翡翠の弾丸~ゾックはかく戦えり   作:スナ惡

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再編

ラコックが口にした「宇宙攻撃軍」は間もなくジオン公国軍人の全てが耳にすることになる。

ホジョウがキャルフォルニアベースに帰り着いて間もなく、ジオン軍の再編成がはじまった。

ムンゾ防衛隊から、ジオン公国軍と名を変え、各方面の混乱が収まったのがついこの間の話だ。

軍の体裁を整えようと乱発された階級の中でも、扱いがややこしい准将が消えるかもしれないと言った話も漏れ聞こえている。

そんな話が聞こえてから二ヶ月もたつと具体的な話がトップダウンで降りてきた。

ホスマン長官に呼ばれてホジョウが長官室に顔を出すと、長官室という表札の上から紙が貼られていて「司令室」となっていた。

ホジョウは精一杯背中を伸ばして「少将にご昇給おめでとうございます」と敬礼すると、ホスマンはあまり嬉しそうではなかった。

ほとんど事務的な昇級だということは百も承知なのだ。

しかし、ホスマンはすぐに顔を明るくした。

「うん、ありがとう。ということでホジョウ少尉、キミに提出を命じた『新兵装開発競争化における複雑化する補給作業改善マニュアル』が評価された。正式な発表はまだだが中尉に昇給だ。おめでとう。」

「ハッ!ホスマン長官閣下のご指導のおかげであります!」

ホスマンはややダルそうに頷いているが、まんざらでもないようだ。

若い将校の昇進を喜ぶだけの甲斐性は持ち合わせている。

今、地球連邦との軍事開発競争が激化する昨今、装備の種類が増えすぎて補給物資の種類も増え続けている。

そのため、どこにどんな武装やモビルスーツがあって、どんな武器を装備しているのか把握しないでは、前線に必要な物資が送れないのだ。

さらに宇宙はタテヨコの他に高さがあり、地球の重力や月の引力圏の問題もあって、どの経路で送るのが最適なのかが難しい。

軍需品は民間機と違い敵の攻撃目標になるため、安易な輸送路も使いづらいなど、そうした山積する問題の中で宇宙世紀の補給は行われていた。

ホジョウはモビルスーツの戦闘訓練はからっきしだったが、その部門では卓越した能力を発揮していた。

「『ご指導』はしてないよ。だが、キャルフォルニアベースがジオン公国に果たしている役割は大きい。」

ホジョウはホスマンから通り一遍のお褒めの言葉を頂くと、敬礼して部屋を辞して、小躍り気味に自分の部屋へ向かって歩き出した。

「ホジョウ中尉、おめでとう。」

コーエン博士が歩くホジョウを見つけて声をかけた。

「ありがとうございます!」

「うん。」

コーエンは実はホジョウより階級が高い。

ジオン公国軍は未だ混乱していて、企業から派遣されている研究者にも技術将校としての階級を与えた瞬間があった。

この階級のつけ方がかなり大雑把だったのでコーエンは大佐の肩書きを持っている。

そしてコーエンはそのことをあまりよくは考えていない。

軍内での出世競争に噛むつもりはないし、なんなら自分と同じような研究者で変わらない仕事をしているのに無階級の人間もいる。

技術将校は給与の仕組みが一般の将校と異なるので特に給与が高いわけでもない。

それでいて式典があったりすると声がかかるので、コーエンにとって「大佐」の階級はただただわずらわしいモノだ。

だが、目の前の若者にとってはそうではない事は明白だ。

そして、コーエンもホジョウの能力が高いことを認めつつあった。

「例のマニュアル、目を通したがあれは未完成で、書いてある内容に目新しさもない……が、あれで救われる人間は多いだろうな。よく出来ている。」

ホジョウはコーエンにほめられるとは思っていなかったので、いかにも嬉しそうな顔をしている。

そして、コーエンはそうした反応をめんどくさがるタイプの人間だった。

この後、キャルフォルニアベースは地球方面軍として編成される。

総司令は大躍進のマ・クベ。

名門ザビ家の末弟で士官学校第3期卒業生主席のガルマ・ザビを伴っての赴任だった。

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