「Z」は「ゼータ」ではない、「ゼット」だ。
大雑把に言うとZ機体は紡錘型をしていた。
高い水圧に耐えるために流線型の頑健なボディーをしている。
立った姿は釣鐘のようで、その中ほどから両脇にひどく不恰好なクローつきの両腕がぬっと突き出ている。
脚部は短く、全く歩く目的で作られていない。
ホバー推進とラムジェットを吹かして跳躍することのみを目的として作られているため稼動域もきわめて狭い。
両足あることが不思議なぐらいだ。
実際に3脚にするとか、逆に脚を無くすといった案もあったらしいが、脚を無くすことには上層部から圧力がかかったそうだ。
「35m…ものすごい背が高いですね。」
ホジョウは設計図を見てため息をついた。
「大型ジェネレーターの運用試験をするためにどうしても大型化は避けられん。」
「でしょうね。」
ゴンザレスの実験場では大型ジェネレーターの実験が終わったので、Z機体の組み立ての準備が急ピッチで進められていた。
しかし、あくまでも実験機であるため、作業しているほとんどの人間が何をやらされているのかわかっていない。
ホジョウはゴンザレスに気に入られたのか、実験機の極秘の図面を見せて貰えていた。
「この頭の部分のごちゃごちゃしてる構造は何ですか?」
「ああ、それはな。フォノンメーザー変換器でメガ粒子ビームをフォノンメーザーに変換して発射する機構じゃ。切り替えればメガ粒子ビームも撃てる。その切替機構がでかくてな。」
「何のために?」
ゴンザレスはそのあたりにはあまり興味がないようだが、ホジョウの質問には答える。
「水中ではメガ粒子ビームはロスが激しい。水陸両用機の兵装として今後どうかってところじゃな。」
「新兵器ですか。」
「まあ、そういう認識で良いじゃろう。」
ホジョウはまじまじと図面を見る。
「これ、この兵装で腕って必要ですか?接近戦で殴ることってまずないでしょう?」
ゴンザレスも首をひねった。
「うーん、これはとりあえずつけた感じじゃな。ゴッグのクローが好感触だったからじゃろう。」
「はあ…」
ホジョウは設計図から実際に出来上がる機体の大きさを想像してみた。
「…やぱりでかすぎますよね?ストップかかりませんか?」
ゴンザレスは意に介さない様子だ。
「じゃから、ここで組み立てるんじゃ。この図面はキャルフォルニアベースの中でも限られた人間しか知らん。というか、この実験初号機はデータだけ取ったら廃棄される見込みじゃ。」
「え!?捨てちゃうんですか!?」
ゴンザレスは「やれやれ」といった顔でホジョウにレクチャーを続ける。
「強度実験…どれぐらい頑丈かを調べる実験をすれば、だいたいのモノは壊れる。どれぐらいで壊れるか調べるわけじゃからな。」
「ああ、そうか。」
ホジョウはなんとなく納得した顔をした。