翡翠の弾丸~ゾックはかく戦えり   作:スナ惡

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孤島のゾンビ

「数日前まで南米のジャングルで戦争していたなんてウソみたいですね。」

太平洋上を軽快に滑るクルーザーでタニアはすっかり寛いでいた。

「戦争はそもそも非現実的なものだよ、ロボ曹長。」

コーエンはひたすら端末で何かの計算をしている。

「コーエン博士、これどこを目指してるんですか?」

「島だよ。名も無き島だ。」

二日ほど夕日を追いかけると、確かに島が見えてきた。

「見えたな。」

さらに島に近づくと、かなり遠浅になっているらしく、適当なところでクルーザーの錨を降ろすと、コーエンはエンジンつきのゴムボートを出した。

「この辺はサメが出る。気をつけたまえ。」

コーエンの操縦するボートでさらに島に近づく。

コーエンが島に向って大声で呼びかけた。

「おーい!ゴンザレス博士!来たぞお!!」

「ゴンザレス博士ェ!?」

ホジョウの声が裏返った。

「…ゴンザレス博士ってどなたですか?」

タニアが至極まっとうな質問をホジョウにした。

「…事故で死んだはずの研究者。」

浅瀬を走るボートの向う先には確かにゴンザレスが白地に赤の花柄のアロハシャツで飛び跳ねている。

「えらい別嬪さんも連れてきたのう?」

「そこらへんの事情はあとから話すよ。とりあえず、計画は順調かな?」

ホジョウはゴンザレスとコーエンの後姿を見ながらため息をついた。

「なんか色々複雑そうですね…」

タニアは少し気を使ってそう言った。

「実は私も何が何だか分かっていないんだ。」

程無くシーフードが焼ける良い匂いがしはじめた。

夕食はゴンザレスが腕によりをかけたバーベキューのようだ。

コーエンは焼けたイカをかじりながらビールを飲みながらタニアが同行した経緯をゴンザレスに話した。

「次は私が訊く番ですよ。なぜ、ゴンザレス博士が生きておられるのかご説明をお願いします。」

「ワシが生きとったらまずいのかな?」

「そういうことを言っているわけではありません!」

コーエンが促されて話し始めた。

「まあ、作戦の一環だ。廃棄したはずゾック初号機が残してあったのはホジョウ君も知っての通りだが、あいつは今この近くにある。」

「へ?爆発で吹っ飛んだんじゃないんですか?」

ゴンザレスがバーベキューの焼けた炭をかき混ぜながら答えた。

「この島の東側の海中に沈めて隠してあるよ。」

「他にもまだゾックがあるんですか?」

タニアが口を挟んだ。

タニアの部隊はマッドアングラー隊が持っていったゾックを見ていてもおかしくない。

「ロボ曹長が見たやつよりもデカイ実験機があるんだ。それが海中に隠してあるんだってさ。」

「へー…」

ふいにパチッとイカの弾ける音がして、全員がビクついた。

さっきからこのイカが焼けて飛び散る汁で熱い思いをしているのだ。

「肝心なことを訊いておりませんが、ゾックをここに隠して、ゴンザレス博士を死んだことにして、お二人は一体、何をされるおつもりですか?」

「お嬢ちゃん、これもう焼けて食べれるぞ?」

「焦げてる…」

「焦げてないところだけ食べなさい。」

「すいません、1回焼きイカのハナシ止めてもらっていいですか?」

コーエンがため息をついて立ち上がった。

そして深々と頭を下げる。

「すまん!大尉!」

「『すまん』の理由が分からないですよ。せめて理由を説明してから頭下げてくださいよ。」

「我々が作っていたのは水中作戦用のモビルスーツではない。宙域で運用するためのモビルアーマーだ。」

ホジョウは無言でそう話すコーエンを見ている。

「ブリティッシュ作戦の後にジオン公国軍内部の主に技術研究者の間で極秘の計画が持ち上がった。言ってみれば秘密結社のようなものだ。我々はそのメンバーだ。」

「それは…ジオンの上の人間は知ってるんですか?」

コーエンは目を細めた。

「ジオンの上層部にも我々のメンバーはいるが、ジオン本体は感知していない。」

「ドズル閣下も?」

「ドズル閣下は気づいてはおられるかもしれんが、大型モビルアーマーの研究データを我々が提供しているので、とくにお咎めは受けていない。」

ホジョウは聞き難い事を直球でぶつけることにした。

「それ、私に話して大丈夫なんですか?」

「私とゴンザレスの老いぼれ二人でホジョウ大尉とロボ曹長を暗殺できると思うかね?…マシンガンを持っていても勝てないだろうな。」

ゴンザレスが愉快そうに笑いながら頷いている。

「だから、ここからは、お二方の選択じゃよ。計画を聞いて我々を手伝うか、聞かなかったことにしてクルーザーに乗ってこの島を出るか。船には燃料も食料も十分にある。民間人に紛れて普通に帰れるじゃろう。」

ゴンザレスの提案にホジョウは呆れ顔でため息をついた。

「計画は聞かせるんですね?」

「聞きたい!」

タニアは目を輝かせていた。

 

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