翡翠の弾丸~ゾックはかく戦えり   作:スナ惡

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国葬

「え?戦死?」

ジオン公国をガルマ・ザビ戦死のニュースが駆け抜けた。

ただ有名人が死んだのとはワケが違う。

死んだのは人望厚いザビ家のガルマ大佐だ。

しかも亡くなった場所はニューヤークで、占領前から地球におけるジオン公国の重要な拠点になると吹聴されていた地だ。

元々、民間人が多すぎるためニューヤーク空爆はジオン公国軍の内部でも否定的な声が大きかった。

また、攻撃後、都市機能が麻痺したニューヤークは占領するにはうま味がなさ過ぎるという声もきかれた。

そこへ今回の訃報だ。

自然と、地球で生まれ育ったわけではないスペースノイド達の中には一つの疑念がわいた。

そこまでのリスクをとって地球に領土を保持する必要があるか否かと言う疑念だ。

確かにスペースノイドにとって地球から送り出される資源や食料は無くてはならないものだ。

しかしながら、ニューヤークは鉱山や農地とはワケが違う。

比較的、小さな破壊で占領できた生産拠点である、ここキャルフォルニアベースは確かにジオンの国力を底上げしている。

こうした成功は単なる地球攻撃ではなく地球占領論者を勢いづかせた。

地球がそんなに大切なら、葬儀も地球でやればいいと誰かが悪態をついていたが、葬儀は遠いズムシティで行われる。

キャルフォルニアベース司令ホスマンはズムシティの葬儀に出るため、急遽基地を離れることになった。

同じ北米大陸にいるのにガルマの棺を追いかけて行くような形だ。

「コーエン博士。よろしく頼む。」

「あい分かった。くれぐれもご用心を。」

キャルフォルニアベースは本来いるべき副司令が不在だった。

前任者がいなくなったタイミングから、なんとなく決め損ねていたのだ。

仕方がなく1週間ほどの短い期間、コーエンが司令代理を引き受けることになった。

葬儀は国営放送を通じてジオン公国中に流れた。

キャルフォルニアベースの公国民も夜中に大食堂のテレビの前で直列してその様子を眺めた。

ベースの人間たちは地球で少なからず苦労している側なので、ニューヤーク占領には否定的な意見の者が多い。

真面目に直立している人間もいたが、眠気もあってか、冷めた表情をしているのが大半だ。

「こんな国だったか?」

誰かがつぶやいた声に空気が凍った。

だがもっとドギツイのがその後に続いた。

「革命一家がそのまま貴族サマに納まる国がジオン公国だ。」

基地司令代行のコーエン大佐だ。

最初につぶやいたヤツも相当なツッパリだがコーエンの毒に圧されて全員が無言になった。

「ロベスピエールがジオン公国にいるとしたら、今どこに潜んでいるのやら。」

そういうとコーエンはテレビの前を辞して自室に戻ろうとした。

流石にホジョウも止めた。

「コーエン基地司令代行、まだ葬儀が。」

「…もう終わるだろう。自室にもテレビはある。」

コーエンがそう言って食堂を出ると、他の将兵もポツポツと抜け始めた。

ホジョウはコーエンが言った以上それを制止する訳には行かなかったので、結局、最後まで大食堂に残った。

放送が終わって、残った将兵たちも解散しはじめると、ホジョウのところへゴンザレスがやってきた。

「ホジョウ中尉は真面目だね。」

ホジョウはしまりのない愛想笑いで答えた。

否定も肯定もできない。

ゴンザレスはホジョウの肩をポンポンと叩くと

「我々は無駄は省きたいものだ。」

と言い残して去っていった。

ホジョウは長い長いため息をついて、食堂の椅子に腰を下ろした。

ニューヤーク占領反対派であったスペースノイドたちにとって今回のガルマ殿下の戦死は無駄死ににしか見えていない。

「ホジョウ中尉!お先に失礼します!」

ホジョウは力なく返すと、1人になった食堂で

「学者先生は言いにくいことをポンポン言うよなあ。」

と独り言をそっと。

そして、立ち上がると寝支度を始めた。

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