巨蟲列島 蟲姦お断り!【完結】   作:灰色の空

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ある意味日常回。

目標としていたお気に入り500人と評価が30人行きました!
これも皆様のおかげです、本当にありがとうございます!
これからもよろしくお願いいたします


つかの間の休息

「はぁ~ この数を倒したって?何つーかお前ら滅茶苦茶だな」

 

「「「お前にだけは言われたくない」」」

 

 男三人、かなりの数の虫を叩き殺したことに関心と呆れの声をだしたら、ハモりながら反論して来た。なんでや!

 

「睦美!」

 

「千歳ちゃん!」

 

 そんな俺達の隣では織部さんと委員長がお互い涙を流して抱きしめ合ってた。まぁ普通に考えて蜘蛛に捕まっていたらもう終わりだと思うもんね。ほんっと仲良きことは美しきかな。

 

「うげっ!?何だこの惨状は!?」

 

「皆無事だったのか…」

 

 小さな社から出てきた神野は広場の惨状に顔を顰めておりキャプテンは俺たちの姿を見てホッとしている。後の方には扉から顔をのぞかせて様子を伺っている者が数名。

 

「って、それどころではありませんでした。皆さん、今からこの社に虫が来ない様に準備をするので手伝ってください」

 

「うん?安全地帯って話じゃなかったの?」

 

「まだです。アカマツの根を燃やして煙を出すまでは安全とは言いません。他にも香炭も燃やさないと…」

 

 どうやらこの社が安全地帯となるには手順が必要だったらしい。ぜんッぜん知らなかった!

 

「…チッ おい虫女、そう言う事は真っ先に言えよ。おかげで死にかけたじゃねぇか」

 

「は、はい。…すみません」

 

 上條の吐き捨てるような声に織部さんがしょんぼりしながら謝るが…あれ?言葉ほど上條は怒ってはいない様に見えるぞ?

 

「テメェしかそういうのは分からねぇんだ。言いたいことがあるならはっきり言え、じゃなきゃ皆死んじまうぞ」

 

「う、分かりました…気を付けます」

 

 謝る織部さんを視界に居れる事無く上條は立ち上がると、社に向かって歩き始めた。疲れているのか、だいぶ面倒そうに歩いているのだが、…気のせいかな態度にトゲが少なくってなっている気がする。何かあったんだろうか?

 

「色々とあったのさ」

 

「色々?」

 

「まぁな」

 

 アキラが意味深に笑うが…まぁ俺がつかまっている間に色々とあったんだろう。  

 

 

 

「おい、お前ら!ここに虫が来ない様にするからさっさと出て来い!」

 

 上條が社に向かって大声を出せば、出てくる無事だった生存者たち。あ、白川さんは真っ先にこっちにやってきた

 

「蟻原君!怪我は!?大丈夫ですか!」

 

「俺は大丈夫。それより先生を見てくれ、結構痛そうだ」

 

「はい!」

 

 医療道具の入ったバッグを持って先生へと向かう白川さん。先生に対して容体を伺って青山にも何やら確認している、うんこれで先生は大丈夫だろう。

 

 他の皆は上條から檄を飛ばされながらも作業に入っていく。その様子を見ていると…なんだかうれしくなって頬が緩む。

 

「どうしたの、そんなに嬉しそうで」

 

 そんな俺が気になったのか伊能が話しかけてくるが、俺の笑みは収まらない。分かるだろうか、このワクワクしたのと安堵感が混じったような気持ちが

 

「うーん。ありきたりだけど…皆が無事でよかったなって」

 

 蜘蛛に捕まって、小さな大量の虫に襲われて…安全地帯のはずなのに危機は合って、それでも皆は生きている。

 

「そうだね。うん、本当によかった」

 

 

 伊能の笑う顔につられて頷く、本当にありきたりだが、皆が無事で良かった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいそこ!さっさと手伝え!」

 

「あ、ごめーん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アカマツの根の煙は忌避剤となって虫を追い払うんです」

 

「煙自体、虫が嫌がるってのもあるからね」

 

 織部さんの指示に従い、社(お堂?)の床下にあったアカマツの根を乾燥して作られた松明を燻して広場を煙で散布しながらアカマツの説明を聞いていた。

 

 何でも赤松の根には昆虫が嫌がる成分が大量に入っており、その煙には大量の脂が含まれるのだとか。気化した脂が触覚や呼吸の為の器官に付着するのを虫は嫌がり、それで近寄って来なくなるとも。

 

「アカマツの根はお盆の迎え火や送り火にも使われていたとも聞きます」

 

「ふむふむ、じゃあ、あのお堂の香炭って奴は?」

 

「アレにも消臭のほかに忌避剤の成分が入っています。あの煙が室内に充満すればあの場には虫は寄ってきません」

 

「ほえー。そう言えば御寺には虫がいるって感じがしないのはそう言う工夫がされているからなのか」

 

 織部さんによるとお寺には葬儀に使うお線香やお香、防虫効果のある菊に毒を持つ彼岸花が植えられていることが多いのだと。

 

「迎え火や送り火として使う赤松の根、これらの煙を身にまとう習慣やまき塩などは遺体に虫や小動物が寄り付かない様に使用されている物なんです」

 

「なるほど…先人の知恵って奴ですな」

 

 蚊取り線香が無かった時代はこうやって虫を追い払っていたって事か。つくづく世の中には知らない事が多い。

 

「はい、他にも不謹慎ですが日持ちのするお供え物や実をつける樹木が植えてあることも多いんです」

 

「食糧不足はこれで補えるってか?あーでも…お供え物は最終手段にしときましょうね」

 

「……はい」

 

 お供え物に手を出すことに忌避感は無いが、絶賛一名それで死にかけた実績があるので…当面は持ってきた食料を使ってだましだまし食いつなぎましょう。

 

 

「なぁ、睦美。あれって、船じゃないか」

 

 そんな風に安全地帯と呼ばれる寺?社?について織部さんと話していると虫の死骸の掃除をしていたキャプテンが織部さんを呼んできた。

 

「む?助かりたいがために生み出した幻覚じゃなくて?」

 

「あのなぁ蟻原、私は正気だ。何だったら蟻原も見てくれ」

 

 と言う訳でキャプテンが指し示す海の方角を見ればそこにはなんと船が!大きさは結構のデカさで…アレが救助艇か?

 

「…マジか」

 

 と、一言呟いていると、他の皆も気が付いたようで、

 

「助けよ!助けが来たんだわ!」

 

「これで私達帰れるのね…」

 

 次々と皆が駆けつけ思い思いに叫ぶ、中には泣いている子も。まぁようやく見える形で希望が見えたのだ、泣きたくなるもの当然だ。

 

「なら目印となる物を作らないと…なんかあったか?」

 

「松明とかを組み立てて焚火を作ろう、作り方は僕が知ってるから手伝って」

 

 伊能の自信満々な顔で今度はキャンプファイヤーを作る事になった。煙を上げれば流石に分かるよね?

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

「来ませんね…どうしたのかな」

 

「きっと来る途中なのよ」

 

 でっかい焚火を作ってから、一時間後。まだ救助がやってくる気配は無かった、というより船が近づいてくる気配が無いと言うべきか。少し不安そうな鈴木さんや宮園さんがしょんぼりとしている。

 

「どう思う織部さん。行くべきか待つべきか」

 

「…上陸地点からは結構距離がありますね」

 

 今の俺たちの場所は山の高台の社にいる。海とは結構な距離があり救助の船に近づくには時間が掛かりそうだ。

 

 織部さんに意見を聞くが考え込む。ふむ、となると他にも意見を聞いた方がいいか。

 

「伊能はどう思う?」

 

「…今行くのは止めた方が良いかな。皆の体力が心配だね」

 

「ふむ、アキラは」

 

「さっさと向かいたいってのが本音だが…今の俺たちにできんのか?」

 

 伊能もアキラも俺と同じ意見だった。正直向かいたいのが本音でさっさと安全な所に行きたいのだが色々と懸念事項がある為向かうのは得策ではないような気がするのだ。

 

「…蟻原君はどう思いますか」

 

「明日、早朝になってから全力で向かうべきかな。今日ずっと山登りしてきたんだ、疲れているし折角の安全地帯を作ったんだからそこでぐっすり休んだ方がいい」

 

 疲れが残っている中で果たして俺達は無事に海辺までたどり着けるのだろうか。考えるまでもなく無理だと思う。体の疲れは思わぬところで足を引っ張る。例え希望がすぐそこまであってもすぐに飛びつくのは…やめた方がいいよな。

 

「千歳ちゃんはどう思う?」

 

「そうね。…夜になっても助けが来なかったら明朝出発。これならどう?」

 

「分かりました。それならその方針で最善のプランを考えます」

 

 結局話し合いの結果、明日日が昇ってから出発と言う事になった。本当なら夜明け前に動きたいところだが階段の下にはジグモの死骸がある。肉食蟲が集まっていることを考えると視界が開けた方がいいという事だ。

 

「それじゃ、明日まではゆっくり休むとしよう」

 

 と言う事で移動までは休むことになった。今の時間帯は大体四時ごろか。出来る限り体を休ませて置かないとね。

 

 ちなみにだが、先生は今後の行動方針には異を唱える事無かった。怪我をしているのもあるがもう反論や威圧をすることもする必要がなくなったというのが大きいのだろう。

 青山?先生がそばにいるので噛みついてくることは無いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つー訳で、衣服の調達をしたいと思います」

 

 と言う事で、キャンプファイアーの火の番など細かい所を決めた後、お堂で休んでいる皆に向かって俺はそんなことを話していた。

 

「…だな。」

「あー」

「ええっと私たちの服を分ければ?」

「でも、着ている物なんてこれぐらいだし」

 

 ほぼ全員が俺の言いたいことが伝わったのかあーだこーだと話し始める。うん、以心伝心って気持ちが良いですな。

 

 そんなある意味和やかな輪に入れない人が二人。 

 

「せ、先生私の服を貸してあげますから!だから泣かないでくださいっ!」

「……う、うぅ…見ないでぇ」

 

 視界の端に映るは一応誰かの上着を貸してもらっているとはいえパンツ一枚となってしまった先生。その傍では必死で青山が先制を慰めている。

 

 

 服の調達なんて馬鹿な事を言ったが、動機は物凄く単純な話で先生の衣服が物凄くヤバいのだ。

 

 本来なら先生は黒のシックなスカートなどを履いていたが、ジグモによってスカートは破れて無くなってしまった。ジグモの巣にいたときは一応上の方もまだあったのだが、悲惨な事にジグモに引きずられていた時に摩擦で背中の方がずたずたに破れてしまったのだ。お陰で先生の衣服はほぼ無い状態になってしまった。

 

 お陰でこのお堂に入った時にはもはやパンツ一枚しか着るものが無く(なんとブラジャーまでもが使いものにならなくなってしまった!)部屋の隅っこでしくしくと泣いている現状だった。

 

「あー 先生、大丈夫ですよ。俺達がなんかいい案を出しますので」

「蟻原ァ!アンタ鼻の下を伸ばして先生に近づくんじゃないわよ!シッシッ!」

 

 一応元気づけようとはしているのだが、何を勘違いしているのか青山が威嚇してくる。別いいんだけど何故そうなるのだろうか?   

 

 とにかく今の先生は、裸に上着一枚と言う状況だ。環境的にも蟲的にも危険な状況で、何より目に危険だ。妙齢の女性とは言え上着一枚の下には包帯に巻かれた(白川さんが治療して巻いていた)柔肌がある体があるのだ。高校生的には非常に危険である!

 

「家探しならぬ、お寺探し?社探し?」

「良いからさっさと何か探せよ。茉莉花先生っ!俺が何とかするッスよ!」

 

 上條にド突かれながら社に何かイイものが無いか探索する。物置とか、神棚の下とか…何か衣服になるものがあればいいんだけど。 

 

「先生、やっぱり私の制服を着てください!私は裸になっても良いですからそのままだと」

 

「青山さん…有難う。でもね、それはいけないわ。貴方はそのまま服を着ていなさい。私はこのままで大丈夫だから…」

 

 脱ぎ掛けた青山を泣き笑いのような顔で止める先生。一見、先生思いの少女が自分を顧みず心配し、先生の方はその気持ちを有り難く想いながらも止めるという大変美談のようなのだが…

 

(先生が青山の制服を着たら完全にイメクラになるよな…)

 

 妙齢の女性が高校生の制服を着る。言っちゃぁ何だが、完全にそっちの店で有りそうな事柄である。ってか先生に制服はキツイっす。

 

「む?これは…ぬぉ!?」

 

 と、割と阿保な事を考えていたら箕輪が手に持った白い布を見て何やら焦った声を出す。見つかったのかと思い近づくと箕輪はその巨体で見つけた物を背中に隠してしまった。

 

「…何を隠して、つか何を見つけたんだ?」

 

「こ、これは、イカン!」

 

「いや、何がだよ」

 

 冷や汗をびっしょりと流して何かを隠す箕輪。非常に気になるんだけど…そんな事を俺以外も考えたのか、箕輪に気付かれない様に動く人影が一つ。

 

「何を隠してんだっと!」

 

「しまったぁ!」

 

 箕輪の背中に忍び寄っいたのは上條だった。何やら白い衣服のような物を掲げて勝利を確信する上条と狼狽している箕輪がかなり対照的だ。つかマジで何を見つけたんだ?

 

「へぇ、コイツは…袴?」

 

「いや、それ白と赤だから…え?巫女服?」

 

 

 上条が手にしたものを一緒に物色していると、それが和服…つまり巫女服であることが判明した。紅い袴と白い小袖がが実に清潔感を漂わせる。もしかして誰も使っていないものだろうか?

 

「おーい先生~服を見つけたッスよ~」

 

「あ、有難う上條君…」

 

「あんの馬鹿、せめて考えて…」

 

 手に持った巫女服を嬉しそうに先生に渡す上条に対して隣の箕輪は手で顔を覆っていた。

 

「あの巫女服がどったの?そりゃお寺?社?に巫女服があるのは違和感かもしれないけど誰かが置いてたんだろ」

 

「…あんなものを置いておくのはどうかと思う」

 

 物凄い溜息を吐く箕輪に首を傾げていると、着替え終わった先生が見えた。先ほどまでは黒い印象だった先生が白く清潔な巫女服を着ると印象が変わって…え?

 

「こ、これっって!」

 

「ちょっ!?上條アンタなんてもん先生に渡してんの!」

 

 先生が顔を赤くし、着がえるのを手伝っていた青山が怒鳴る。それもその筈、その巫女服は只の巫女服では無かったのだ。

 

「うっわ~ 先生エロ過ぎ」

 

 三浦の言葉通り、それは巫女服と言うには余りにも扇情的だった。何せ肩から脇までクッパリと穴が開いているのだ。っていうか脇腹まで見えている。…脇巫女?

 

「どうしてこんなもん持ってくんのよ!先生に恥を掻かせて、もっとましなのを探しなさいよ!」

 

「知らねぇよ!俺は箕輪が持っていたのを渡しただけだっつうの!」

 

「箕輪ァ!アンタ何を考えているのよ!」

 

「だから隠そうとしたんだよ…」

 

 がなり立て上條と箕輪に噛みついている青山は放っておくとして…恥ずかしそうに自身の体を抱きしめる先生。

 

「ま、まさかこの年になってこんな服を着る羽目になるなんて…しかも若い子にみられるなんて」

 

「えーっと えーっと、に、似合いますよ先生」

 

「ほら、袴の方は意外と…あ、これ腰やお尻が見えるなんかエッチ奴だ」

 

 プルプルと震えている先生を何とかして鈴木さんと同じようにして褒めようとしたが腰の方が意外とスケベな事になってることに気が付いてしまった宮園さん。駄目だこりゃ。

 

 それもそのはず見ようによっては横乳が見え、腰のラインがくっきりと見えてしまうのだ。もはやこれはイメクラでは?誰だよこんな場所にこんなエロいの置いていた奴!

 

「まぁまぁ仕方ないですよ先生。その上に何か羽織っていれば問題ないですってば」

   

「そうかしら?…そうだと思いたいのだけれど」

 

「取りあえず俺の上着を貸しますので、どうぞ」

 

 いくら巫女服がスケベ仕様だとしてもそこから上着を着れば問題ないはず。そう考えて俺のジャケットを渡したのだが…

 

「…うっ! これ相当重いわよ蟻原君?」

 

 受け取って訝しんだ先生。取りあえず着てみたら物凄い顔で重いと言い出した。おかしいな、そこまでの重さではないと思うのだが…一体素材は何で出来ているんだ?ホタルの幼虫の噛みつきも防いでくれたし

 

「ああもう本当に役に立たない男子達ね!罰として上條アンタの上着を貸しなさいよっ!」

 

「あぁん!?何でテメェに命令されなきゃならねぇんだ!」

 

「ふ、二人とも落ち着いて。私はその、我慢すれば平気だから…」

 

 キレる青山に反発する上條。でも確かにこの中では丈夫そうな上着を持っているの上條だけなので…口論を始めそうになった2人をなだめる先生、その顔が恥じらいなのかうっすらと赤いのを見て、上條は頭をぼりぼりと掻くと上着を脱ぎだした。

 

「…俺の気に入ってる一張羅っすけど先生なら良いっすよ」

 

「良いの?」

 

「そこの阿保にギャーギャー騒がれたくないんで。どーぞ」

 

 ぶっきらぼうに渡した上着を先生はやはり恥ずかしかったのかいそいそと着込む。これで多少の露出は無くなった訳で…うん一件落着ですな。

 

 

 

「しかし、何であんなもんがあったんだ?」

 

「…誰かの趣味っしょ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…温かいご飯が食べたいですわ」

 

 時間帯は大体7時ごろか、やっぱり救助艇が動くことは無く救助隊がくる気配は微塵もなく、明朝に出発することになった俺達は早めの食事をとる事となった。

 

「仕方ないっさ。お湯もなにも使えないんだから」

 

「むぅ分かってますわよ」

 

 隣で愚痴ったお嬢様の桃崎を宥めながらも唯一の食糧であるカロリーメイトをかじる。味は悪くはないがいささか温かさが足りない。 

 

(皆も渋々と言った感じだよな)

 

 診療所で手に入り持ってきた食料品はカロリーメイトなど非常食品だけだった。味付けのあるカレーやカップ麺は匂いが出てしまうので持ってくることは出来ず、仕方なしに比較的に匂いのしない非常食品を持ってきたのだ。

 

(せめて温かいもんが食えたら士気も上がるんだが…)

 

 こんな状況だからこそ気力が回復する温かいものが食べたいのだが、俺達は地震や台風などの自然災害に陥った訳ではなく、巨大化した虫に襲われているのだ。

 

 迂闊な行動が死を招くのなら織部さんの言う事は守らないと。皆もそれを重々承知しているのか不満は出てくるが仕方ないと割り切ってはいた。

 

(……そう言えば)

 

 ペットボトルの水で喉の渇きを潤した時、ふと気が付いた。隣にいる桃崎は確か俺と同じクラスだったはず。なら転校してきた俺の様子なども知っていると思うのだが…

 

 

 

 

 

「知りませんわ、私全く話を聞いていなかったですもの」

 

 知りませんでした。何でも転校生がクラスに来たのは見たが、修学旅行の事で頭が一杯だったらしく気にもしなかっただとか。

 

「…マジで?本当に何も知らないの?一つも?」

 

「そ、そんな怖い顔で見ないでくださいまし!」

 

「…はぁーーーー」

 

「『何コイツつかえねー』って顔で私の事を見ないでくださいな!」

 

 だって本当に何も知らないんだもん。そんな顔になってしまうし、クラスの事を一つも気に掛けないのはどうかと言う思いもある。

 

「同じクラスでもまさかここまで知らないとは…君、本当に学生さん?」

 

「そこまで仰らなくても…わ、分かりましたわ。帰ったら私がお爺様に直接聞きますから」

 

 そう言えばこの娘俺達が通っている学園の理事長の孫娘だったっけ?なら確かに直接聞いた方が早いか?まぁそのためには無事に帰らないといけないというのがあるのだが…しゃーない頑張りますか。

 

「っと そう言えば先生の方は…」

 

 結局ここまで来るまで聞けなかったが先生は俺の事を知っているのだろうか?青山と一緒にもそもそとカロリーメイトを食べていた先生に話を聞いてみる。

 

「…ごめんなさい蟻原君。私、本当は何も知らされていなかったの」

 

「マジッすか」

 

 話を聞けば職員会議で転校生の話が出たがすぐに流されてしまったらしい。学年主任に話を聞きに行ったがその人も困惑していたのだとか。

 

「何でも理事長が無理矢理入れさせたと話は聞きましたが…私も他の先生方も詳細は誰も知らないんです」

 

「うへー」

 

 それで先生は最初俺の事を不正で転校してきた人間と思ったらしい。だからやたらと嫌悪感を持たれていたわけですな。しかしますます深まる俺の正体。理事長がわざわざ非難されるのも承知で強行したって事は…俺はよっぽどの奴なのか?

 

「学校に戻って詳しく調べてみないとあなたの事は分からないんです。…力になれなくてごめんなさい」

 

「いえいえ、分からない事が分かったのでこれでも一歩前進ですよ」

 

 申し訳なさそうにする先生に手を振って問題ないと伝える。先生だからって何でも知っているわけじゃない、だから情報が一つも無い事は仕方なかった。

 

 

(とは言え、気になるが…まぁこの島から脱出するまでは気にしないでおこう)

 

 

 きっと脱出するまでは俺の事はこれ以上知り得ないだろう、そんな確信がある。色々ともやもやとするがまぁ仕方ないって事だ。

 

 

 

 

 

 

 




休息回はもうちょっとだけ続きます。
その後は恐らく一気に話が進むと思われます
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