「これじゃ!アルミ合金酸化型固形燃料ロケット2基!!」
翌朝岩場の影の茂みを取り除け、さらにシートをめくると、金属製のロケットが2本、並べた上体で姿を現した。
「こんな古臭いもの…こんなものまで基地からガメてたんですね。」
ホジョウが呆れ顔で眺めたそれは1本40mほどはある巨大なブツだった。
「これは違うぞ。我々の支援者がこの島にあらかじめ隠して置いておいたものだ。よし、ゾックを起動しよう。」
4人は沖に停泊しているクルーザーまでボートで向うと、ボートをクルーザーで曳航しながら、島をぐるっと回って東岸へたどり着いた。
「これで、ゾック・ゼロが浮かんでこなかったら計画は失敗じゃ。」
ゴンザレスがリモコンを操作すると、水中から気泡が上がってきた。
クルーザーの船底を泡が叩く音が聞こえる。
「まずい、真下だ。クルーザーを動かせ。」
クルーザーを前進させると、今までクルーザーが浮かんでいた水面がどんどん泡立ちはじめた。
そして、派手に水しぶきを上げながら巨大なモビルアーマーが浮上した。
ライトグリーンの塗装が映えるゾックの頭だけがぽっこりと水面に浮かんでいる。
「なんか、私がジャブローで見たヤツより大きくないですか?」
タニアが首をかしげている。
「実はそうなんですよ…デカいんですよ。」
ホジョウはその巨大なゾック・ゼロを見ながら、まんまと二人の博士に担がれていたことを思い、やれやれと首を振った。
そんなホジョウの気持ちは、だましていた二人には全く伝わっていないようで、二人はなんとなく楽しそうにしている。
そして、ゴンザレスが端末を取り出してゾックの調子の遠隔チェックをはじめた。
「うむ、漏水もなさそうじゃ。乗り込むぞ!」
コーエンとゴンザレスがボートでゾックに移動して、額の辺りのハッチを開けて乗り込む。
ホジョウは手はずどおり、クルーザーでゾックから大きく遠ざかった。
ゾックの特別性の巨大核ジェネレーターがアイドリングを始めた。
ホジョウの端末に通信が入る。
「十分距離は開きましたよ。」
ホジョウがそう言うや否や、ゾックはほぼ真上に水柱を上げながら飛び上がった。
「跳び過ぎだろ…」
「デッカ!?」
頭頂高35mのゾックゼロの大きさから考えると、100mぐらいはジャンプしたのではないだろうか。
端末の向こうから二人の博士の「ウワー」と言う声が聞こえる。
忘れがちだが、モビルアーマーだろうがモビルスーツだろうが、中に人間が乗る限り、急制動がキツいと、中の人間がやられてしまう。
急加速で貧血、急停止で脳震盪を起こす場合もある。
「危なっかしいな…」
ゾック・ゼロは脚部のホバーで島に着陸した。
ゾック・ゼロのたてた水しぶきは、クルーザーに土砂降りの雨の様に降り注いだ。
距離はあけたが足りなかったようだ。
「うわーずぶ濡れ。」
タニアが濡れたTシャツの裾を搾っている。
ホジョウは出来るだけその模様を見ないようにしながら、島の表側に戻るべく、船を発進させた。
ホジョウとタニアがボートで島に再上陸を試みるころには、ゾックはとっくに島の正面側まで移動を終えている。
そして35mのゾックが器用に40mの2本のロケットを鷲掴みにしていた。
「え、ウソでしょ?」
ホジョウが思わず口走った。
ゾックは両腕を真横に開いて2本のロケットを掴んで直立している。
その様子をコーエンが外から眺めている。
「ゴンザレス博士!角度も完璧だ!」
通信端末で、ゾックの中にいるであろうゴンザレスと何かの調整をしているようだ。
ホジョウは駆け寄ると言いたいことは山ほどあったが、その中でも厳選された疑問をぶちまけた。
「ロケット手づかみで宇宙へ飛ぶんですか!?」
「そうだが?」
コーエンは即答した。
「『そうだが、何か?』みたいな顔しないでくださいよ!モビルスーツがロケット掴んで宇宙まで飛ぶって…」
コーエンはホジョウを咎める顔で見ている。
「ホジョウ大尉、これはモビルスーツではなく、モビルアーマーだよ。」
そう言って、コーエンはゾックの股間から降りてきた簡易式のエレベーターに向って歩いていった。
うなだれるホジョウの後ろから追いついたタニアがホジョウの肩をぽんと叩いた。
「大尉っ!諦めましょう!」
そういってホジョウを追い抜いた。
小走りにゾックに駆け寄るタニアの後姿を見ながら、ホジョウは
ー戦争は非現実の世界…
と言った誰かの言葉を頭の中で反芻していた。