キシリアとスズマンが退出したあと、ハバロ首相の補佐官が顔を出した。
「略式ですがすいません。タロウ・ホジョウ少佐、公王庁警備隊別室室長に任命する。また、タニア・ロボ上級曹長。同室室長補佐に任命する。なお、ホジョウ室長は別室の追加人事を出来るだけ早く行うように。」
「人事!?」
バハロ首相が助け舟を出した。
「この警備隊は、ここ公王庁の警備を行うのだが、今回新設された別室は将来的に公王庁に危険を及ぼしそうな情報を収集して対処する部隊だ。必要に応じて部隊員をホジョウ少佐が任命する必要がある。」
「ホジョウ少佐、まずは私とゴンザレス博士を技術顧問として招聘するのが良いだろうな。あとはアブドルアジース博士と孫も協力してくれるだろう。」
「そうしましょう。タニアさんそうしておいて。ちょっと電話するから。」
ホジョウは会議室の電話を借りると、どこかへかけはじめた。
「うん、父さん?元気?ちょっと兵隊を数人採用しないといけないから、信用できる人間を何人か送って欲しいんだ。今、ズムシティの公王庁の警備隊所属に就任して室長になったから。…うん少佐。そういうことです。じゃあすぐ送ってください。」
ホジョウが電話を切ると、首相補佐官は率直な感想を述べた。
「首相、兵隊って父上に送ってもらうものですか?」
補佐官にハバロは肩をすくめて見せた。
「宇宙世紀にはあまり聞かないな。」
「ホセくん…いえ、ホジョウ少佐はご実家が武術の道場なんです。」
タニアが注釈した。
とりあえず、ホジョウはアブドルアジース博士の孫娘マイに至急アナハイムエレクトロニクス社とシン電工を洗うように電話で依頼した。
そしてホジョウは気になっていたことをたずねた。
「これはどなたに尋ねればいいのか分からないのですが、キシリア少将は我々に協力しておられるのですか?」
補佐官が答えた。
「無視です。キシリア少将は和平交渉にはご反対では有りませんが、先の地球での撤退がありますので、もう少し戦果が欲しい側のお立場です。あまりおおっぴらにデギン陛下や首相閣下に反目はされないと言うだけで、あくまでもあちらも強硬派です。」
「今回は協力していただけたんですよね?」
「ホジョウ少佐がキシリア少将直属の部下をお助けになられたからではないでしょうか?我々が仕事をしようとする度にあまり良い顔はされません。」
ハバロ首相はだいぶ困った顔をした。
「ハハハ・・・一応我々が行政府なんですがね。地球に領土を確保するべきだと考えている人間はコロニー落としに良い顔はしないでしょうね。」
などと話していると、電話がかかってくる。
「ホセさん、大当たりを引いたといったら信じていただけますでしょうか?アナハイム社屋に複数設置されている通信用ビームアンテナの内の1基が、テキサスでもミランダでもない方向を向いています。通信内容は傍受できませんがアンテナの角度制御のログから確認しました。」
「待って待って、テキサスやミランダってことはサイド5ってことですか?」
「失礼しました。言っておりませんでした、サイド5のどこかです。ただ、ハッキングの途中で向こうから遮断されてしまったので、もうおじいさまの家の回線は使えないかと。」
ホジョウは考えた。
「とりあえず、お二人を迎えに行きますので、支度して待って置いてください。」
「ありがとうございます。お待ちしております。」
アナハイムエレクトロニクスの手の者がズムシティに入り込んでいることは分かっているので、博士と孫娘に危険が及ぶ可能性がある。
そこへ警備兵が一人駆け込んできた。
「失礼します、ホジョウ室長。こちらをお返しに参りました。」
「ちょうどいいところへ!ありがとうございます!」
先ほど玄関ホールの前で武器を預かった兵卒だ。
警備隊所属になったホジョウとタニアに武器を渡しにきたのだ。
「あと車と突撃銃余ってない?」
タニアはハンドバッグの中身を確認しながら銃と車を要求した。
「詰め所に装備が、その前の駐車場に車が有ります。」
「よし、行きましょう!案内していただいてよろしいですか?」
「こちらです。」
ホジョウとタニアは慌しく出て行った。
「コーエン博士も行ったらどうじゃ?」
ゴンザレスがコーエンを見ると、コーエンは手を振って遠慮の意志を示した。
「ずっと寝てるんですが…風邪気味で。」
「感染(うつ)すなよ?ワシは老人じゃから肺炎で死ぬぞ?」
バハロ首相も無言で一歩後ろに下がった。