「今回の一件は中尉に泥をかぶらせてすまなかった!」
ホジョウがホスマンに呼び出されて開口一番謝られた。
「あ、いや、その件は私も…」
「いや、本件は真に私の身から出た錆だ。」
ホスマンの本心だった。
ホスマンはなぜ、今回の事件をホジョウの処罰で終わらせたのか、ホスマンの立場から真っ正直に話した。
「…そういうわけで、ジオンの地球での形勢が悪化している現状で連隊ごと責任を追及するわけには行かなかったんだよ。」
「まあ、分かってはおりましたが。」
ホジョウはそこは分かってはいた。
ただ、過去に試合で怪我をさせた記憶が蘇ってナイーブになっていたのだ。
そして、自分が過度にナイーブだったと言うことをホスマンの口調で悟った。
「あと、ハドマンはあいつはバカだな。」
ホスマンは真剣な顔でそう言った。
ホジョウはそれを聞いて吹き出した。
「そんな、ズバリ言ってあげなくとも。」
ホスマンは険しい表情を崩さずに首を横に振った。
「いやいや、中尉はまだ分かっておらん。ああいうのは周りを危険に巻き込むのだ。1人のバカのせいで同胞が大勢死ぬのも戦争だよ。リーは飼い犬にはしっかり首輪をつけといてもらわんと困る。私がなにが言いたいかと言うと『状況が逼迫しているのであんな連中でも手元においておかなければいけないが、想像をはるかに下回るポンコツを押し付けられてしまった。』ということだ。」
ホジョウはだんだんここ数日の胸のモヤつきが晴れてきた。
「少将がそこまで仰られる方だとは思っておりませんでした。」
「私を舐めてもらっては困る。今となっては大きな声では言えないが、私はジオン公国が出来る前から革命活動に参加していた人間だぞ?ホジョウ中尉を目の前に言うことでもないが、士官学校出のお坊ちゃま連中みたいに品は良くないんだよ。」
「あー、そう言われてみるとそうですね。」
ホジョウは「今となっては大きい声で言えない」に関してはダイクン派の人間だと思われるとジオン公国内では出世に響くからだと悟った。
ジオン公国民は右向け右で総じてザビ派でなければいけないのだ。
「中尉のおかげで連中は一気に大人しくなった。」
「みたいですね。それは私も感じました。」
ホスマンはそこまで話すと少し声のトーンを落とした。
「まあ、話は変わるが、中尉にはリー連隊がいなくなったあとに備えてキャルフォルニアベース防衛隊の組織作りをお願いしたい。厄介ごとを次々押し付けるようで忍びないが、是非頼む。」
ホジョウは無碍に断るつもりも無かったが、話が見えない。
「防衛隊はいるじゃないですか。」
「いや、キャルフォルニアベースが前線になったときを想定して、キャルフォルニアベースの運動不足のメカニックと設計屋連中に防衛訓練をするんだ。そして、普段は普段の仕事をしながら、有事の際に多少なりとも…例えば撤退まで持ちこたえる事が出来るようにしたい。補給部門監督と兼任で頼む。」
ホジョウはやっと合点がいった。
先日、陥落したオデッサ鉱山基地では脱出しようとした作業員が多数戦死したそうだ。
「分かりました。そういうことであれば、私の出来る範囲で。」
ホスマンは破顔して、デスクの引き出しから数枚の紙を出した。
「良かった良かった。これ取っといてくれ。」
ホジョウが受け取った中には「キャルフォルニアベース第2防衛中隊計画」が書かれた紙と「キャルフォルニアベース第2防衛中隊隊長に任命する。」と書かれた紙、そして「タロウ・ホジョウを大尉に任ずる。」と書かれた紙が入っていた。