翡翠の弾丸~ゾックはかく戦えり   作:スナ惡

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パイロット

前線の情報に疎いキャルフォルニアベースにも水陸両用機の納入先の名前が徐々に明らかになってきた。

当然極秘なので確定ではないのだが、現在の戦況や、最新鋭機を乗りこなせるエース集団となると候補は絞られる。

しかも、持ち込まれたズゴックが真っ赤に塗装されて換装されている作業を間近で見ているメカニックたちにとって、最新鋭機の配属先の予想は簡単だった。

「マッドアングラー隊ぐらいになると訓練なしでも最新鋭機を乗りこなせちまうんだろうなぁ…」

その声は生産ラインの中を歩いていたホジョウの耳に入った。

「バカ話はしてもいいが、そのテの話は盗聴でもされたらコトだぞ。軍法会議にかかりたくなければ少し口を慎みたまえ。」

「はい・・・。」

無駄口を叩いていた男はバツの悪そうな顔をして、今度は黙って作業に向った。

ホジョウは小さくため息をつくと、そのマッドアングラー隊に兵装一式を引き渡すランデブーポイントの策定のために、作戦会議室に向った。

別にホジョウが出なくても、マッドアングラー隊が指定したところに何がしかの艦で運ぶだけの簡単なハナシなのだが、立場上、出なくてはいけない会議だ。

おそらく、ほぼ黙って座ってるだけの会議で、途中、邪魔しない程度に当たり障りのない発言を求められるのだろう。

途中で同じく作戦会議室に向うコーエンと自然と合流した。

「下らん会議だよ。」

企業から出向している技術将校はしがらみが薄いので平気でそういうことを口にする。

「同意も反対もしませんよ。」

「中尉だったら無言でやり過ごすかと思ったが、返事が聞けるとは予想外だった。」

コーエンが茶化す。

「少佐を無視は出来ませんよ。」

「ふふん、それは気を遣わせてすまなかったな。良いことを教えよう。私はこのテの会議はメモをとるフリをして数式を解いて時間を潰す。」

ホジョウはまたため息をついた。

「知ってますよ。博士、それでたまに意見を求められると『私はむしろ〇〇くんの意見を聞いてみたい』で切り抜けるじゃないですか?あれ、フラれた方はたまったもんじゃないんです。若い連中に超不評ですよ。」

コーエンはニヤニヤと笑いながら資料を抱えているホジョウのために作戦会議室のドアを開いた。

手が塞がっているホジョウはかかとだけ揃えて、姿勢だけは敬礼の姿勢をとった。

「お?」

目の前に見知らぬ軍人がいる。

階級章は少尉だ。

ホジョウにホスマンが紹介する。

「例の隊のユーコン型潜水艦の副長コノリー少尉だ。」

ホジョウは急いで荷物を会議室のテーブルに置くと、きちんと敬礼をした。

「ホジョウであります。補給を担当しております。」

「コノリーです。よろしくお願いします。こちらはボラスキニフ曹長。」

「ボラスキニフであります!よろしくお願いします!」

ホジョウもコーエンもホスマンもマッドアングラー隊がキャルフォルニアベースまで出張ってくるとは思いもしなかったのだ。

「コーエン博士、ボラスキニフ曹長に最新鋭機についてレクチャーしていただけるか。…実物をみながら。」

「了解した。」

コーエンとホジョウはボラスキニフが小脇に抱えている冊子に目をやった。

冊子は数週間前にキャルフォルニアベースで作って、送ったものだ。

その大急ぎで作った試作機ゾックの粗末なマニュアルからはところどころ付箋が覗いている。

くたびれるまで読み込んである様子だ。

「一通り読んで参りました。」

「もっと立派な表紙をつけるべきだった。」

誰に向って言ったのかコーエンはそうつぶやいた。

ボラスキニフ曹長はそれから1週間、かろうじて完成していた試作1号機で自主的に訓練を行って帰っていった。

そして、まだ組み立て途中の試作2号機にはボラスキニフからの注文でいくつかの変更点が加えられるようだ。

 

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