翡翠の弾丸~ゾックはかく戦えり   作:スナ惡

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実験初号機計画

「ザクのときに17.5mを我が公国軍の示準にしようと決めたではないか!その大きさでどうやって現行のカタパルトから出撃する気だ!」

激高するホスマン准将キャルフォルニアベース長官相手にコーエンは涼しい顔をしている。

「カタパルトから出撃しなくてよいのですよ准将閣下。現在設計中の新型は水中であればカタパルトを用いずとも十分な初速と機動性が稼げます。」

「水陸両用機ばかりをたくさん作らねばならん理屈はない!」

コーエンは面倒くさそうな顔でパイプ椅子に深く持たれて座っている。少々ガタの来た会議テーブルを囲んでキャルフォルニアベースの重役が顔を突き合わせている。

一応、ホジョウもその中にいた。

というより、こういうめんどくさい役回りをさせられるためにホジョウは少尉という身の丈に合わない階級を押し付けられたのだ。

当然発言力などない。

そんな三下のホジョウはコーエン博士とお近づきになりたいと思いつつも、基地長官と真っ向から対立するコーエン博士に接近するのは危険なのではないかと思い始めていた。

コーエンはそんな若者の思惑も多少は勘づいていたが、戦乱の世の中で立身出世を企む若者は珍しくもない。

「私は、17.5mのザク規格の話をしているわけではなくキャルフォルニアベースの存在意義の話をしているわけですよ。これまでモビルスーツは小型化だったわけです。そのために動力である熱核反応炉を小型化する方向性で技術を高めたわけです。しかし、きたる高エネルギー兵器時代、まあいわゆるメガ粒子砲兵器による『飽和攻撃』の時代を見据えて、大型製造の可能な我がジオン公国唯一の重力下研究施設であるキャフォルニアベースが、先行していかなくてはいけないと。」

そう言いながらコーエンは床を踏み鳴らした。

「当然、大規模建造に関してはジオンは無重量下では連邦に大きくリードしておるわけですが、このキャルフォルニアベースを見て分かる通り、今やジオンは地球に…」

そう言ってもう一度地面を踏む。

「この地上に領土を拡大しているわけです。ホスマン准将閣下は当然ご存知であられますが。」

意外にホスマンはまんざらでもない顔をしている。

ジオンによる地球降下作戦の成功が彼の今の地位を築いているのだ。

スペースノイドが地球を覆う時代がやってきたのだ。

「しかし、それが…こんな巨大なモビルスーツ…うーん…この大きさはモビルスーツなのか?」

「名前なんぞは何でも良いのです。」

ホスマンは保身傾向の強い男だ。

とりあえず、現在、汎用機であるザクは連邦に対して軍事的なプレッシャーを掛け続けている。

後継機の話も聞こえている。

連邦にも優秀な汎用機は出始めたようだが、その生産拠点を分捕ったのがホスマンが居座っているキャルフォルニアベースだ。

要はザクを作り続けていればホスマンは安泰なのだ。

「ゴッグではなぜいかん。」

コーエンはジオニックという民間企業からの出向者だ。

ジオンの兵器開発企業はジオニック社だけではない。

ゴッグはツィマッド社という別の企業のモビルスーツだ。

大きすぎることもなく現行の水陸両用モビルスーツとしてはこれ以上のものはないとホスマンは考えている。

あえてライバル社の話をしてコーエンを引っ込ませたかったのもあるが、単にホスマンは魚雷が好きだった。

ミノフスキー粒子のジャミングを受けない半誘導兵器という強みもある。

ゴッグは装弾数こそ少なかったが魚雷を装備した数少ないモビルスーツだ。

「なにも手ぶらでプレゼンしようというわけではない。閣下にプレゼントがあります。」

コーエンは卓上に大きな紙を広げた。

当然、ディスプレイに表示することも出来たが、ホスマンは古い人間だ。

コーエンはホスマンのような堅物には興味がなかったが、政治的な利点からホスマンの好みは知っていた。

「何だこれは?」

「ゴッグが実現できなかった水中ビーム兵器実現の目処が立ちました。」

ホスマンは少し考えを巡らせた。

ゴッグには拡散メガ粒子砲が搭載されているが、収束メガ粒子砲が水に弱いための苦肉の策だと聞いている。

「ミノフスキー粒子の干渉を利用して高周波を発生します。こいつは水中で真っすぐ飛びます。この実験機の研究開発にゴーサインが出れば、すぐにでもかかれます。例えば、飛んでくる魚雷を…ビーム兵器で迎撃できるわけです。皆さんご存知のミノフスキービームではなく広義のビームですが。」

「本当か?」

ホスマンは興味を示したようだ。

コーエンは頷いた。

「閣下、実現するかどうかは実験機の許可が降りるか次第です。」

「このデカさはなんとかならんのか?」

コーエンは首を振った、いかにも情けない表情だ。

「やってみないと分からんのです。もしかすると、研究が進めば他のモビルスーツの兵装に流用できるぐらい小型化できるかもしれませんが…そう、閣下もお好きなゴッグの頭部などに搭載できたら素晴らしいでしょうね。私もあの機体には感服しております。」

「ゴッグが視認した魚雷を迎撃できるようになるということか?」

コーエンは慎重に答えた。

「私はこの研究でそれが実現できると考えております。」

「うーん。」

ホスマンは返答を避けた。

しかし、その翌日、実験機の許可が降りた。

ホスマンはそういう男なのだ。

実験機はひとまずZ計画と呼ばれた。

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