ゴンザレスはロドリゲス&コーネル運送に帰ってきたところで、ペトローニ女史を早速呼び出した。
「大変なことを見落としておった。核パルスエンジンは2基あったんじゃ。そして二つとも消えて、送り先が分からん。」
話している場所は例の社長室だ。
コーエンもいる。
ホジョウは社長室のドアの外をちらりと見ると立ち聞きされていないか確認してから、ひととおりの経緯を話した。
その話を聞き終わったあと、ペトローニ女史も社長室のドアを開けると、立ち聞きしている人間がいないかどうか再度確認してから話を始めた。
「私のほうにも1つ情報が入ってきました。コロニーレーザーを使用するのがほぼ内定したそうです。」
「なるほどのう、1基はコロニーレーザー用じゃったか。」
ゴンザレスとコーエンは納得している。
ホジョウはいまいち飲み込めていないようだ。
タニアは「なるほどコロニーレーザーか」と言いながら頷いている。
コーネルが手を挙げて発言の意志を示した。
「私からも報告がある。例の引っかかっていた件だがこれだ。」
ホジョウはコーネルが机の上に投げ出したパンフレットを見た。
アナハイム・エレクトロニクス社の出している、企業向けの製品紹介パンフレットだ。
「このページが折ってある所…ボールペンで丸で囲っているところがあるだろう。それだ。シールド線だ。このシールド線のことだったんだ。核パルスエンジンは点火すると…要は断続的に核爆発が起きるわけだが、恐ろしい強さの電磁波のノイズを発生する。そのノイズのせいで制御が不能になって暴走して爆発する危険がある。」
「あ、これさっき見ましたね。倉庫に転がってたケーブルがまさにこれです。」
ホジョウがそう言うとコーエンは答えた。
「勿論そうだろう。このシールド線はその強烈なノイズを遮断して核パルスエンジンの安定した制御を可能にする線なんだ。このクラスのシールド線を供給できているのは現在、アナハイムだけだ。ジオンはこのシールド線の供給をアナハイムに絶たれるとコロニー兵器の制御が不可能になる。そのため、アナハイムの本社がある、このフォン・ブラウン市は未だに『中立』を保っているんだ。…と私はそう考えている。」
「ワシもそれはそう思う。見落としておったな。シールド線の供給先を追えばええのか。」
ゴンザレスの導いた結論に、コーエンは気がけて慎重に答える。
「このシールド線AE-HQSW90-2Tの使用用途は核パルスエンジンだけではないが、コロニー兵器には必須だ。前回のブリティッシュ作戦のときアナハイムがジオン公国軍に供給したケーブル長は5キロメートルだった。そして、今回ジオン軍が購入したケーブル長も5キロメートルだ。」
「2基分だから10キロメートルじゃないの?」
タニアが先に突っ込んだ。
全員がコーエンに注目する。
「それが間違いないんだ。ジオン内部の信用できるスジの情報だ。これが私も気になっている。」
その話を聞きながら、ホジョウはジオン公国軍のIDカードと拳銃を取り出して眺めた。
「あの人、何してたんでしょうね?あそこで。」
所属は突撃機動軍参謀部別室とある。
俗に言われるキシリア機関の連中が良く使う所属名の1つだ。
「お話を聞いてみてもいいかもしれないですね。」
ホジョウがそう言うと他の4人がのけぞった。
「そんなヤバいところにクビ突っ込んじゃうんですか!?」
タニアが目を丸くしている。
ホジョウは首を捻りながら、
「あの人はそんなに悪い人じゃないと思うんだよな。」
と呟いた。