんからしてみればいったい何があったのだろうかという事か。
(あーそれについては、まぁ後で説明するよ)
とはいう物の話す気なんて一つも無い、人殺しの話題なんて聞かせていい物じゃないからね、有耶無耶にして誤魔化すのが一番だ。
と、そんな風に割とピンチなのに雑談をしていた時だった。
ババババババババッ
この薄暗い洞穴の中で突如大きな羽音が響いてきたのだ。それは何度か聞いた音で織部さんは直ぐに分かったようだった。
「こんな時にジカバチ!?」
「ひぃぃい!!」
ただでさえ蜘蛛に捕まっているのにジカバチが居るっては厄介だ。とかそんな事を考えていたらふと思い出した。
「あれ?蜘蛛の天敵って…織部さん、先生!蜘蛛が動くぞ!」
「え?キャッ!」
「あぅっ!」
危険を促したと同時だった。体の重心が無理矢理上に引っ張られる感覚。そして景色がどんどん下に流れていくのは…蜘蛛がジカバチに驚いて巣から逃げ出そうとしているのだ。
蜘蛛の天敵は蜂。どこかで聞いた話だっただが、まさかこんな所で実感するなんて。
「うぉわぁあああ!!」
ジェットコースターが遊具に感じるほどの勢いと速さで体を持ち上げられる俺達。恐怖に陥ったジグモが巣から逃げようとすれば俺たちの一緒に引っ張られる。
(外か!?ああ、でも体が動かないんじゃ意味がねぇ!)
突然の開けた視界に広がるのは青空と地面。そして俺達がつかまった石垣のある広場。それを認識できたのは一瞬でジグモが石垣を伝って地面へと降りれば糸に引きずられている俺達もかなり乱暴に運ばれているわけで。
「ぐっ!」
「うわっ」
「キャッ!」
石垣に何度か叩きつけられ、ようやく待望の地面へと叩きつけられる。体を何度か打ったがそれでもまだ生きているのは幸運と見るべきか。
「つぅ…2人共…大丈夫か」
「うぅ…何とか」
「痛い…体が裂けそう」
二人ともまだ生きているのは良かった。だけどこの状況は一体?地面に横たわっている状態で空を確認するがジカバチの姿は見られない。
「そ…外よっ!早く逃げなきゃ」
「先生っ動かないでくださいっ」
「安易に動けばって同じことを何度も言わせないでくださいよっ」
外に出られた安堵感と恐怖から逃れたい一心でか先生がじたばた動こうとするので織部さんから生死の言葉が入る。つられて俺も結構きつい言葉を吐いてしまえば、先生はハッとした顔で動きを止めた。
「うぅぅう…もう外にいるのにぃ…」
「大丈夫ですって、あと少しの辛抱です」
苦悶の声をだす先生を何とかして宥める。気持ちは分かる、外へ出れたのに抜け出せないこの状況がもどかしく感じるのは俺も同じなのだ。
「蟻原君!空にはジカバチが飛翔して居ません、羽音も聞こえないんです」
「ええ?でも確かに羽音は聞こえたぞ?地面に降りているとか」
「いいえ、ジカバチは上空から獲物を狙います。降りるのは巣穴と毒針を使う時だけ。明らかに何かがおかしいです」
確かに、委員長を捕まえた時やジカバチの巣の時ぐらいしか地面に居なかった気がするが…何が起きた?
(ジカバチの羽音でジグモは巣から出た。しかし肝心のジカバチはいない。…何かが起きている。
状況が一気に変わり、混乱する中で必死に考えをまとめる。そもそもあのままではいずれ喰われていたことを考えると助かったのは事実で、そしてそんな事が起こせるのなんて…
(誰かが助けに来てくれた?それぐらいしか思いつかん)
思い浮かぶのはこちらの安否を気遣う仲間達。淡い希望に縋るのは愚かだとは思いつつもどうしてのそんな期待が膨らんでいく
バババババッ!!
「うわっ!」
「羽音が地面から!?」
また蜘蛛に引きづりまわされながらも聞こえたジカバチの羽音。今度の羽音は近くからのように感じる。何故か、答えなんて一つしかない
「ジグモがいつもと違う場所から聞こえる音に戸惑っている?」
「それは…分かりましたから…どうやったら逃げれるんですか織部さん」
織部さんはジグモの様子に驚き、先生は背中が痛むのか辛そうだ。そんな中俺は森の中に見えた人影をみて思わず安堵の息を吐いてしまった。
「もう大丈夫だって事ですよ、二人とも」
こちらに向かって走り出すポニーテール。心境を表しているのか物凄い勢いでぶんぶんと跳ね回るその髪と必死になってこっちにやって来るその姿に嬉しくて涙が出そうになった。
「蟻原君!」
「ちょっ!?ああもぅ皆、助けに着たっす」
「先生ぇ!」
現れたのは三人。伊能と甲斐と青山だった。
「良かった、本当に無事でよかった……!」
勢いよく俺の所にやって来るとすぐに異常が無いかを見回し、安堵の表情でこれである。嬉しいのはこっちも同じだが流石に涙を見せる訳にはいかない。無理矢理涙を引っ込める。
「ははっそう簡単に死ぬわけにはいかなくてね」
「僕もそう思ってたよ、蟻原君はそう簡単に死なないって」
こちらに向けられる全幅の信頼がむず痒い。嬉しい物の満面の笑みで女の子にこういわれると弱いのだ。そんな俺の気持ちには気付かずに渡したマチェットを鞘からすらりと抜き、こちらに刃を向ける。一種のホラーに見えるがいたしかたない。
「動かないでね蟻原君。多分これかなり切れ味いいから」
「お、おう。と、ちょいと待った、俺のポッケを探ってくれ。ライターがあるから」
「ああ、なるほどちょっと待っててね」
言いたいことがすぐに伝わるって素晴らしい。直ぐに俺のジャケットの中からライターを探し出す伊能。かがむためにこちらに密着するような距離でふと、伊能の、女の子の匂いが鼻腔をくすぐる。
(あ、甘い。そして何とも柔らか…じゃなくて!)
こちらから離れ俺のポッケから取り出したジッポライターでマチェットを炙る伊能に青少年染みた動揺を悟られない様に周囲を確認する。
「携帯に録音して置いた羽音で飛び出してくれて助かったッス」
甲斐は荷物に合ったライターで織部さんの糸を焼き切ろうとしていた。しかし携帯?って事はジカバチの羽音で録音をして…何とまぁ甲斐の手際の良さに驚くばかりである。本当に助かった
「先生ぇ…必ず助けますからね」
「あ、青山さん…有難う」
こちらの方では青山が泣きながらライターで先生の体に巻きつかれた糸を焼こうとしていた。この調子なら問題なさそうか?
「随分とこのライター火力が強いよね。一体どこの製品?」
「さぁわかんね。俺が唯一持っていた物の一つだからな」
「じゃあこれに蟻原君の正体の鍵があったりして。っとこれで良し」
意外と火力が強い俺のジッポライターでマチェットを炙った伊能はかなり手際よく、俺の体に巻かれていた糸を切り燃やしていく。
「自家製ヒートナイフの威力は良いっすね」
甲斐の方もカッターナイフをライターで炙って織部さんの糸を切り離していく。
このまま順調に助かる。その筈だった。
グイッ!
「!?ジグモにばれました!急いでください!」
「糸が引っ張られる!?」
それは糸を燃やした匂いでか知らないがジグモが異常に気が付いた行動だった。どかへ逃げようとするジグモが動くのならそのジグモに引っ張られる俺達も動く訳で。
「あ、先生!」
俺と織部さんはほぼ間一髪だった。刃物を熱したことで素早く糸を切り離すことが出来たがライターで焼くしかできなかった青山は糸を切り離すことが出来なかったのだ。
「ひぃ!?」
ジグモに引っ張られる先生、その顔は恐怖でぐちゃぐちゃに歪んでいる。その体には糸は焼き切れていない所がまだあり、体に食い込んでいく。
(あのままじゃマズい!)
ジグモの糸は強靭だ。その頑丈さは一センチの太さがあればジャンボジェットを持ち上げるほど。
その糸を物凄い力で引っ張ると巻き付けられた人間は一体どうなる?
直ぐに体を起こし、伊能を見れば、こちらに刃を熱したマチェットを投げてきた。その目には強い信頼、裏切る訳にはいかない。
「先生を放しなさい!」
青山が携帯をジグモに向ける。先ほどの甲斐の言葉が脳内で浮かぶ。先生が引っ張られる。
録音したジカバチの羽音
蜘蛛の天敵は蜂
逃げ惑う蜘蛛
強靭な蜘蛛の糸
糸が巻きつかれた先生
ピースが頭の中に浮かび上がり、言葉に出てくる前に何が起きるかを予測してしまう。
(ボンレスの次はっ!サイコロかよッ!)
全てがゆっくりと流れる様な時間の中でジカバチの羽音が青山の携帯から鳴り響き織部さんが絶叫してそれをやめさせようとして、蜘蛛のスピードが上がって悲鳴を上げる先生がいて
全てがゆっくりと流れる中、俺は渡されたマチェットを振りかぶって投げていた。
「ああああ!!!」
咆哮と共に投げたマチェットは一直線に飛んでいき
ザクッ!
先生のほぼ頭上に突き刺さり、蜘蛛と先生を繋いでいた糸を焼き切ったのだった。
「すっげぇ…何つータイミングで」
「うぉぉぉおお!」
甲斐の言葉を最後まで聞くつもりもなく全速力で先生の元へと向かう。ジグモは未だ混乱の真っ最中でそこら辺をウロウロとしているが眼中になかった。
「先生!大丈夫ですかっ!」
「いた…い…助けて…」
苦痛で顔を歪ませているが、体に引き裂かれた後は無い。滅茶苦茶に糸が巻きつかれて体中が鬱血がしているが、死んではいない。糸は後で外せばいい、今はひとまずこの場を離れなければ。
「大丈夫ですからね。俺が安全な所まで運びますから」
「うぅ…」
先生の頭のてっぺんスレスレで深々と刺さっていたマチェットを腰に引っ掛け、先生を持ち上げる。
(…仕方なし、か)
…糸を外す手間が無いため仕方ないと頭の中ではわかってはいるものの、M字開脚をしている先生の身体を持つというのは辛い。手をわき腹に挟んで腹をもってそのまま運ぶ。
(これって背面…ああ、もうどうでもいいやこの人が無事なら)
…担ぎ上げるとかそんな選択肢が頭に浮かぶがもはやどうでも良くなった。先生が無事ならこの際どうだっていいのだ。
「蟻原君、こっちです」
織部さんの声がする方へ向かえば茂みの中で4人は隠れていた。近づくと青山がいの一番に出てきて先生に駆け寄ってきた。
「先生は!?無事なの!?」
「あったりまえだよこの馬鹿、足引っ張りやがって」
丁重に先生を降ろしながら自分から物凄い悪態が口から出てくる。どうやら青山が余計な事をしでかしたのがそうと腹に据えているらしい。
「わ、私だって先生を助けようとして…」
そう言う青山の目には涙が浮かんでおり、その頬は赤く腫れていた。それはもう見事なほどに…殴られたような跡だった。
「ああ、これ?余計な事をしたから殴って置いたんだ」
「伊能が?どうして?」
俺の言葉には答えず伊能は先生の容体を見ていた。甲斐から受け取ったカッターで糸を切っている伊能は…結構怒っているようだった。甲斐に視線を向けるが物凄く微妙な顔をされた。何かあったんだろうか?
そんな俺の心配は他所に伊能は先生の糸をすべて切り終えるとふぅと息を吐いた。その顔は依然と変わらない顔だった。
「うん、鬱血が酷いけど安静にさせて冷やせば平気だよ」
「先生~」
縋りついて泣きじゃくる青山に取りあえずは一安心って所だろうか。後の処置は白川さんに任せるとして、まだ重要な案件が残っている。
「そりゃ良かったっす。んであのジグモどうするんっすか」
甲斐の言葉で俺と織部さん伊能が石垣に隠れるようにして震えているジグモを見る。随分と落ち着きがないその姿は一見可哀想ではあるが当事者としてみればかなり危険な存在だ。
「…反撃します。協力をお願いできませんか」
ここで織部さんが策を思いついたのかいつの間にか外れていた帽子をかぶって宣言した。うん、織部さんが思いついたことなら心配はいらない。
「分かった、それじゃ聞かせて「それ僕がやるよ」伊能?」
俺の声に被せてきたのは伊能だった。何故と見れば、呆れた顔をされてしまった。
「蟻原君、足痛むんでしょ」
「む」
「隠しても無駄だよ。君なら平気かもしれなくても見ているこっちは心配で仕方がないんだから」
隠していたつもりだったが確かに足の痛みは引いてはいない。先ほどは先生を助けるのに夢中だったが、そう言われては…返す言葉が無い。
「織部さん、僕がやるけど一人で問題無い?」
「はい大丈夫です。伊能さんが行けるのなら問題ありません」
頷きあう女子たちのなんと心強い事だろうか。俺も手伝おうかと思ったが、首を振られてしまった。
「蟻原君はそこにいる人たちを守ってあげて」
こう言われてしまえばもはや何も言えまい。…つくづく女性に弱い俺である。
いくつかの打ち合わせをした二人はそのままジグモのいる広場へ。何だろうあの背中からは途方もない安心感が漂うのは。
「…なんかあったの?」
織部さんが石垣に張り付き、伊能はジグモの囮を決行中、気が付いたら甲斐に向かって俺はそんな事を喋っていた。
「話している場合っすか?」
「あの二人なら平気だ。それで、何もなかったのか?」
石垣をスイスイと昇っていく織部さんに、巨体のジグモを小回りを利かして翻弄する伊能。言っちゃ悪いが不安とか心配とかそんな物が一切浮かばないのだ。だからって雑談をするのもどうかはと思うけどね。
「…蟻原たちを助けに行くっていうときに、ちょっとゴタゴタがあって俺と伊能ちゃんは抜けてきたんすよ」
ゴタゴタ…まぁ何となく何が起きたかは想像がつく。だからアキラが居ないのもそのためだろう。
「それで、その時青山が手伝いたいってやってきて」
チラリと青山を見れば先生の傍から離れておらず、ずっと先生に対して小声で謝っていた。
「他の奴らは動いてくれない、あの薄情者達は放っておいて助けに行きましょうって。それで伊能ちゃんイラッと来たのか邪魔したら殺すって脅して…」
…正直想像つきません。まぁ伊能の事だから今まで散々高圧的に出た癖に肝心なところで助けを乞うのが嫌になったんだろう。気持ちはまぁ分からんでもない。
「先生を誰も助けにいかないのは威張り散らした青山の責任だ、それが窮地に陥ったら助けに行こうだなんて虫が良すぎる、ってかんじっす。あん時はマジで怖かったす」
ああ、だから甲斐の語尾が何か可笑しなことになってんのか。まぁ後で伊能は後でフォローしておくか。
伊能がジグモを石垣へとおびき寄せ、織部さんがジグモの背中へとダイブする。上手くジグモに捕まった織部さんは背中で何やらゴソゴソとしていた。虫のロデオで結構怖いはずなのに流石は織部さんか
「ふぅ、上手くいったようだね」
役目を終えこちらに帰ってきた伊能に手を上げる。そのまま俺の横に並んだので頭をガシガシと撫でる
「わっ 何?いきなりどうしたの?」
「助けてに来てくれて有難う。本当にうれしかった」
「…そんなの当たり前じゃん」
照れたような伊能に構わず頭を撫で繰り回す。労いと感謝とその他もろもろを込めて
「だから、あんまり変な事は言わないでくれ。心配になる」
「…うん」
言いたいことがすぐに伝わるって本当に素晴らしい。そのまま三人で織部さんの無事を見守る。
織部さんは、どうやらジグモの糸で先端に輪っかを作っていたみたいで、その即席ロープを投げればジグモが自分の糸で巻き取られ拘束されてしまう。
「すごい…あのジグモが簡単に身動きが取れなくなっている」
「あれ、二重八時結びだ。なるほどね」
そのまま織部さんは自分の強靭な糸で身動きが出来ないジグモの腹へと移動していく。それはまるでボルダリングの様で…
「…織部さん握力強すぎない?」
「…だよね」
腹に移動すれば流石のジグモも気づく訳で織部さんを自分の鋏角で攻撃しようとして
「睦美ちゃん危ないっ!」
甲斐の声が聞こえたかどうか、もう少しで当たりそうなところを手を放し地面に落ちる事で回避する織部さん。
そのまま鋏角はジグモの腹へと向かっていき
ボグゥッ!
「あ、自害しちゃった」
自分の腹を自分で切り裂いてジグモはあっけなくその命を散らしてしまったのだ。
「ジグモは地域によってはセップクグモと呼ばれています。ジグモは自分の腹に触角が触れてしまうと自らの腹部を切り裂いてしまうんです」
「ああ、それでセップクグモね」
「私、それを知ってて酷い事をしてしまいました…」
地面に落ちた織部さんは背中にしょっているゴマ夫さんがクッションになったことで無傷だったのだ。だがそれとは裏腹にしょんぼりとしているその姿は物悲しい。そもそも彼女は虫を殺す事に否定的だったのだ。
「……織部さんのお陰で無事だった。有難う」
「……」
ここで気の利いた言葉の一つでも言えたらよかったのだが、俺の口から出たのは月並みの言葉だった。つくづく俺はこういうのは駄目みたいだ。
「まぁまぁしんみりするのはいいけどさっさと上の連中と合流しようっしょ」
甲斐の言う通り、取りあえず危機は終わったのだ。上の連中と合流するため階段を上る。
意外と高さがあったその階段の先にあったのを見て俺達は絶句するのであった
「よう、割と遅かったじゃねぇか」
「アキラ…?お前、その大量の虫の死骸は何なんだ」
所々怪我をしたのか細かい傷が目立つアキラと、その横で肩で息をしている上條と箕輪。
その三人を囲むように大量に虫の死骸が俺達を出向かえたのであった。
次回は原作で一番書きたかった場面です。
気長にお待ちくださいませ~
一言評価をが欲しいくせにコメントが出来ないようになってました。一応できるようにしておいたので一言くれればうれしいです。