「条件があります。ロボ曹長も一緒に行けるのであれば協力しましょう。ロボ曹長はどうされますか?」
「え?ホジョウ中尉がご参加されるなら…」
コーエンが一応、誤りを訂正した。
「すまないロボ曹長。ホジョウ大尉だ。つい最近、また昇格されたのだよ。」
「あ、失礼しました。」
「この際、私の階級なんかどうでもいいでしょ。ホジョウでもタロウでも何でもいいです。」
しばらく無言の間ができた。
沈黙を破ったのはゴンザレスだった。
「もしかして、ロボ曹長とホジョウ大尉は…特別なご関係にあるんじゃろうか?」
「違います。」
ホジョウはきっぱりと言った。
「曹長1人、太平洋の真ん中でクルーザーに乗せてお別れは、それは遭難して死ねと言っているようなものでしょう。」
そう言ってホジョウはタニアを見て黙った。
タニアは状況を想像しているようだ。
「あー、それはキツイですね…」
コーエンは深く頷いて同意を示した。
「それは大尉の言うとおりだ。二人とも協力を願うつもりではいたが、確かにホジョウ大尉だけが合意したところで、ロボ曹長の今後については考えていなかった。…計画外だったんだ。すまない。」
ホジョウは鼻から強く息を吐くと、もう少し話を詰めようと再度口を開いた。
「まず、この島にずっといるつもりなのか、この島からどこかへ移動するおつもりなのか…そういう話が分からなければお返事のしようがありません。そもそも、このままここにいたらいつか物資も切れます。連邦にもその内見つかるでしょう。」
ゴンザレスが小さくなった火に枯れ枝を足しながら答えた。
「ワシらはここから宇宙(そら)へ帰るつもりじゃった。そして、ゾック・ゼロを隠して支援者のいるコロニーに潜伏する予定じゃった。」
「迎えが来るんですか?」
コーエンが首を横に振った。
「いや違う。ゾック・ゼロで宇宙へ帰るのだよ。」
「ゾックって大気圏を脱出できるんですか!すごーい!」
タニアが大げさに驚いた。
ホジョウも驚きたかったが、タニアに先を越された。
「補助ロケットを使えば可能だ。そこの岩陰にカモフラージュして隠してある。」
コーエンが指差したほうは真っ暗闇で何も見えない。
「そのロケットは私とロボ曹長、二人追加で乗ってもまだ宇宙(そら)へ上がれますかね?」
ゴンザレスはホジョウの着眼点に満足しているようだ。
「『冷たい方程式』の話じゃな?大丈夫じゃ。補助ロケットの出力には十分余裕がある。」
朗らかに返答したゴンザレスに3人は微妙な空気だった。
「なんですか、その『冷たい方程式』って?」
「ゴンザレス、その方程式は私も知らないぞ?タニア曹長知ってるか?」
「私も知らないです…」
ゴンザレスはいささか気分を害したようだ。
「おヌシらは揃いも揃って!名作じゃぞ!?大傑作じゃぞ!?知らんのか『冷たい方程式』じゃぞ!?作者名は…ゴドウィンじゃ!!本当に知らんのか!?」
その後、3人は不平たらたらのゴンザレスを適当になだめると「絶海の孤島でインターネット検索をしたら、どれぐらいで所在が連邦にバレる」かについて短く討議した後、徐々に興味を失って、明日の朝の為に眠るという結論を出した。